受験生・保護者が希望する志望校の校風[中学受験]

2012(平成24)年の中学入試では、「面倒見の良い学校を志望する傾向があった」と大手塾が分析していた。統計的な裏づけはないが、長引く不況と大震災の影響で、安全・安心を願う保護者が増加したためではないか?というのが原因だそうだ。確かに、2012(平成24)年の志望校選定の傾向として、安全・安心という共通の思考が働いているように思える。その事例としては、遠距離通学を嫌って近場の学校にシフトした生徒が多かったことや、十分な合格可能性があっても更に合格可能性の高い学校にシフトした生徒(特に男子で)が多かったことがある。

「面倒見の良い学校」は、良い意味で一人ひとりを大切に、きめ細かな指導を行うのだが、それが行き過ぎれば、指示がなければ動けない自主性のない子どもを育てることになってしまうことも考えられる。中学・高校時代に、自主性を育てることができなければ、たとえ高い能力があっても大学や社会で活躍することができない。この時期に、自主性を身につけられなければ、大学受験で学力の伸びが期待できない。

「面倒見の良い学校」の対極にあるのが「自主性を重視する学校」だ。教師は、子どもが自分で動き出すまで、じっと我慢をして、子どもを観察しつづけなければならない。さらに、子どもを刺激する言動を繰り返すわけで、自主性を育むことは、なかなか難しい。子どもに対し教師が働きかけず、ただ放置しているのであれば、自主性重視の教育ではなく悪い意味での放任教育ということになる。

以前、校風のアンケートを中学受験生(6年生154人)の保護者に行ったことがあった。そのときのデータでは、自主性重視の学校を希望した保護者は64%で、管理重視は10%であった(表1)。誤解があるといけないので、管理重視は、面倒見が良いことも含まれることをアンケートに記載した。同様に、自校の校風を学校に尋ねたところ、自主性重視が43%で管理重視が20%であった(表2)。管理重視の学校は、難易度ランクが高いほど少なく、低いほど多い。ちなみに、一般校では自主性重視よりも管理重視の割合のほうが高かった。一般校では「面倒見の良さ」を売りにしている学校が多いが、一般校を志望している中学受験生の保護者は、自主性重視が平均とほぼ同じ62%と多かった。一般校では、受験生・保護者と学校で大幅なミスマッチがあった。

しかし、ここで疑問がある。なぜ、「面倒見の良い学校を志望する傾向があった」のであろうか。長引く不況と大震災の影響で、本当に安全・安心を願うのであれば、自分の人生を切り開く力を我が子に身につけさせることが、最も必要なことだと思う。そのために必要なことは、「面倒見」よりも「自主性」を重視する校風の学校ではないかとも思うが。少なくとも、こと学校に対して求めるのはサービスということなのだろう。


【表1 受験生・保護者が希望する校風】

中学受験生(小6)154人の保護者アンケートより

管理重視 自主/管理中間 自主性重視
15人 40人 99人154人
10% 26% 64%100%



【表2 学校が自己評価する校風】

首都圏私立中高一貫校109校の学校アンケートより

管理重視 自主/管理中間 自主性重視
22校 40校 47校109校
20% 37% 43%100%

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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