子どもの自己肯定感を育む「教え過ぎない」子育て[やる気を引き出すコーチング]
新年度のこの時期、職業柄、多くの新入社員と接します。研修のお昼休みに、社会人になったばかりのAさんから非常に心に残るお話を聴かせてもらいました。彼女は、ついこの前まで学生だったとは思えないほど、落ち着きがあり、自分の考えを自分の言葉で話せるとても聡明な人でした。
話を聴きながら、彼女がここまで成長する過程には、そんな体験があったからなのかと深く考えさせられました。Aさんのお話をぜひ、紹介させてください。
手と口の出し過ぎが子どもの自己肯定感を下げる
「私の両親は、すごく私を大切に育ててくれたと思います。特に、母は、私のことを大事に思うあまり、過保護なところがありました。小さい頃から、私がモタモタしていると、すぐに手を出してくるんです。例えば、靴ひもがうまく結べないような時も、『ほら、貸してごらん!私がやってあげるから』って。『今日は寒いから、これを着て行きなさい』とか『帰ったら、まずうがいして』とか、いちいち言っていました。
私には勉強してほしいからと、家の手伝いもあまりさせませんでした。何か手伝おうとすると、『いいから、あなたは勉強に時間を使いなさい』と。学校での悩みを少しでも話そうものなら、過剰に心配して、『先生に言ってあげようか』とか『こうすればうまくいくよ。こうしなさい』と口を出してくるんです。
高校に入った時、周りの友達がすごく大人に見えてびっくりしました。友達は、自分のことは何でもパパッ!とできるし、自分の考えを持っているし、すごく劣等感を覚えました。『親にやってもらわないと何もできない自分』と思えて、自己肯定感は低かったです。
もちろん、親には感謝していますけど、今、思うと、あのままずっと手や口を出され続けたら、自分では何もできない大人になっていたと思います」
「教えない」と子どもは自分で考える
「何か自分を変えたいと思って、高校2年生の時に、留学することにしました。親元を離れて、カナダに1年間行きました。ホストファミリーは、うちの親とは違って、いい意味で、まったく親切ではありませんでした。初めての海外生活で、使い方がわからないものもあるのに、直ぐには教えてくれないのです。
『どうすればいいと思う?まず自分なりに考えてやってごらん』という感じです。いつも、私に質問をしていました。『今日はどうする?あなたはどうしたい?』って。
冷たいわけではないんです。常に、私の意思を尊重してくれていました。当然、最初は戸惑いましたよ。でも、慣れてきたら、それが当たり前になって、自分で決めることで、自分にも自信がついてきました。自分で考えて自分でできる!と思えた体験は本当に大きかったです。
おかげさまで、社会人になりましたけど、今、不安なことはあまりないです。これからも、自分で考えて、いろいろやってみたら、なんとかなるかなって。社会に出たら、自分で考えて自発的に動くことが求められるって、石川先生も研修でおっしゃっていましたよね!」
子どもが自分で考える過程を奪わない
コーチングがなぜ、子育てに必要なのか、その理由を、Aさんが身をもって証明してくれたようなお話でした。親は良かれと思って、子どもにあれこれ手をかけて教えようとします。そのことによって、子どもが自分でできるはずの力を奪ってしまいます。「自分でできた!」という体験がないと、自己肯定感は下がります。
また、1から10まで教えることで、「全部教わらないとできない」という思考の枠を子どもにはめます。だから、「教わっていないことはできない」と思い込んで、自ら「やってみよう!」とは思わなくなります。教え過ぎることは、なんとも罪深いことだと思います。子どもの成長を本気で願うのなら、「自分で考え、決め、やってみる過程」を大人が奪わないことだと、Aさんと出会って心から感じたしだいです。
「自分でできた」という達成感が自己肯定感に繋がる
勉強でも、生活においても、我が子が困っていたりわからないことがあったりすると、つい「こうやるんだよ」と教えたくなるものですが、保護者のかたは、それをぐっと我慢する場面も大切です。課題や問題に出合ったとき、お子さま自身がやり方を考え、自らの力で解決できたという経験が「自分で考えればできるんだ」という自己肯定感に繋がるからです。
チャレンジ・チャレンジタッチも、答えを直接教えるのではなく、お子さま自身が自ら考え、答えを導き出せるようなヒントを投げかける教材になっています。
さらに、3年生からはじょじょにお子さまが一人でまるつけできるよう、サポート。なぜまちがえたのか振り返り、解き直す習慣を身につけます。