2017/05/31

[特別編:4] 公立高校の教師が語る、生徒の実態や課題を踏まえた授業改革(座談会2 後編) [4/5]

4. 生徒指導部による教育改革

生徒指導部が授業研修会を主導し、主体的に学ぶための土台を築く

茨城県立江戸崎総合高校の実践

教頭 片岡 達郎先生

国語科・生徒指導部主任
石塚 武志先生

4つのテーマを設定し、公開授業を実施

 茨城県立江戸崎総合高校は単位制の総合学科であり、2年次から自分の進路希望や興味・関心に応じて多様な選択科目群(系列)を選ぶことができる。次期学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び」を実現するための土台づくりとして、2016年度に生徒指導部の主導により、3日間の授業研修会を実施した。生徒指導部主任の石塚武志先生は次のように話す。
 「生徒指導部には、身だしなみなどを整えるといった学びに向かう姿勢を整えることが、勉強に対して前向きな気持ちを引き出すのではないかという仮説がありました。そのような議論を踏まえ、生活指導から一歩踏み込んで授業の研究をしようという話になったのです」
 授業研修会では、「仮説検証型」(授業の環境整備:指示や課題の提示の仕方)「TT(チーム・ティーチング)」「アクティブ・ラーニング(参加型)」「視覚支援(教材・ICTの活用)」という4つのテーマを設定。テーマごとに2〜3の授業が公開された。
○生徒指導部による授業研修会における4つのテーマ
1 仮説検証型 授業冒頭の号令、指示、課題の提示などの授業環境整備に関しての研修。特別な配慮や支援が十分な場合とそうでない場合とで生徒の反応を比較する。
2 TT
 (チーム・ティーチング)
TTによる基礎学力の定着をねらい、少人数指導の効果的な支援と教科による特性などを明らかにする。
3 アクティブ・ラーニング
 (参加型)
一斉授業における生徒の反応と、アクティブ・ラーニングを活用した授業における生徒の反応を比較する。
4 視覚支援
 (教材・ICTの活用)
メリットや配慮面を十分に考慮してICTを視覚支援に使用する。
 「アクティブ・ラーニング(参加型)」では、「化学基礎」と「英語」の授業が公開された。参観する教師は教科の学習内容よりも、「生徒の授業中の表情や言動」「本校においてアクティブ・ラーニングを行う際の問題点と注意点」を着眼点として、気づいたことなどを記録。最終日に教師全員が記録を持ち寄って研究協議会を行い、生徒にとってよりよい授業について議論した。
授業の様子
 アクティブ・ラーニングに関しては、同じ内容の授業を一斉指導で行って生徒の反応や授業後の感想と比較。ペアやグループの学習の時間を多く取ると、生徒の学習意欲が高くなり、教師も手応えを感じられるという結果を得た。また、研究協議会では、教師と生徒の双方が努力することによって対話的な関係をつくり、学びを深める姿勢が肝心であること、ペアによる学習の際は生徒の相性などを考慮したほうがよいことなども共有された。
 教頭の片岡先生は、学校内におけるこのような取り組みに加えて、同校の先生方に他校の事例も多く見てもらいたいと考えている。「ボトムアップで先生方のやりたいことがやれる環境づくりが大切です。そのために、同じ特色をもつ学校に積極的に授業見学に行き、その内容を職員会議で共有してもらうことを推進しています」

主体的な学びを支える根っことして、生徒一人ひとりへの配慮を続けたい

 授業研修会では、授業前に服装を正したり、机上を整頓させたりすると、生徒の学びに向かう姿勢が整うことが共有された。結果、教師との意思疎通もできて、学習に関する質問が増えるなど、授業改善を進める上での多くのヒントが得られた。
 「生徒指導部以外の先生方も多く参加し、よりよい授業にしていくための情報を共有したり、ICTの活用について情報科の教師に連携を求めたりと、様々な前向きな動きにつながりました。これからも主体的な学びを支える根っことして、いかに一人ひとりの生徒に配慮するかを組織的に考え続けたいと思います」(石塚先生)