登場人物の心情や、傍線部の意図を推測するのが苦手です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小5男子(性格:大ざっぱ・論理的なタイプ)のお母さま


質問

物語文の登場人物の心情が変化していく様子や、傍線部の意図を推測することが苦手です。「この表現からはこのように」という一般的な考え方ができず、自分の意見や考えにこだわってしまうため、そこから抜け出せないようです。


小泉先生のアドバイス

「論理的に考えていない」または「文脈で考えていない」という可能性が強い。

“たいていの人が推測する流れに乗れない”ということですが、その原因としては次の3つが考えられます。

まずは、「論理的に考えていない」ということです。問題文の中のある箇所を根拠に、登場人物の心情表現を考えるのが原則ですが、何の根拠もなく、なんとなく雰囲気で考えている可能性はないでしょうか? 「自分の意見や考え」が本文のどこを根拠に出てきたものかを示してもらい、そこで(あるいはそこだけで)よいのかをチェックしましょう。案外、根拠がなくて、なんとなく考えている場合があります。そんな時は、「論理的に根拠を持って考える」ように指導しましょう。

次は、「論理的に考える方法に誤りがある」という可能性です。よくある誤りとしては、登場人物の心情を考える問題で、傍線部のところだけを考えてしまっている例です。
たとえば「登場人物Aの行動」→「登場人物Bの行動1(涙を浮かべる)」→「登場人物Bの行動2」という展開で、「登場人物Bの行動1(涙を浮かべる)」に傍線部がひかれ、その心情を問われたとします。もし傍線部だけを考えるなら、「涙を浮かべる」のですから、一般的には登場人物の気持ちは「悲しい」でしょうか。いや、そうともいえません。
人は「悲しい」「うれしい」「悔しい」など、さまざまな時に涙を浮かべます。そしてその気持ちは、全体や前後の流れによって決定されます。すなわち、登場人物Bの行動2が「扉をバタンと閉めて部屋を出た」なら、「涙を浮かべる」は「悲しい」や「悔しい」が適当でしょう。
また、行動2が「登場人物Aにかけ寄って、その手を取った」のなら、「うれしい」や「感謝」がふさわしいと思います。「言葉は文脈によって決まる」とよくいわれますが、心情表現もまさに文脈によって決まるのです。そして、もしお子さまが文脈を考えずに、傍線部だけで心情を推測しているようであれば、正しく心情を推測する流れに乗れないのは当然といえるでしょう。心情を正しく理解するには、「文脈で考える」ということを教えましょう。

3番目は、行動や言葉が示すであろう心情そのものを、「知識」として持っていない可能性です。たとえば、登場人物が「頭をかいた」なら、文脈にもよりますが、「恥ずかしい」が表される気持ちでしょう。この一対一の対応を知識として知らないのなら、一つひとつ教える必要があります。

以上、3つの原因を挙げましたが、恐らくいちばん多いのは1番目か2番目だと思います。特に2番目の原因として挙げた「文脈で考えない」というのは、かなり国語力がある子どもでも陥りやすく、それを直すことによりテストの点数がぐっと伸びることが少なくありません。お子さまの心情表現の苦手の原因が3つのうちのどれかをチェックし、しっかりと対策を講じてください。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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