2017/04/21

[特別編:2] アクティブ・ラーニングの実践から授業改善のためのポイントを探る(座談会 後編) [2/4]

アクティブ・ラーニングでは教師の思考力が要求される

 清水:アクティブ・ラーニングの視点を取り入れて生徒主体の授業を行おうとすると、生徒が予想どおりに動かなかったり、教師の指示が生徒にきちんと届かなかったりと、思うように進まないことが珍しくありません。
 その原因の1つは、ほかの先生の優れた実践やそこで用いられていた型を、そのまま取り入れようとすることにあると思います。本来、授業には特定の型があるわけではありません。学年や学級の実態、目の前の生徒の特質や学力に応じて、その場で最良の方法を見つけ出して指導していくのが教師の仕事なのです。
 工藤:そのとおりだと思います。アクティブ・ラーニングの事例集を見ると、「なるほど」と参考にはなりますが、生徒の実態や学習の素材は異なりますから、その場で考えていくしかありません。
 清水:その意味では、最も思考力を要求されるのは教師だと言えるかもしれません。生徒たちが同じ時間、同じ場所に集まって学ぶのは、一人では学べない、対話による深い学びを実現することに意味があるからです。教師はそのことを理解して、深い学びの場になるよう一つひとつの授業をつくり上げる必要があるでしょう。

目標と評価を一体的にとらえて教材研究と作問の工夫を

 藤井:アクティブ・ラーニングがうまくいく鍵は、教材研究をして、生徒の実態にあわせた授業の準備をしっかりすることに尽きると感じます。その上で授業の目的を明示し、教師が議論に必要な知識を生徒に指導するといった働きかけがあって、初めて生徒は能動的に学習に取り組めるようになります。それが深い学びへとつながるのだと思います。
 清水:授業と並行して、本校では定期考査等における評価についても見直しています。アクティブ・ラーニングによる学びの成果を評価するための問題は、各教科で作問の段階で本当に成果を測れる問題になっているか、チェックし合える体制をつくっています。
 工藤:一人の教師だけで考えると、どうしてもその教師の思考の癖のようなものが強く反映されます。公正で妥当な問題を作るためにも、なぜそのようなテストを作っているのかという意図を理解し、チェックし合える同僚が必要です。
 清水:目標と評価は表裏一体ですから、適切な問題が作れないということは、目標を具体的に捉えた授業ができていないとも言えるでしょう。しっかりとした作問をするためには、自分の指導により生徒に力がついているのか、指導を改善する余地はどこにあるのかを確かめたいという、教育や子どもに対する強い興味・関心が不可欠だと思います。