生活リズムの崩れが深刻!どう取り戻す?

一度夜更かし癖がついてしまうと、なかなか早起きモードに戻れなくなることがあります。毎朝「早く起きなさい!」と叫ぶのは、大人も疲れるし、子どもだって気分よく起きられません。
子どもに「どうして早く起きなくちゃいけないの?」と聞かれたときの、納得のいく答えを用意しておきましょう。法政大学人文科学研究科の渡辺弥生先生にお話を伺いました。

人間も生き物だから、生体リズムがベース。そこを大人が自覚して

まだ眠りのリズムも一定でない、生まれて間もない赤ちゃんにも、親は朝起きると「ほら朝よー!」と言ってカーテンを開けて光を部屋に入れますよね。これ、すごいことだと言われているんです。
誰かに「朝になったら子どもを起こしなさい」というマニュアルをもらったわけではなくても、本能的に朝になったら子どもを起こそうとする。そうすると、人間の生体リズムとよく合って、脳が覚醒するんですね。

朝、日の光を浴びて起きて、ごはんを食べて、夜早めに寝る、という一日のサイクルは、本来大事な生物としてのリズムです。この生体リズム、大人も頭ではわかっているようで、案外そんなに深く考えていないことがあります。

人がストレスなく活動するには、この生体リズムは理にかなっています。たとえば、日中、太陽の光をしっかり浴びておくと、十数時間後に眠気を起こす体内物質が生成され、夜眠ることで心のストレスをとったり、体の疲労を回復したりするということにつながっています。
夜遅くまで起きていて日中は寝ている、ということは、本来の生体リズムに逆行することになります。

生体リズムに沿う生活はストレスフリー

人間も生物です。虫や植物にしても、それぞれの生体リズムの中で生きています。春には桜が咲くといったことにしても、光や温度・湿度も含めて、地球の摂理で生きている生物だからこそ。人間も同じく地球で生きる生物だということを思い出してください。

子どもに「早寝早起きしなさい」と言う前に、生体リズムに沿った生活をしたほうがストレスフリーに活動できることを、一度、大人のほうが確認して自覚しましょう。
生体リズムに沿うようにして、起きる時間や寝る時間を決めてルーチン化するのが生活リズム。生活リズムができると、いちいち「今は何をするのがベストなのか?」と考えずに済み、ストレスがないものです。
毎日まったく違うことをしていたい、という人も中にはいるかもしれませんが、それはそれですごく疲れるし、いずれ生活に支障をきたすはずです。基本としては一定の生活リズムに沿うほうが、楽なのです。

医学や栄養学的なことを、さらに究めようとすると、逆にストレスになってしまうかもしれないけれど、生体リズムを大ざっぱにでも知っておいてください。朝日でエネルギーを得ると一日元気に活動することができる、と知ったうえで行動できるようになっていきます。

五感で感じることを幸せな方向に使いたい

マインドフルネスという言葉を耳にされたことはありますか。
見たり、聞いたり、触ったり、動いたり、におったり、いわゆる五感で感じておこる「心」を、幸せのために十分に意識しているか?というと案外そうでもなかったりしますね。たとえば食事で、おいしいものを口にできるって本来人間にとって素晴らしい幸せですよね。病気になったり、調子が悪くなったりすると、食欲もなくなり食べてもおいしく感じられなくなるわけですから、「おいしい」と感じられることは、とてもありがたいことのはずです。

朝起きたときに、好きな味のものを口にして、「わ、美味しい」と感じられたら、幸せのために味覚を十分に味わっていることになります。栄養バランスは大事だけれど、そればかり考えてイライラしたり、「早く食べなさい」、「残したらだめでしょ」という言葉が飛んだりする食卓は、幸せとは違う世界です。

また、耳をすませてみると、いろいろな良い音に気づくことができます。
家にいる時間が長い方は気づかれているかもしませんが、都心でも、実際いろいろな鳥のきれいなさえずりがあると気づきます。情報過多で、耳を塞ぎたくなるような日々と思わず、聴覚を持つことの素晴らしさに気づき、心地良い調べや音を聞くためのものであると意識してみましょう。

まとめ & 実践 TIPS

まずは、大人が、生活の中で、いろいろなものを心して見たり、耳をすませたり、良い香りに立ち止まり、触り心地の良さに幸せを感じることの大切さを噛みしめませんか。
こうした日々の暮らしの中で、見過ごしてきた「幸せ」を感じるようになると、不思議なことに、そのまま子どもが安心できる、求めている安らぎのある生活空間をつくっていくものです。家の雰囲気が変わっていきます。

学校に居場所がないと叫ばれることが時にありますが、家庭も居場所でなくなることは避けたいものです。
生体リズムを大事にして、ゆったり安心感のある雰囲気を大事にし、幸せの意味を知ると、子どもはストレスを修復して、次へのチャレンジに意識をもたげるようになります。
「学べ!学べ!学べ!」では人は疲れ切ってしまいます。「安心、安全、認められる」雰囲気の中でこそ、ようやく「学びたい!」という内発的な気持ちが頭をもたげるものなのです。

プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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