「母親」がダントツ! 幼稚園・保育園児が平日に園以外で遊ぶ相手
ベネッセ教育総合研究所が20年にわたって続けている、幼児を取り巻く環境の調査「幼児の生活アンケート」。2015(平成27)年の結果(※)で見られた興味深い傾向について、主任研究員の真田美恵子さんが解説します。
- ※1歳6か月~6歳就学前の幼児をもつ保護者3,466名の回答を分析しています。
■平日、園以外で遊ぶ相手は20年間で「友だち」が半減、「母親」が増加
幼稚園や保育園以外で、「平日、一緒に遊ぶことが多い人」について尋ねた結果は、「友だち」が27.3%、「母親」は86.0%。20年前はいずれも50%台後半でありほぼ同じでしたが、20年間で大幅に「友だち」の割合が減り、「母親」は年々増加しています。
Q. 平日、(幼稚園・保育園以外で)遊ぶときは誰と一緒の場合が多いですか。
もちろん園に通う子どもは、園では友達同士で遊んでいると考えられますが、なぜ園以外では母親と遊ぶ率が増えているのでしょうか?
■保育園児の増加、少子化……取り巻く環境の変化
まず、保育園児の増加が理由のひとつです。20年前には10人に1人だった保育園児が、2015(平成27)年には約3人に1人。フルタイムで働く母親もこの10年間で増えていることがわかりました。
保育園児は、朝家を出る時間の平均が8:00ごろ、帰る時間の平均は17:40ごろと、園で長い時間を過ごします。帰宅は夕方以降ですから、自然と「母親」と家で過ごす時間が増えることになるのです。
少子化により地域で遊べる子どもが減少していることも理由といえます。園から帰り、公園に行っても同年代の子どもがいない地域もあるでしょう。年々、一人っ子の家庭も増えており、今回の調査でも、子どもが日頃接する人が少ないという実感を持つ核家族の保護者の声が見受けられました。
また、子どもが安心して遊べる場所が少ないために、外で遊ばせられないという意見も少なくありません。外で遊ばせられないので、家で母親と一緒に遊んでいるという家庭もあるのではないでしょうか。
●毎日のように不審者情報などのメールが来るため、子どもを近所の公園で遊ばせることもできません(3歳児、母親)
●異年齢の子どもたちが自由に遊べる、公共スペースが欲しい。放課後、土・日、祝日も使える施設、体を動かす工夫のある場所、地域の大人の方々とも触れ合える場所(3歳児、母親)
■母親が持つ<育児への意識>も変わりつつある?
もうひとつ、注目したい結果があります。「友だちと一緒に遊ぶこと」について、「子育てでとても力を入れている」という割合が、この5年で5.8ポイント減少しています(図2-2-1)。
Q. あなたは、どのようなことに力を入れて、お子様を育てていますか(母親のみの回答)。
友達とは「園で遊んでいるから」という意識が、子育てで力を入れることの減少につながっているのかもしれません。友達と遊ぶ幼児が減る一方で増加している母親については、ワークや知育玩具といった「学び」に関することを一緒にする割合が増えていることもわかってきました。
■「園以外の友達との関わりから学ぶ機会」の減少
共働き家庭の増加や少子化、地域での遊び環境の変化などが複雑に絡み合い、園から帰宅した子どもの遊び相手は年々母親に集中しつつあります。その結果、園では子ども同士の関わりから学び、園以外では母親との関わりから学ぶという傾向が、ここ20年で色濃くなってきたといえるのではないでしょうか。
言い換えれば、子どもの人間関係の範囲が以前よりも狭くなり、母親の負担が大きくなっているともいえるでしょう。この状況に対して、できる範囲でよいので意識的に子育てに周囲の協力を得ることも一つの方法です。そうした周りのサポートは、母親にとって心身ともに負担が軽減されるだけでなく、何よりも、子どもにとって園や家族以外のいろいろな人との関わりが生まれるよい機会となるでしょう。
- ※ベネッセ教育総合研究所「第5回 幼児の生活アンケート」(2015<平成27>年)
- http://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=4770
(筆者:真田美恵子)