2011年の日本の政治の動きを振り返る

2011年は、東日本大震災という大災害に見舞われるなか、菅首相の辞任と野田新首相の誕生、TPPをめぐる民主党内の意見の対立など、政治に関するさまざまな出来事がありました。政治の動きは、時事問題のなかでも中学入試で問われやすいテーマでもあります。そこで今回は、2011年の政治の動きを振り返っていきましょう。


クイズde基礎知識

2011年の統一地方選挙で、知事選が延期になったのはどこ?/内閣不信任案、何票なら可決?/野田首相は民主党何人目の総理大臣?/野田内閣の別名は?/野田内閣発足後、わずか8日後辞表を提出したのは何大臣?/「TPP」とは、参加国の間で何をする取り決め?


時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、適性検査対策に、お役立てください。

Q1

2011年の統一地方選挙で、知事選が延期になったのはどこ?


A.岩手県
B.東京都
C.大阪府


A1 正解は 「A.岩手県」 です。

統一地方選挙とは、いくつかの都道府県の知事選挙や市長選挙などを、同じ日に行うものです。4年に一度、4月に行われ、まとめて選挙を行うことで、経費を削減したり、国民の関心を高めたりする目的もあります。

2011年4月の統一地方選挙は、2009年の政権交代後、初めての統一地方選挙ということもあり、これまでの民主党政権が評価される場ともなりました。しかし、東日本大震災直後であったこともあり、大きな被害を受けた自治体では選挙を延期するという特例法が成立し、知事選を予定していた岩手県にも適用されました。

B.の東京都の知事選挙は、この統一地方選挙の際に行われ、宮崎県知事だった東国原英夫氏などが出馬して話題となりましたが、自民党や公明党が推薦した現職の石原慎太郎氏が4度目の当選を果たしました。

C.の大阪府の知事選挙は、統一地方選挙とは別に、11月に大阪市長選挙とのダブル選挙として行われました。前知事の橋下徹氏が、大阪府と政令指定都市の大阪市と堺市を解体し、東京都のような特別区を新設する「大阪都構想」を打ち出し、大阪市長選挙に出馬したことでも話題になりました。知事選では、橋下氏が代表を務める大阪維新の会の松井一郎氏が初当選を果たし、橋下氏も大阪市長に当選しました。


Q2

2011年6月2日、衆議院で菅直人内閣の不信任決議案が提出され、賛成152票、反対293票で否決されました。この時、賛成が何票以上だったら可決されたでしょうか?


A.223票
B.296票
C.445票


A2 正解は 「A.223票」 です。

投票総数の過半数で可決される日本の場合、内閣は国会から生まれ、国会の信任によって成り立っています。その信任がなくなれば、内閣は行政の仕事を進めることはできません。

内閣不信任決議は、行政権(政治を行う権利)を持つ内閣が大きな力を持ちすぎないように、立法権(法律をつくる権利)を持つ国会がチェックをするための手段のひとつで、日本の場合は、衆議院と参議院の2つの議会のうち衆議院だけに権利が与えられています。衆議院で出席議員の過半数の賛成があった場合、可決されます。

2011年6月の菅内閣に対する内閣不信任案は、東日本大震災への対応や復興のための取り組みが不十分だとして、野党の自民党と公明党から提出されました。民主党内からも不信任案賛成を表明する人が増えたため、可決する可能性もありましたが、菅首相が、復興へのめどがついたところで退陣すると表明したことから、民主党内のほとんどが反対に回り、否決されました。


Q3

2011年9月に新しく就任した野田佳彦総理大臣(首相)は、民主党政権になってから何人目の首相?


A.2人目
B.3人目
C.4人目


A3 正解は 「B.3人目」 です。

民主党政権の首相は、鳩山由紀夫氏、菅直人氏に続き、野田佳彦氏が3人目です。首相の名前は入試で問われる学校も多いですから、漢字で書けるようにしておきましょう。

民主党は、2009年8月に行われた衆議院議員選挙で、単独政党としては史上最多の308議席を獲得して与党となりました。これまでの自民党・公明党連立政権からの歴史的な政権交代となり、当時の党代表であった鳩山由紀夫氏が、民主党政権1人目の首相に就任しました。鳩山政権は高い支持率を誇っていましたが、自身の政治資金問題や普天間基地移設問題をきっかけに支持率が急落し、2010年6月に総辞職しました。

代わって首相に就任した菅直人氏は、東日本大震災の復興などに取り組みましたが、対応が不十分だとして国民の支持を失い、Q2の解説のように、内閣不信任案提出をきっかけに、8月に辞任しました。そして、菅直人氏のあとに、民主党代表選挙で決選投票の末に海江田万里氏らを破った野田佳彦氏が、第95代内閣総理大臣に就任しました。

このように首相がひんぱんに入れ替わるのは、民主党政権になってから始まったことではありません。自民党政権時代にも、2001年から約5年5か月続いた小泉純一郎内閣のあと、安倍晋三内閣は約1年、福田康夫内閣も約1年、麻生太郎内閣も約1年、民主党政権になってからは鳩山由紀夫内閣が約9か月、菅直人内閣が約1年3か月といずれも短命に終わっています。こうしたことが続くと、政策がなかなか実行されず、解決すべきさまざまな課題がなかなか解決されないなどの問題が起こるおそれがあります。公立中高一貫校の適性検査では、このように、社会の出来事を覚えるだけでなく、その背景や問題点について考えさせる問題がよく出題されますので、家庭で話し合うなどしておくとよいでしょう。


Q4

野田内閣の別名は?


