漢字をしっかり勉強してきたのに、過去問では点数がとれません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

漢字をしっかり勉強しており、模試の成績もまずまずなのですが、過去問では点数がとれません。また、語彙(ごい)が少ないので苦労していますが、読書の時間もあまりとれません。どうしたらよいのか悩んでいます。

相談者:小6男子(性格・大ざっぱなタイプ)のお母さま

【回答】

最初は点数がとれなくても、過去問の傾向分析と弱点補強で点数は伸びる。



■過去問演習を始めてはみたが

模擬試験などでは点数がとれていたのに、志望校の過去の問題をやり始めてみると(過去問演習)、点数がとれないと悩むかたは少なくありません。ご質問をいただいたかたのお子さまも、模試の成績はまずまずのようです。それではなぜ点数がとれないのでしょうか? その辺りから考えてみましょう。

一般的に、志望校の過去問演習を始めるのは、6年生の9月から10月にかけてだと思います。始めたころは、得点が30%、40%であることが多いでしょう。最初から60%、70%とれていたら、志望校をより高めに変更してもいいくらいです。もちろん点数が低いのは最初のうちだけで、少しずつ上がっていくのが普通です。ですから、最初の数回は、前述のように点数が低くてもあまり心配する必要はありません。問題なのは、何回かやっても点数が伸びない場合です。

■過去問で点数がとれない理由

模試の成績は悪くないのに、その割に過去問演習で点数がとれない理由はいくつかあります。しかし、なんといっても志望校の問題構成や質問形式に慣れていないということが大きいでしょう。模擬試験は標準的な問題を出題しますが、各学校が出題する問題にはそれぞれの個性が顕著な場合が少なくないからです。たとえば、物語文だけの場合や逆に説明的文章が2つの問題構成の学校もあります。今まで読んだことのないようなテーマの文章を頻繁に出題する学校もあるでしょう。また、知識問題が全体の3分の1を占めていることもあれば、ほとんど記述問題しか出題しない場合もあります。さらには、記述問題で「自分の言葉で書きなさい」というような条件を出す学校もあります。そんな場合は、どこまで本文の表現を使ってよいのか、あるいはそれらを自分なりに言い換えなければいけないのかとまどってしまうことでしょう。

■点数を上げていくには

さて、このような過去問演習の中で、点数を上げていくにはどうしたらよいのでしょうか。いちばん大切なことは、まずは、志望校の出題傾向を把握することです。そのうえで、点数をとれない原因、すなわち弱点を見つけて、それらを克服していくことだと思います。そのために過去問を演習しているといっても過言ではありません。出てきた点数に一喜一憂するのではなく、「なぜ点数がとれないのか?」「点数をとるにはどうしたらよいのか?」を考え、何らかの対策を講じることが重要なのです。

たとえば、問題文を読んだり問題を解いたりするのが遅いお子さんがいたとします。その場合は、問題文を読むスピードを上げるべく、時間を計ったり、集中して問題文を読む練習を重ねたりすることです。あるいは、1つの抜き出し問題に執着して、やけに時間をかけてしまうこともあるでしょう。その結果、解答時間のバランスを崩し、できる問題を解けずに制限時間が終了してしまうということになります。そんな場合は、時間内に最大の点数をとるための時間配分を学ぶことが重要になります。また、読み慣れていないテーマの文章には、知らない言葉が多く出てくることもあるでしょう。6年生の今の時期に、読書をする時間はありません。そんな場合は、知らない言葉を辞書で調べたり、保護者のかたが教えてあげたりしてください。

このように、出題傾向に慣れることで、問題文のテーマに慣れることで、あるいは苦手な設問形式を克服することで、徐々に点数を上げていくことができます。志望校の傾向をとらえ、自分の弱点を克服していくことで点数を伸ばすことが可能になるのです。志望校に安心して合格するためには、12月末くらいまでには合格最低点を超えるようにしたいものです。

■合格最低点を超えても……

12月末くらいには最低合格点を超えるようにしたいといいましたが、合格最低点を超えると必要以上に安心してしまう場合があるので注意してください。特に、早い時期に合格最低点を超えると、既に合格したような気持ちになり、つい油断してその教科や全体の勉強がおろそかになることがあります。もちろん試験目前の受験生ですから、大っぴらに遊びだすことはないと思います。恐らく、勉強していても以前のように集中できなくなるという感じでしょうか。このような状態は非常に危険です。特に、年末・年始は「正月くらいは」とつい気を緩めがちになります。試験を受けて合格証書をその手につかむまでは、くれぐれも油断しないように、最後の最後までしっかり勉強していきましょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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