常に揺れ動く高校入試制度を見極める 高校入試の多様なシステムをどう利用する?[高校受験]

以前は、公立高校の入試制度はほとんど変化がありませんでした。変わったとしても10年に1回程度で、それ以外はまったく変化がなかったのです。ところが、最近は実にめまぐるしく変化しています。そのうえ県内一律などではなく、高校ごとに異なるということもあります。
保護者の方々の時代とは入試の仕組みもずいぶん違っているので、お子さまの受験を理解しやすくするために、4回にわたって整理してみましょう。あわせて、お子さまがどの入試システムで臨んだらいいのか、また受験校を決める際のヒントも解説します。



■「推薦入試」が始まった背景

高校入試は、数年前まではほとんどの都道府県で、「推薦入試」と「一般入試」の2つのシステムで行われていました。また、1990年代に「推薦入試」が始まるまでは、「一般入試」だけで行われていました。1990年代に「推薦入試」の導入が進んだのは、模試の偏差値などで生徒の受験先を輪切りにした進路指導が問題になったこともありますが、その背景には以下の3つの要因があります。


・推薦入試は、最初は農業科の自営者養成コースで始まりました。農家を継ぐ生徒の場合は、ペーパーテストの学力より、農業をやるという意思を重視しようとしたのです。それがしだいに他の専門学科にも広がり、その後、普通科を含む全学科で行われるようになりました。
・一般入試1回だけの時代には、試験当日に病気や事故などで受けられなかった受験生は、ごく限られた二次募集に向かわざるを得ませんでした。
・学力といっても多様な側面があり、ペーパーテストで測れない部分を見る学力検査以外の入試があってもいいのではないか、という考えも主張され始めました。


そのほか、「塾に通えてペーパーテストの学力を鍛えられた生徒が有利で、塾に行かれない生徒が不利である」「生徒の中には明らかに本番に弱いタイプがいるから、平常点で選抜される方式があってもいい」「中学校の授業をきちんと成り立たせるためにも、調査書の成績を重視する方式があったほうがいい」といったことも、当時言われていました。



■「推薦入試」の変化

大正時代の旧制中学の入試に関する文章を読んでも、筆記試験のみの選抜から内申書のみの選抜の間で、常に左に振れ、右に振れしています。どのような入試制度にしても、必ず課題が生まれ、それに対して修正論議が起こる。その繰り返しで、いつの時代も入試制度にはすべての人が満足する「正解」はないというのが、本当のところなのでしょう。

そして、ここへきて、「ペーパーテストで測れない部分を見る」といった推薦入試の意図とは反対方向への振れが強くなってきているということが言えます。
都道府県によっては、推薦入試そのものを廃止したり、推薦入試にも学科試験を課したりする動きが出てきているのです。

推薦入試は、「推薦」という名称がついていることからもわかるように、中学校長の推薦が必要でした。しかし、受験は中学校側が決めるのではなく、本人の責任で行うべきだという考え方から、中学校長の推薦をなくし、本人が受けたければ受けられるようにした都道府県が増えています。推薦がいらないのですから、そのような都道府県では、名称も「前期選抜」「特色選抜」などに変わっています。
ですので、ご自分の都道府県の高校入試の名称がどのようなものであるか、まずそれを調べてみてください。

次回は、多様な入試システムから、我が子に合う入試を見極めるポイントを解説します。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

子育て・教育Q&A