「心のリミッタを外すこと」 大学のロボット研究室が掲げる学びの姿勢
未来を担う子どもたちは、どんな姿勢で学びに向かうべきなのか。そのヒントを探るため、大学の研究室を訪ねるシリーズ。今回は、千葉工業大学工学部 未来ロボティクス学科の林原靖男氏に、ロボット研究で大切なこと、また、学生への指導で心がけている点などについて伺った。
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ロボット工学は、土台となる数学や物理だけでなく、社会学、心理学、経済学など、さまざまな学問を総動員して、ロボットを社会で役立たせていくことを考える学問といえます。
現在は、サッカーをしたり、自律して行動を歩行したりする「ヒューマノイド」を開発しているのですが、より安定して動くようになれば家庭の中に入り、我々の生活を助けることができるようになるでしょう。
実社会で活用できるロボットを開発するには、机上で学ぶだけではなく、社会的な経験をしていることが大事だと考えています。本を読んだり、人と話したり、旅行に出かけたりといったことです。テストでよい点を取ることをめざすだけではなく、さまざまなことに興味を持って取り組んでほしいと思います。
また、ロボットの研究・開発では、すべてにおいて前例のない手さぐりの開発が進められます。そんな時、私が学生たちに必ず言っているのは、「心のリミッタを外せ」ということです。「もっと早く動くロボットは難しい」などと、ときに自分で限界をつくってしまうことがあるでしょう。しかし、その限界を超えた時、新たな技術が生まれると信じています。ただ、リミッタを外すにはリスクを伴います。7年のうちに、20台ものヒューマノイドを開発してきましたが、1台たりとも失敗なく作りあがったものはありません。無理かもしれないという極限を超えた時に、よい結果を上げることができるのです。