「子どもの幸せ」を追求するオランダの教育現場に学ぶこと[やる気を引き出すコーチング]

今年も、コーチングがベースにあるオランダの教育現場へ視察に行ってきました。子どもの幸福度が高く、学力もそれほど低くない国、オランダに通い、これまで小学校、中高校(基本的にオランダは中高一貫校)、大学と15校以上の学校を見てきました。「それだけ見たらもう十分じゃないですか?」と言われることもしばしばあるのですが、どうしても毎年出かけてしまいます。

というのは、オランダでは、以前見てきたものがその後もずっと変わらないのかというと、そんなことはないのです。「こうしたほうが良い」ということはどんどん採り入れられます。驚くべきスピートで改善もされていきます。とはいえ、決して、ぶれないところもあります。その「本質を見失わない姿勢」を確認するために、私は定期的にオランダに行き、勇気をもらっているように思います。

教育の目的は何なのか?

日本でも昨今、増えてきたイエナプラン、シュタイナー、モンテッソーリなどの多様な教育が、オランダでは、公立私立に関わらず、自由に採用されています。その中から、子どもに合いそうな学校を選んで入学できるのがオランダの特徴です。ですから、必ずしも「これがオランダの教育」と言える特徴的な型があるわけではなく、「学校の数だけ教育がある」と言った方が近いのかもしれません。オランダの学校は、「時間割なし、テストなし、宿題なし」と紹介されたりもしますが、そんな学校ばかりでもありません。一括りにはできないのです。

このように、手法は多様性に富んでいますが、どの学校に行っても、校長先生が同様におっしゃることがあります。「この学校は子どもの幸せを目指しています」といった言葉です。今回、訪問した小学校の校長先生は、「将来、子どもたちが自分の人生を幸せに生きるために必要な準備をしてもらうことがこの学校の目的です」とおっしゃっていました。また、別の小学校の校長先生は、「何の教育手法かどうかはあまり気にしていません。子どもにとって良いと思うことを採り入れてやっていくうちに、我が校はこの教育スタイルになりました」と話されていましたが、ここにオランダの教育のあり方が集約されているように私は思います。目的はぶれませんが、そこに至る方法は一つではなく、非常に柔軟なのです。

子どもの幸せを探るための関わり方

オランダの教育現場では、子ども一人ひとりの意思が非常に尊重されていることも伝わってきます。一方的に押し付ける教育ではなく、子どもの主体性を引き出す関わり方がなされています。コーチングの要素が効果的に活用されています。例えば、

「やってみてどうだった?」
「何がわかった?次はどんなことを調べてみたい?」
「何をやっている時が一番うまくできた?楽しかった?」
「何が一番好き?」
「次はどうしたいと思ってるの?」

などの質問をしながら、先生は学習を進めていきます。子どもは自分で考え、振り返りながら自分の強みや興味を探っていきます。

子どもを計るものさしも一つではありません。子どもによっては、課題を理解するスピードも違います。「早いから良い。遅いからダメ」といった一律のものさしではなく、その子の段階やペースに合わせて関わります。人には身長差があるように、学習のスピードにも個人差があることは決して悲観することではありません。

いわゆる「勉強」が好きで得意な子は、それを活かして、そうでない子は、「だから幸せになれない」のではなく、自分の得意なものを見つけ、それを伸ばして社会に貢献していく道を拓いていきます。この子が自分の強みを発揮できる場にいることこそが子どもの幸せと考えられているのです。

「この子にとって何が幸せなのか?」を、一人ひとりの強みや興味に焦点をあてながら探り、そのための方法は一つではないという柔軟な関わり方は、大いに学ぶべきところではないでしょうか。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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