志望校の校風と教育方針 その1[中学受験合格言コラム]

これまでのコラムでお伝えしたように、学校説明会や文化祭、オープンスクール等の学校訪問は、保護者にとって「我が子に合った学校」を見極めるための最良の手段であることは、アンケートでも明らかだ。また、保護者が志望校選定の要素として最も重視しているのは「学校の教育方針」と「校風」であったことを考えると、学校訪問で保護者は、「学校の教育方針」と「校風」が我が子に合っているかを見極めたいということになる。

しかし、なぜ、保護者は学校訪問を行う前に、学校案内で「我が子に合った学校」かどうかを見極められないのかという疑問がある。受験生を持つ保護者から「学校案内で最も重要な教育理念は抽象的でわかりにくい」「学校案内はどの学校も同じような内容で子どもに合っているかどうかがわかりにくい」等の不満を耳にする機会が多い。
本来は、学校案内で「我が子に合った学校」かどうかある程度はわかったうえで、確認するために学校訪問を行う流れが適当と思われる。そもそも学校案内は、入学する受験生・保護者のために、学校が「教育方針」「校風」「入学後の学校生活」等を紹介し、文字通り学校の案内となる説明書であるはずなのだ。

学校は、学校案内をどのように考えているのだろうか? もちろん、学校案内は学校にとっては学校を知ってもらうための重要な小冊子で、多くの時間と労力を費やして作成していることと思う。また、本来の目的である受験生・保護者に学校を理解してもらうために、わかりやすい学校案内を作成する努力をしているのだと思う。
ここで、今年の5月に私立中高一貫校約100校に、学校案内についてのアンケートを行った結果があるので紹介する。「貴校の学校案内を見て、『我が子に合う学校かどうかがわかる』と回答した保護者は何%だと思いますか?」という設問だが、学校の予想平均は45.4%であった。

学校の予想では、学校案内を読めば、45.4%の保護者は、「我が子に合う学校」かどうかがわかり、あとの54.6%の保護者はわからないだろうということになるが、実際にはどうか。
学校にアンケートを行ったあと、小規模ではあったが中学受験予定の保護者にアンケートを行う機会があった。そこで、学校案内を見れば、「我が子に合う学校」かどうかがわかりますか?という質問をしてみた。アンケートの集計結果は「はい」が16%、「いいえ」が84%であった。

驚くべきことは、学校案内のわかりやすさについて、保護者と学校では感覚のギャップが大きいということだけではなく、わかると回答した保護者の割合がわずか16%であったことである。なるほど、保護者が学校案内では校風や教育方針が「我が子に合う学校」かどうかがわからず、学校訪問で見極めざるを得ないことが理解できる。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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