A.どじょう内閣
B.うなぎ内閣
C.なまず内閣


A4 正解は 「A.どじょう内閣」 です。

野田首相は、民主党代表選挙の際に、詩人・相田みつを氏の作品「どじょう」の「どじょうがさ 金魚のまねすることねんだよなあ」という一説を引用し、「どじょうのように泥臭く、国民のために汗をかきたい」と発言しました。こうしたことから、野田内閣は「どじょう内閣」と言われるようになりました。

「どじょう内閣」は、2011年の新語・流行語大賞にノミネートされ、トップテンに選ばれました。


Q5

2011年9月、野田内閣発足後、就任からわずか8日後に自らの発言の責任をとって辞表を提出したのは何大臣だったでしょうか?


A.厚生労働大臣
B.経済産業大臣
C.外務大臣


A5 正解は 「B.経済産業大臣」 です。

経済産業省は、日本の経済や産業の発展やエネルギー政策を担当する省庁で、原子力発電所を監督する立場にもあります。野田新内閣では、その経済産業省のトップである経済産業大臣に鉢呂吉雄氏が就任しました。

鉢呂氏は就任直後に、東日本大震災で重大な事故が発生した福島第一原子力発電所を訪れましたが、その際の発言が問題になり、大臣就任後わずか9日目に辞任することになりました。その後の経済産業大臣には、枝野幸男氏が就任しました。

内閣が解決しなければならないさまざまな問題は、各問題に関連した省庁が、大臣の指示の下で対応し、解決にあたります。野田内閣が抱えている問題では、原発問題などは経済産業省、北朝鮮の拉致被害など外交に関する問題は外務省、年金制度の見直しなど国民の福祉や衛生に関する問題は厚生労働省、消費税引き上げなど財政に関する問題は財務省、八ツ場ダムの建設など国土の開発や交通に関する問題は国土交通省が主に担当します。Q6で解説するTPPのように、外交や産業など多くの分野に影響する問題に関しては、外務省や経済産業省など関係するいくつもの省庁を横断するチームをつくって対応することもあります。


Q6

2011年11月、野田首相が「TPP」への参加方針を表明したことに対して、民主党内外から、賛否両方の声が寄せられました。「TPP」とは、参加国の間で何をする取り決め?


A.関税をやめる
B.同じ通貨を使う
C.温室効果ガスの排出枠の取引をする


A6 正解は 「A.関税をやめる」 です。

TPPは、「環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)」の略で(「環太平洋パートナーシップ協定」「環太平洋経済協定」などともいう)、太平洋を取り巻く国々の間で、「関税」をやめようという取り決めです。2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4か国の間で始まり、その後、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアなども参加の意向を示しています。

関税とは、貿易が行われる時に、輸出をする国が輸入をする国に対して払わなければならないお金のことです。外国からの安価な輸入が増えすぎると、同じ製品をつくっている日本の企業などの製品が売れなくなってしまうおそれがありますが、関税には、そのような事態を防ぎ、日本の産業を守る意味があります。

その一方で、関税は、活発な貿易を妨げる原因にもなります。もっと輸出をしたいと考えている国にとっては、あまり好ましいことではありません。また、関税があると外国の製品が買いにくくなるため、好ましくないと思っている人もいます。こうした背景から、太平洋を取り巻く国々のなかで、関税をなくしてもっと貿易を活発にさせたいと考える国々が中心となって、TPPが進められているのです。

日本も、アメリカをはじめとするTPP参加国から参加を求められています。しかし、TPPに参加すれば、日本の産業が大きな打撃を受ける可能性(たとえば食の安全基準が揺らぐなど)があります。一方で、日本の経済が世界に取り残されないために参加するべきだという意見もあります。どちらを選ぶかはとても難しい問題ですが、野田総理大臣は2011年11月にTPP参加交渉に加わると表明しました。しかし、民主党内には反対の声もあります。

Bの「同じ通貨を使う」は、EUの多くの国々が経済を活発にさせるなどの目的で行っていることです。Cの「温室効果ガスの排出枠の取引をする」は、気候変動枠組条約の参加国などの間で行われているもので、各国ごとに定められた温室効果ガスの排出枠の一部をお金で売り買いすることで、地球全体として見た場合には排出枠が守られるようにすることを目的としています。



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