本を手に取りますが、すぐに飽きて最後まで読み切れません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。



【質問】

本を読む習慣がなかなか身に付きません。本を手に取りますが、すぐに飽きて最後まで読みきれません。時間を決めてゆっくり読ませるようにすると、ますます読めなくなりました。どうすれば根気よく読めるようになりますか?


相談者:小5男子(性格:感情的なタイプ)のお母さま


【回答】

挿絵が多めのものや短編集など読みやすいものを選ぶ。

■読書は習慣性のもの

本が好きなお子さんは、時間を惜しんで本を読んでいますが、嫌いな子は手に取ろうともしません。学校の授業でしかたなく読まなくてはいけない時などは、楽に読めるものを一生懸命探します。本好きな子と嫌いな子の差はこれほど激しいのですが、この差はどこからくるのでしょうか。
それは、本を読んで感動したとかおもしろかったという経験や1冊の本を読み終えた時の満足感の有無にあるのでしょう。そうした感動や満足感に接すると、もう一度味わいたいという思いから、もう1冊、もう1冊と読み進めていくのです。読書とは習慣性のものであり、そうした満足感を味わいたいためにおもしろい本を探すのだと思います。ですから、なんらかの原因で本を読まなくなると、読書の習慣がなくなる場合も少なくありません。テレビも同じです。連続ドラマを見だすと、見続けずにはいられなくなるのですが、逆に、見なければまったく見なくなるのと同じです。

私事になりますが、数年間テレビなしの生活をしていたことがあります。その時は、テレビを見たいという気持ちがまったく起きませんでした。習慣とは本当に恐ろしいものですが、逆に考えれば読書するきっかけ、すなわち、本を読んで感動する、あるいは1冊の本を読み終えたという充実感をお子さまに与えればよいわけです。

■読みやすいものを選ぶ

きっかけをつくるためには、読みやすいものを選ぶとよいでしょう。そのためには、字が大きく、挿絵が多めのものを選ぶのも方法です。既に5年生ですから、少し幼いかなと思えるかもしれませんが、楽に読めて、読み終えることができれば、少なくとも読み終えた満足感は得られるでしょう。あるいは、短編集などがおすすめです。1冊の本のページ数は普通のものと同じですが、いくつもの物語に分かれているので、一つひとつの物語は気楽に読めます。仮に途中で投げ出しても、いくつかの物語は読み終えているでしょうから、途中で投げ出したという罪悪感は少ないでしょう。

たとえば、星新一のショートショートは男女を問わず人気があります。あるいは、ファーブル昆虫記、シートン動物記などは男の子であれば興味を持つ可能性は高いと思います。名作としては、オー・ヘンリーの名作短編集がおすすめです。本嫌いの人でもきっと読み終えられると思います。それぞれ小学生向けのものが出ていますので、探してみてください。興味を感じるものが、きっと見つかると思います。

■最後まで読みきれなくてもかまわない

本は全部読まないといけないように考えがちですが、最後まで読みきれなくてもまったくかまわないと思います。すぐに飽きてしまうお子さんは、恐らく自分の好きなジャンルがまだ見つかっていないのでしょう。少し読んでつまらないから、他の本を読み始める。先ほど挙げた短編集なら、いくつかの物語を読んですぐやめる。本屋さんで買った本ではもったいない気もしますが、図書館で借りた本ならよいではありませんか。これから好きになる本を探していると考えればよいのです。

それからもう一つ。学校の授業や塾のテキスト、模試で出合う物語文や説明文、論説文の中で、その続きを読んでみたいという文章に出合ったことはありませんか? もしそういう出合いがあったら、ぜひその原典の本を探して読むべきでしょう。すばらしい出合いになる可能性があります。読書が好きになるきっかけになる本、あるいは小学校の思い出の1冊になる可能性があるということです。

■今、身に付かなくても、将来のきっかけになるかもしれない

さて、いくつかのきっかけのつくり方をお話ししましたが、いろいろ試した結果、残念ながら小学生時代はすばらしい本との出合いがなく、結果的に本好きにならないかもしれません。しかし、それでもあまり嘆く必要はないかもしれません。なぜなら、そのような努力が将来において実を結ぶ可能性はあるからです。たとえば、今本を読まなくても、中学生、高校生になって突然、思い出したように本を読み出す人はいます(読み出さない人もいますが……)。そして、それは昔読んだ、あるいは読みきれなかった本がきっかけになることがあるからです。ですから、読みきることができなくても、自ら本を手に取っていることは大切なことだといえます。

本は人生を豊かにしますが、中学、高校時代の読書は、特にその人の人間形成に大きな影響をもたらします。中学、高校になると、さすがに親が読む本をすすめるのは嫌がるでしょうから(本好きの親子が、互いに読む本を推薦することはすてきだと思いますが)、読書好きになる種をまけるのは今のうちだと思って、いろいろ工夫するのもよいと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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