春の風物詩、桜は食材としても優秀
桜の樹皮は、箕(み)、笠(かさ)などの農作業用具や、お弁当箱などの日用品、楽器、武器、調度品など、大いに日本人の生活に活用されました。一方、その花や葉は、食用として用いられてきたのです。
桜の花びら
桜の花びらは、塩漬けにしておいて、桜茶や桜酒をつくるのに利用します。桜の花には、殺菌力のあるサクラニンや、食欲を促すアミグダリン、ケラシアニン、芳香成分のクマリンが含まれているため、桜茶は二日酔いに、桜酒は疲労回復や安眠のために用いるのがおすすめなんだとか。
塩漬けは、花柄(かへい)ごとちぎって、塩をふりかけながら重ね、重しをしておけばできあがり。飲み物のほかにも、蒸し物、吸い物、酢の物、大福やあんぱんのトッピングとしても活躍してくれます。
桜の葉
桜の葉には、クマリン、タウリン、ビタミンなど、わずかな量で体の活力を促す物質が含まれているため、いろいろなところで活用されています。
桜の葉も花びらと同じように、塩漬けにしておけば、塩の防腐作用と桜の葉に含まれる成分がプラスされ、桜餅のように食べ物を包んだり、蒸し物などに使用したりするのに最適です。
また、桜の葉を利用したものに、桜葉そば、桜葉寿司、葉に包まれた水ようかんや、きんつばなどがあります。
桜の樹皮
江戸庶民の間では、桜の樹皮が食中毒や胃腸カタルに効くことが知られていたそうです。桜の皮を煎(せん)じて飲めば効果があると、麻酔薬を考案した華岡青洲(1760~1835)も『瘍家方筌(ようかほうせん)』で語っています。
また、樹皮の抽出エキスは、ブロチンといって咳をしずめたり、去痰(きょたん)に効き目があるので、今日でもシロップなどに配合され、薬品として市販されています。
桜の木片
桜の木片は、燻製のためのスモークチップとしても用いられています。香りの良いサクラの木材を高温に熱し、そのときに出る煙を食材に当てて風味付けすると同時に、煙に含まれる殺菌・防腐成分を食材に浸透させるのです。
桜というのは、食材としてもすぐれていることがよくわかりますね。
参考:
鈴木昶『花のくすり箱』(講談社)
井筒清次『おもしろくてためになる桜の雑学事典』(日本実業出版社)