国語が苦手なので、下の学年の問題を解かせています[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


国語が苦手なので、下の学年の問題を解かせています[中学受験]

【質問】

国語はよく勉強しており、本もたくさん読んでいますが、長文読解で作者の気持ちを読み取るのが苦手です。最近は、下の学年の問題を解かせています。そのせいか、少しは成績が上がってきていますが、まだまだなのでどうしたらよいものかと悩んでいます。

相談者:小6女子(性格・大ざっぱなタイプ)のお母さま


【回答】

6年生なら、なるべく早く6年生の問題に取りかかる。


■質的に異なる国語のカリキュラム

算数の場合、新しい単元に入るとまずは例題を通してその単元の解き方や考え方をマスターします。次に、基本問題を演習し、さらには練習問題をこなしていきます。そして、最後には簡単な入試レベルの問題まで解けるようにする、というのが大方の学習順序でしょう。そこには、易しい問題から難しい問題が整然と配列してあるはずです。しかも、1つの単元がわからないと次の単元が理解できない場合もあります。
たとえば図形は、図形の性質→平面図形→立体図形の順番で勉強していきます。仮に「図形の性質」でサボっていると、「立体図形」で問題が解けなくなります。あるいは、「比の性質」を習得できないと、文章題はもちろん図形問題でも大いに困ることでしょう。このように算数では、勉強する順番がある程度決まっている場合が多々あります。そのため、算数が苦手な場合は下の学年から積み上げて勉強しなければならないこともあるでしょう。
しかし、国語の場合は事情が異なります。国語は算数のように、徐々に難しくなるというわけではありませんし、前の学年の内容がわからないと前に進めないということもありません。たとえば、算数のカリキュラムは階段を上るように徐々に難しく(高く)なっていきますが、国語の場合は、ハシゴを登るように急激に難しくなる時期があるということです。

■中学受験の国語はどのように難しくなるのか?

塾での国語のカリキュラムを見てみると、4年生、5年生、6年生(前半)と、同じような内容をくり返している場合が少なくありません。もちろん扱う問題の難度は上がっていきますが、算数のように学ぶ内容が学年によって大幅に異なるということはありません。なぜなら、算数の場合は学ぶべき内容がかなり多いのですが、国語の場合はそれほど多くないのです。そのため、学年ごとに同じような内容をスパイラルで学ぶ余裕があるのです。スパイラルなので学年が上がれば難しくなりますが、勉強している内容は、たとえば物語文であれば「心情表現のとらえ方」を各学年でくり返し行うという具合です。

また、国語は算数と異なり、入試に向けて徐々に難しくなっていくというわけではありません。そうではなくて、ある時期にグンと難しく、ステップアップするという感じです。難しくなる最初の時期としては、4年生から5年生に上がるころから夏休みにかけてでしょうか。4年生くらいまでは感覚で解けていたものが、このころから論理的な思考が求められるようになります。本文を根拠にして問いに答えるようにしないと、成績が安定しなくなります。論理的に考えることに慣れていない子どもたちは、まずこの辺りでつまずくことになります。

■過去問でさらに難化

次に難しくなる時期は、6年生の初めから夏休みくらいにかけてです。正確な時期はカリキュラムによりますが、このころから少しずつ過去問に挑戦していくと思います。物語文なら単純な友情物語ではなく、親子の葛藤(かっとう)や男女の恋愛など、複雑な人間関係をテーマにした文章が出てきます。また、説明的文章ならば、今までは自然環境や動植物などを主題にしたものが多かったのですが、このころから、言葉に関する問題や文化の比較、あるいは文学や芸術をテーマにするものが出題されます。出典は大人や青少年が読む新書からのものが多くなり、特に、論説文は抽象的なものも少なくありません。このように抽象的で論理的な文章は、読み慣れていない子どもたちにはかなり難しく感じると思います。

■6年生用の問題に移り、弱点は個々に解決していく

このような国語の性質を考えると、下の学年の問題を解き続けるという勉強には限界があると思います。つまり、6年生であれば、できるだけ早い時期に、6年生用の問題に移るのが得策であるということです。そのうえで、弱点を個々に解決していくことです。解決すべき弱点としては、語彙(ごい)力(熟語、慣用句、ことわざなど)かもしれませんし、複雑な心情表現のとらえ方かもしれません。あるいは、普段読み慣れていない人間関係をテーマにしているため、展開や比喩表現が読み取れないのかもしれません。その場合は、個々に弱点をつぶしていきましょう。語彙力であれば、単語帳で語彙を増やすとか、辞書をこまめにひきましょう。心情表現がつかめなければ、一つひとつ心情を表す動作や言葉をピックアップして、そこに隠された気持ちを教えてあげましょう。また、複雑なテーマの場合は、設定やその時の登場人物の気持ちの変化などを解説してあげればよいでしょう。教える側は国語が得意ではなくても、問題の解答・解説を先に予習しておけば説明できると思います。

このようにして、難しいと思える問題も数をこなしていくことで、徐々に慣れて力が付いてきます。もちろん、下の学年の問題を順番にこなしていき、それがすべて終わったら次の学年のものに取り組むというやり方、時間さえ許されれば最終的には6年生の問題文を勉強するのですから結果的には同じでしょう。しかし、問題は入試までに間に合うのかということです。他の教科も同時に並行して勉強しなければなりません。志望校に合格するという最終的な目的のためにも、より効率的な勉強をする必要があるのです。そのためには、できるだけ早く6年生の問題に移行すべきだと思います。なお、その際は、易しめの問題から始めて、徐々に入試問題や志望校の問題に挑戦するとよいでしょう。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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