犯罪から子どもを遠ざけ、学生の自主性を育むゼミの学び
大学や学部をどのように選び、何を学べば将来に生かせるのか。そのヒントを求めてさまざまな大学の研究室を訪ねるシリーズ。今回は「地域安全マップ」の考案者として知られる、立正大学の小宮信夫教授の研究室に伺った。
***
「怪しい人について行ったらいけません」。犯罪社会学の研究により、実は、この注意はあまり役に立たないことが明らかになりました。実際の犯罪者は、一見、紳士のような人も多く、いかにも怪しく見える人はほとんどいません。人物の外見や言葉から犯罪者と見抜くことはきわめて難しいのです。
では、どうすれば犯罪を防げるのか。「機会なければ犯罪なし」と考える「犯罪機会論」に基づく研究の結果、重要なのは「人物」ではなく「場所」だとわかりました。犯罪者が怪しまれずに子どもに近づける「入りやすい」場所や、犯行が目撃されにくい「見えにくい」場所では、犯罪が起こりやすい。「入りにくく見えやすい」公園などを設計すること、子どもたちに「危険な場所」を見抜くよう指導することで、犯罪を防ぎます。
そのために効果的なツールが、「地域安全マップづくり」です。子どもが実際に街を歩き、周りの景色を見ながら、危険か安全かを考えて写真を撮り、「この公園は柵がなくて入りやすいから危険」など、景色と結び付いた形で振り返りながら地図をつくります。この経験で、危険な場所を見抜く力が付くのです。
マップづくりは、ゼミの学生1、2人で5、6人の子どもたちのグループを受け持ちます。一緒に街を歩き、考えを引き出すマップづくりは、学生たちの自主性を養うのに効果的な場となります。知らない人と話をする機会が少ない最近の学生たちは、こうした場で四苦八苦します。だからこそ貴重な経験となり、苦労を乗り越えた時、学生たちの中に、本物の自主性や社交性が芽生えるのです。