正論では動かない!子どもの心が動くコミュニケーションとは?[やる気を引き出すコーチング]

以前、少し話したことがある高校2年生のAさんが、相談があると言って電話をかけてきました。進路に迷っていた時期もありましたが、目標を見つけ、大学受験に向けてがんばっていると親御さんからは聴いていたので、どんな話なのだろうと思いました。

「大学に行く意味がわからなくなってきて、高校ももうやめたいって思うようになりました。親に話しても話が通じなくて、どうしたらいいのか迷っています」という話でした。さらに聴いていくと、「起業とかおもしろいかなと思って。その前に、いろんな国に行って自分の世界を広げたいなとかも思うし、ネットを使って稼いでみたいし。と言っても、何をしたいのかはよくわからないんですけど、普通に高校卒業して大学に行くのがつまらないという気がしてきました」と言います。さて、こんな時、皆さんだったら、どんな対応をしますか?

「正論を言い聞かせること」は最も機能しない

「何をやりたいのかもはっきりわからない段階で起業してもうまくいくのかな。海外渡航とかネットとかも目的をはっきりさせてからやった方がいいんじゃないのかな」私が心の中でそう思った瞬間に、Aさんは言いました。

「親は、『そんな思いつきばかりではダメだ!何をやりたいのかわからないで起業なんかしてうまくいくわけがない。まずは勉強しろ。大学に行ってから考えろ』って言うんですよ」

親御さんのお気持ちは、まさに私と同じでした。間髪入れず、Aさんはまくしたてます。

「そう言うの、めっちゃムカつくんですよね!」

この言葉で、私もハッと我に返りました。そうなのです。一方通行で、正論を言われれば言われるほど、子どもは動かなくなっていきます。「勉強しなさい」、「やる気を出しない」と言われるので、やる気が下がっていくのです。「正しいことを言って聞かせないと子どもはわからない」と思われている方が案外いらっしゃいますが、ほとんどが逆効果で、こじれていくことの方が多いのです。

そのことを思い出し、私も正論はいったん脇に置き、Aさんの気持ちを受けとめることに終始しました。

気持ちを「わかってもらえた」という完了感が大切

「そうなんだ、そんなこと考えてたんだね。そう思うようになった何かきっかけがあったの?」と、否定をしないで気持ちを聴いていきます。

「この前、海外に行くっていう人の話を聴く機会があって、なんかおもしろそうだなって。自分はとても狭い世界で考えていたんだなって思ったら、なんかすごく虚しくなってきて、もっといろんなことをしてみたいなって思ったんです」

「そうなんだ。いろんなことをしてみたいという気持ちはとてもすばらしいね!」

「どうせだったら、いろんなところに行っていろんなことやってみたいじゃないですか!」

「やってみたらいいと思うよ!全部やるためにはどういう優先順位でやる?」

「そうですね!全部やってもいいですよね!そうだな・・・、起業と言っても今すぐできるわけではないと思うので、今しかできないことからやる、と考えると、まずは、高校生活はちゃんとやって大学は行こうかな」

迷っているという話だったのに、結局、自分で結論にたどり着きます。正論を言って聞かせなくても自分で考えられるのです。こういう瞬間に、気持ちを受けとめるだけでいいんだなと本当に思います。

気持ちを否定しないで、そう思った背景や経緯を聴いていくと、自分でも気持ちや思考の整理ができるのでしょう。そして、「自分の気持ちをわかってもらえた」という完了感が持てると前向きになれるものなのです。こちらの想いとは違っても、いったん受けとめ、「そう思っていることはわかったよ。どうすれば一番いいのか一緒に考えよう」という姿勢が子どもの心を動かすのではないかと思います。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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