2017/04/14

[特別編:1] アクティブ・ラーニングの実践における高校現場の課題とは(座談会 前編) [3/4]

これからの大学入試で問われる力を育むという意識で取り組む

藤井泉浩先生
 藤井:本校では、進学実績の向上を明確な目標として掲げており、その方向とアクティブ・ラーニングで目指すことをいかに合致させるかが課題となっています。「アクティブ・ラーニングを充実させれば、学力も上がるだろう」と漠然と捉えるのでなく、「何をどうすると、どうよくなるのか」を具体的に検討し教師間で共有することが、今後ますます重要になってくると思います。
 清水:学校の体質や生徒の学力によって実態は様々ですから、各校の事情に応じて考えることが必要だと思います。伸びる生徒は環境を整備すればその機会を活かして自分で力を伸ばしていくことができます。一方で、学習に興味を持てなかったり、学ぼうとしてもやり方が分からなかったりする生徒もいますので、そのような生徒をいかに教師がフォローして伸ばすかという指導方法を議論していくべきなのかもしれません。
 工藤:アクティブ・ラーニングが生徒の学力にどのような効果を及ぼしているのかは明確には分からず、手探り状態であることは否めません。ただ、本校の生徒アンケート(高校1年生の1学期末に実施)で、「身につく知識の量が多い授業形態はどれか?」という質問への回答が学力に関してヒントになるかもしれないと考えています。「講義のみ(34人)」「班活動あり(26人)」「同じくらい(44人)」という結果でしたが、私は「講義のみ」がもっと多いと予想していたので、この結果は意外でした。自由記述欄には、「友人と話したり教えてもらったりした方が、頭に残りやすい」という声があり、「講義形式では頭に残りにくい」という声も多く見られました。このような結果からも、アクティブ・ラーニングは学力の定着につながる可能性があるのではないかと思います。
 清水:100の知識を教えるには、それをすべて講義により行うのが手っ取り早いように思うかもしれません。しかし、その結果30%くらいしか生徒に残らないのであれば、70を教えてそれを100%理解させたほうがよいという考え方もあります。後者のような事例が具体的に指導モデルになっていくとよいのではないかと思っています。我が校では、これからを生きる子どもたちに必要な力を育むためにも、大学入試がこれまでのような知識をどれだけ知っているかを問うものではなく、それを使って何ができるかということを問う方向に確実に変わっていくと捉えています。そして、このような力を身に付けた生徒を育てたいという明確な意志を持ち、入試や定期テストの内容も思考力を必要とする問題を増やすなどの工夫をして、指導改革を進めています。
—— 次回、「座談会 後編」では、福岡大学附属中学校・高校の指導改革の内容に加え、ここまで挙げられたさまざまな課題を踏まえ、アクティブ・ラーニングの実践を深めていくためのポイントについて語り合っていく。