「教えない」から子どものやる気と自己肯定感は高まる?[やる気を引き出すコーチング]

例えば、「勉強がわからない!教えて!」とお子さんが言ってきたとしたら、どのように関わりますか?「どこがわからないの?ああ、ここはね、こうだから、こうすればいいよ」と丁寧に教えてあげますか?「ごめんね。それは私もわからない。学校で先生に教えてもらいなさい」といった対応でしょうか?

学習塾の先生Aさんは、そのいずれでもありません。一言で言うと、「教えない」で、自分で考えるよう促す関わり方です。と言っても、「何でも人に聞かないで、自分で考えてみなさい」と言うわけでもありません。Aさんの関わり方によって、子どもたちは、勉強に対して、どんどんやる気になり、伸びています。さて、いったい、どんな関わり方なのでしょうか。

肯定質問で問いかけ、一緒に考える

Aさんの指導風景をのぞいてみましょう。
「A先生!ここがわかりません」と、子どもが算数の問題について質問してきました。
「そうか!じゃあ、どこまでわかったの?」
「えっと、・・・ここまではこうかなと思ってやってみて、あと、どうしたらいいのかわからなくて・・・」
「そう!ここまで考えてやってみたんだね。どんな問題だったっけ?もう1回一緒に読んでみようか?」
「えっと、・・・っていう問題」
「うん、そうだね。っていうことは、何がわかったらいいかな?」
「えっと、だから、・・・これがこうなって、こうだから・・・」
「うん、そうだね。次は?どうなるかな?こういう時、どうするんだっけ?前に一度やったことはなかったかな?」
「えっと、・・・あ!そっか!こうすればいい!わかった〜!!」

そばで見ていると、確かに、Aさんは、教えているわけではありませんが、子どもは、Aさんの問いかけによって問題を解いていきます。これは感動的です。まず、最初の質問に驚かされます。「どこまでわかった?」という質問は、なかなか出てくるものではありません。通常は、「どこがわからないの?」と聞いてしまいます。

先生に問いかけられて、子どもは考えます。「どこまでできたんだろう?何がわかればできるんだろう?」。それだけで思考が整理されます。Aさんは、肯定的な質問によって、一緒に考える環境を作りますが、考えているのは、あくまで、子ども本人です。子どもが自分で考えることを促し、決して邪魔をしないように関わっていきます。

自分でできた体験のほうが断然嬉しい!

一方で、丁寧に教える先生もいます。「どこがわからないの?・・・あ、これはね、こうやって、こうするとできるよ!わかった?」。説明を受けた子どもは、「ああ、はい、わかりました」と、納得しているようには見えますが、それほど嬉しそうには見えません。自分で答えにたどり着いた子どもの反応はまったく違います。心から嬉しそうにします。「わかった〜!」と叫ぶ顔が輝いています。嬉々として次の問題に取り組み始めます。

そうは言っても、基本をわかっていない子どもには、教えないとできないのではないか、教えたほうが早いのではないかと思う方もいらっしゃるでしょう。ティーチング(教えること)がまったく不要だと言うつもりはありません。しかし、教えれば教えるほど、「教わらないとできない」という枠を子どもにはめてしまいます。そして、「教わらないとできない」と本人が思っている以上、自己肯定感はいつまでたっても高まりません。「自分で考えて自分でできた!」という体験こそが、「もっとできるようになりたい!」というやる気と「自分でできる!」という自己肯定感を引き出すのです。

勉強に限らず、「教えないとできない」という先入観を脇に置いて、子どもの思考の整理を促す関わり方を増やしてみませんか。子どもの「わかった!」、「できた!」という輝きに出会えた時、「教えない」ほうがよほど、大人も子どもも幸せなのではないかと感じます。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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