小学校以降の成長のベースとなる「我慢をする力」は家庭で伸ばす!【後編】
我慢をする力は、一朝一夕には身につきません。保護者のかたこそが我慢強い姿勢で、時間をかけて子どもに教えていくことが大切です。引き続き、文京学院大学大学院特任教授の平山許江先生にお話を伺います。
我慢をする理由が見えづらくならないように注意しよう
保護者のかたのブレーキのかけ方によっては、子どもにとって我慢をする理由が見えづらくなることがあります。たとえば、子どもが室内で固い積み木を投げようとしたら、ほとんどの保護者のかたはすぐに止めるはずです。しかし、この場合は、「積み木を投げること」がいけないのであって、「投げること」が悪いわけではありません。ですから、「積み木は投げちゃだめ。代わりにこれを投げてもいいよ」と柔らかい物を渡せば、我慢をする理由がはっきりと伝わりますし、子どもの投げたいという欲求も満たせます。
こういうやりとりをしていると、次は子どもが積み木を投げる素振りをして、ニヤッと笑って親の顔を見るようになります。こんなほほえましいいたずらも、積み木を投げてはいけないと理解したことを表しています。そんな時は、もちろん「だめ!」としからず、「あれ?、それ投げていいんだっけ?」などと、子どもとのかけ引きを楽しみましょう。
怒りや悔しさといった負の方向のアクセルにもきちんと向き合って
怒りや悔しさといった一見マイナスの感情も大切なアクセルです。以前、子どもたちが砂場遊びをしていた時、友達どうしのトラブルから、ある子どもがギュッと砂を握って相手に向かって投げつけようとする場面がありました。ところが、その子どもはグッとこらえて、誰もいない方向に砂を投げました。怒りの感情をコントロールし、砂を投げつけたいという気持ちを我慢したこの行動は、とても立派だと思います。
正当な怒りや悔しさを押さえつけるのは、よいことではありません。きちんと向き合うことで、我慢して相手と折り合いをつけたり、集団の中で生活したりする力が育つからです。また、怒りや悔しさが自分を高めるエネルギーになることもあります。
子どもが運動会のかけっこで負けてしまい、いつまでも泣きべそをかいていたら、保護者としてふがいないような気持ちになるかもしれません。しかし、子どもにとって一人で悔しさと向き合う時間は必要です。しっかりと向き合うからこそ、かけっこの練習をしたり、嫌いなニンジンを食べようとしたりする気持ちがわいてくるのです。ただ、子どもは気持ちの切り替えが上手ではありません。あまりに長引くようなら、「残念だったね」「また次ね」などと、あっさりとした言葉で切り替えを促しましょう。
我慢をほめられることをくり返し、子どもは成長していく
子どもに我慢する力を育てるためには、保護者のかたがゆったりとした気持ちで子どもの言動を見守る態度が大切です。気持ちに余裕がなかったり、急いでいたりすると、きちんと理由を説明せずに禁止したり怒ったりしてしまいやすくなるからです。しかし、保護者のかたも人間ですから、時には感情的に怒ってしまうこともあるでしょう。「ちょっとブレーキをかけすぎたな」と思ったら、次はブレーキを少し緩めて子どもがアクセルを加速させるチャンスを与えるとよいと思います。
ケガなどの危険を心配して、子どもがやりたいことを我慢させるケースもあるでしょう。確かに大ケガをする危険は取り除く必要があります。しかし、むしろ大ケガをさせないためには、小さなケガをくり返す中で、子ども自身が危険を回避する力を身につけることができます。親として心配はあるでしょうが、子どもは大人が考えている以上に、自分の能力をわきまえているものです。本当に危険な場合を除いて、できるだけ子どもの力を信頼して任せてあげてください。
最後に、我慢とは、いわば心の中での葛藤に打ち克つことです。子どもがきちんと我慢ができたら、「よく我慢できたね」と、たっぷりとほめてあげることを忘れないでください。それがより難しい我慢にチャレンジする支えとなります。大人から見たら当たり前の我慢であっても、それができるようになることは大きな成長の証です。我が子が我慢する力を支えながら、存分に成長を感じとってください。