「戦いごっこ」でどんな力が育つ?子どもが好きな理由や保護者の関わり方のコツも

年中から年長くらいのお子さまは戦いごっこが大好き。おとなしいお子さまでも、突然戦いごっこが好きになることが珍しくありません。危なっかしい行動もあるため、あまりよく思わない保護者のかたもいるかもしれませんが、戦いごっこを通して育つ力もあります。教育心理学の専門家である松尾直博先生に聞きました。

子どもが戦いごっこが好きな理由

お子さまが戦いごっこが好きなのはなぜなのでしょうか?保護者のかたからみると「なんでこんなに夢中になるんだろう……」と不思議になってしまうこともある戦いごっこ。夢中になるのには、いくつかの理由があるようです。

戦いごっこが好きな理由1:強くてかっこいい自分になれるから

子どもたちは強くてかっこいいものが大好き。戦隊もの、戦士ものの実写やアニメや恐竜に夢中というお子さまも多いのではないでしょうか。

「なりきる」「真似する」は、遊びの中心的な要素の代表で、まず何かになりきること自体が楽しさを生み出します。戦いごっこは、子どもにとって憧れの存在になれる機会。悪と戦ったり、困っている人を助けたりと、普段の生活では経験できないことを擬似体験できるものです。そのため、戦いごっこに夢中になるようです。

戦いごっこが好きな理由2:思い切り体を動かせるから

敵を追いかけたり、パンチやキックを繰り広げたりと、思い切り体を動かせるのも、子どもたちが戦いごっこに夢中になる理由。心理学では「ラフ・アンド・タンブル・プレイ」(荒っぽい全身を使った遊び)と言われ、楽しくて、しかも心身の成長を促す遊びと考えられています。
思い切り体を動かすことは、気持ちもリフレッシュしてストレス解消にもなるものです。

戦いごっこが好きな理由3:競うこと・挑むことができるから

戦いごっこは、「ごっこ」という安心できる遊びの中で、戦うことに含まれている競うこと、挑むことができます。そのことも子どもが夢中になる理由のひとつでしょう。上手に技を出すことができるか、本物っぽいポーズやセリフが言えるかなど、追い求めたい要素が満載で、飽きることなく繰り返すことができる遊びです。

戦いごっこを通して、こんな力が伸びる!

大好きなキャラクターになりきってポーズを決める姿はなかなかほほえましいもの。戦いごっこを通して、いったいどんな力を身につけるのでしょうか

◆力加減への理解

子犬や子猫がじゃれ合うように、お子さまも相手と体をぶつけ合うことを通して、「ここまでは大丈夫だ」「これはやりすぎだ」といった力加減を学んでいきます。だからうまく遊べる子は戦いごっこで興奮しても、固いもので思いきり叩くようなことはしません。それをしたら遊びが成立しなくなることをわかっているのです。本当の「戦い」ではなく「戦いごっこ」であることがとても大切です。
大人からすると、「ケガをしないかしら(させないかしら)」と心配になりますが、目に余る行動をしない限り、お子さまを信頼して見守ることも大切にしてください。まずは、大人が戦いごっこの相手になって、お互いが楽しめる戦いごっこのお手本を示すことが大切ですね。

◆豊かな創造力

戦いごっこをおもしろくするためには「演出」が必要です。例えば、いったん相手の技を受けてから復活したり、必殺技は残しておいたり、最後に強い悪者が登場したり……。年齢が上がるにつれて筋書きは凝ったものになっていきます。定番となる基本的なストーリーの流れ(心理学では「スクリプト」と言います)をただ忠実になぞるのではなく、子どもは自分なりに変化をつけたり、話を広げたりなどをするようになっていきます。
どうすれば遊びが楽しくなるかを子どもなりに考えて演出する姿には感心させられます。こうした創意工夫を通して、創造力が育っていきます

◆正義感

戦いごっこでは、悪者をやっつけるだけではなく、弱いものや困っている人を助けたり、敵だった相手と仲良くなって味方になったり、改心した悪を許したりすることもあります。真似をする好きなストーリーが参考になりますが、それらを通して子どもたちは「正義とは何か」を学び、体感します
強いことだけがよいことではなく、正しいことがよいことだということを憧れと実演で感じていくことは、この時期の子どもにとって大切なことなのかもしれません。

◆友だちと協調して遊ぶ力が育つ

他のごっこ遊びもそうですが、戦いごっこは一人ではあまり楽しくありません。相手に嫌な思いや痛さを与え続けると、遊ぶ相手はいなくなってしまいます。それぞれが好きな役になり、好きなアクションをしつつ、ごっこが成立するような工夫が必要になってきます。
こうした遊びの中で、ゆずったり、交渉したり、妥協したりの芽生えが生まれてくることもあります。友達と協力して遊びをつくり上げていく過程で、相手の気持ちを考えて協調する力が徐々に育っていきます

戦いごっこのNG行動とは?

プラス面の多い戦いごっこですが、危険が伴うケースがあるのも確か。次のような場合は違うやり方を教えることも大切です。

◆危険な武器を使っている

先のとがった木の棒を振り回したり、石を投げたりすると、大ケガにつながる恐れがありますので厳しく禁止しましょう。紙で作った安全なものでも、十分に楽しいと感じさせることが必要です。

◆車が通る道路などの危険な場所

戦いごっこの最中は興奮して周囲が見えなくなりがち。車が通る道路や落下する危険がある場所などで遊ぶのはやめるように言いましょう。

◆相手がいやがっている

怖がっている、嫌がっているお友達に戦いをしかけているような場合は、「相手がいやがっているときはしてはダメ」と注意しましょう。その子と遊びたいのなら、何の遊びがいいかな?と考えさせることもよいかもしれません。

戦いごっこの相手をするときのポイントは?

保護者のかたが戦いごっこの相手をすることは、子どもの心身の発達にとってすごくよいと考えられています。まずは遊び心をたくさん示して、本当の戦いではない、戦いごっこの楽しさと安心感、ワクワク感をお子さまに伝えましょう。それに加えて、力加減の理解、豊かな創造力、正義感、協調性などを促すために、大人がお手本を示すことも大切です。
また、大人がいろんな役、例えば強い主人公、弱い主人公、弱い悪役、強い悪役、改心した悪役なども演じて、お子さまに楽しさと創造力のヒントを与えられるといいでしょう。さらには、力加減が適当ではない場合などにも叱らずに丁寧に教えてあげましょう。

まとめ & 実践 TIPS

戦いごっこは、怪我やエスカレートしすぎてしまうことが心配で保護者のかたからすると、ハラハラしてしまうことも多いもの。しかし、子どもたちは戦いごっこからとても多くの事柄を学んでいきます。楽しく遊ぶためのルールを教えたうえで、心身の発達を促すよい機会ととらえて、見守っていけるといいですね。

プロフィール


松尾直博

主な著書『絵でよくわかる こころのなぜ』(学研プラス)『ポジティブ心理学を生かした中学校学級経営 フラーリッシュ理論をベースにして』(明治図書出版・共著)『コアカリキュラムで学ぶ教育心理学』(培風館・共著)『新時代のスクールカウンセラー入門』(時事通信社)など


博士(心理学)。公認心理師。臨床心理士。学校心理士。特別支援教育士スーパーバイザー。専門は、臨床心理学や学校心理学。幼稚園、小中学校でのスクールカウンセラーの経験多数。

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