「小5ギャップ」を乗り越える [中学受験 5年生]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。今回は、「小5ギャップの乗り越え方」について取り上げます。



■ストレスの多い大人への過渡期を乗りきる

5年生というのは、いろいろと難しい時期です。
成長面では、思春期が始まる子も多くなります。自我の芽生えと同時に、人の目が気になったり、人と自分を比べたりし始めると同時に、対人関係が厳しくなり、友達どうしのトラブルやいじめが起こりやすくなります。特にゴールデンウイーク明け、生活のリズムが休みモードになったあとは要注意です。学級崩壊も、5年生のゴールデンウイーク明けに起こりやすいと聞きます。一方、塾でのいじめというのも、けっこう多いんですね。机の下で蹴ったり、脚を引っかけて転ばせたり、筆記用具を隠したりなんてことはよくあります。

ですから保護者のかたは、今はストレスがたまりやすい時期だと知ったうえで、注意深くお子さまの表情を見てあげてください。元気な日、落ち込んでいる日と、子どもたちの状況は毎日違いますが、あまり元気のない様子が続くようでしたら、学校や塾で何かあったことが考えられます。思春期になると、保護者に話したくないことが出てきて問題を抱えやすいので、根ほり葉ほり聞くのではなく、お子さまが話しやすい雰囲気をつくってあげてください。また、クラスや塾の友達の保護者のかたと、お互い、気軽に話しやすい関係になっておくとよいですね。大人どうしで心配事を相談し合えれば、深刻な事態になる前に解決する手段も見えてきます。

中学受験のコラムなのに、なぜいじめの話? と思われるかもしれませんが、人間関係に問題を抱えていたら、子どもは勉強どころではなくなります。人間関係のストレスは棘(とげ)のようなもので、棘を抜かずに見過ごしていると、傷が深くなってしまいます。傷が浅いうちに、早めにうまく解決を助けてあげることが大切です。



■急に問題が難しくなる「小5ギャップ」の乗り越え方

5年生になると、塾などで取り組む算数の問題が、さらに難しくなります。

4年生までは問題の解き方は一つですが、5年生の問題には解き方が複数あり、解くために必要な要素がいくつも入ってきます。同時に、計算も複雑になりますから、式は立てられても計算の途中でまちがえる、といったことが起きてくる--これが、中学受験における「小5ギャップ」です。
満点をとるためには、いくつもの要素を自分で組み上げていかなければなりませんが、そこまで集中力が続かないお子さまが多いんですね。すると、今まで8割くらいできていたのに、正答率が6割5割と落ちてきます。保護者のかたが心配になるのは当然ですが、お子さまも急に、「もっとがんばりなさい」と言われ始めるのはショックだと思います。実は、問題がハイレベルになっているのですから、できなくなって当然なのです。

ですからこの時期、わからないところがあってもさほど気にする必要はありません。「ここまでできてよかったね」と、できたところまでをほめてあげましょう。お子さまの今の力では無理そうだな、と感じる難問は、保護者のかたの判断で飛ばしていただいてもかまいません。

ただし、5年生の2学期以降、さらに難しい問題が増えてきます。ですから、今は助走の期間。「できない」ことに対する自己嫌悪感を抱かずに、少しずつ難易度の高い問題にチャレンジしていくための集中力は、今のうちに養っておく必要があります。テストなどでまちがえた問題については、どこがわからなかったか見直して解き直す習慣を付けておきましょう。これも、まちがえた問題のすべてではなく、「惜しかった」レベルの問題のみでOKです。



■勉強時間と集中力を確保する

なお、難しいことにチャレンジするには、勉強時間を増やすか、集中力を上げるかのどちらかをしなくてはなりません。すると、時間の使い方が大切になってきます。時間が足りなければ、習い事を一つ辞めるといった選択も必要になるかもしれません。ただし、ただ辞めるのではなく、「次の発表会で好きな曲を弾くまで」「次の試合に出るまで」など、お子さまが達成感を持って辞められるようにしてあげてください。
時間の使い方は、お子さまとよく話し合って決めることが大切です。たとえばお子さまご本人がサッカーを好きなら、サッカーのあとに集中して勉強する時間をとるなど。この時期に必要なのは、勉強時間の密度を上げる工夫なのです。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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