算数・数学を学ぶ意味って? 目の前の問題を解くカギは《隠れた条件》にあり!【金融教育家・田内学さんに聞く】
お気に入りに登録
- 学習
「なぜ、算数や数学を学ぶの?」
お子さまからそんなふうに聞かれた時、どう答えますか?
現実には起こりそうもないシチュエーションの問題文や、難しい方程式……。大人になってから、いったい役に立つのでしょうか。
今回お話を聞いたのは、金融教育家の田内学さん。算数・数学を学ぶことで人生はどう豊かになるのか、率直に質問してみました。
算数・数学を得意な人が、本当にたけている能力とは
——ズバリ、田内さんが考える「算数・数学を学ぶ理由」は何ですか?
「物事を俯瞰(ふかん)して見る力を身に付けるため」、でしょうか。
算数や数学の問題を解く過程で、「論理的に考える力」が身に付くというのはよくいわれていますよね。もちろんそれも重要なのですが、社会生活においてさらに算数・数学の力を生かせるとしたら、物事を俯瞰して条件を見つけ出す力だと思っています。
——詳しくお聞きする前に……、現在金融教育家として活動する田内さんですが、小さいころから算数や数学が好きだったのですか?
好きでしたね! 問題を解くこと自体が面白かったですし、人に負けないといえるくらい、得意である自信もありました。
——なぜ好きになったのでしょう。
小学生のころは親にほめてもらえるとか、「こんな問題が解けるの!?」と大人が驚くのがうれしくて、それがモチベーションになっていました。
中学生になると、試験でみんなが解けない問題があった時に「試験を作ってくれた先生に申し訳ない、自分が解かなければ」という使命感も持っていました(笑)。わからない問題をずっと考え続けて、ある日突然ひらめいて答えが見つかった時の気持ちよさも好きでした。
——そのひらめきを得られるのも、数学ならではなんですか?
もちろん他の教科でも得られると思うのですが、僕にとっては数学だったということですね。
というのも、算数や数学は「はじめに条件をはっきりさせてから解く」ことを学ぶ学問だと思っていて。
——条件?
問題文には、あらかじめいろいろな条件が書いてあります。「太郎くんは、時速5キロの一定の速度で歩きます。次郎くんは時速10キロで追いかけます」みたいな具合で。
僕らはこの条件をもとにして、「次郎くんは何キロ地点で追いつきますか?」といった問題への答えを見つけるわけです。問題を解くためには「条件を見つける力」が重要で、これは算数・数学の問題を解くだけでなく、人生のあらゆる問題を解決できる力にもなり得ると感じています。
人生のあらゆる問題を解決する力になる
——人生のあらゆる問題……。
たとえば、子どもの時「遠足に持っていくおやつを500円以内で持ってきてください」というような決まりがあったじゃないですか。
——ありましたね。これと何か関係が?
このお題に隠れている「見えない条件」に目を向けてみると、純粋に500円以内で好きなものを買えばいいわけではないことに気が付くと思います。
たとえば、「アイスクリームを持っていきたくても遠足では溶けてしまうから無理」という条件があります。「空腹時に食べるのか、お弁当を食べたあとに食べるのかによっても自分が食べたくなるものも変わる」わけで、それも一つの条件になりますよね。
実は私たちは、そうやって問題に対してあらゆる見えない条件を見いだして、優先順位を付けながら解決方法を見いだしていくんです。この場合は「持ち運びが簡単で、お弁当を食べたあとには甘いものを食べたくなるから、クッキーを買おう」といった具合になりますね。
このように、問題を解くための条件は何か? を俯瞰して見いだす力は、算数や数学の学びで得られる力と、実は同じなんです。
——確かに……。算数や数学ができるようになるということは、見えない条件を見つけ出し、課題解決の力を高める、ということなのですね。
まさにそうですね。
AI時代にも存在感のある学び
——この力は、大人になっても役に立つのでしょうか?
もちろんです。生きていく過程では、いろんな問題が起こります。そして、世の中にある問題のほとんどは、条件がはっきりしていないものだらけ。隠れた条件を探して、解決の手がかりを探さないといけません。
でも、俯瞰して物事を見つめて、そこに隠された条件さえわかれば、答えを導き出すことができます。
変えられる条件とそうでない条件を整理することで、より客観的な視点で問題解決につなげることもできます。社会に出て、自分がやりたいことができなかったり、困難な課題に直面したりした時、その環境におけるルールの存在(=条件)に気が付くことができれば、もしかするとルール自体を変えるという選択肢が出てくるかもしれないですよね。
——その力を養うきっかけの一つに算数・数学がある、ということですね。
AIの性能が上がっていく中で、「これからの時代は問題発見能力が大事だ」という話もよく耳にします。もちろんそれは大事なのですが、発見した問題に対してどういう条件があって何を変えることができるのかを見いだす力は、生きていくために有効だと思います。だからこそ、算数や数学の学びは、社会や世界の理解、そして問題解決につながる。そう思っています。
◆田内学が考える「算数・数学」を
学ぶ意味
「俯瞰して物事を見る力を身に付けるため」
- 算数・数学ができると、俯瞰して物事を見る力が身に付く
- 物事を俯瞰して見ることができれば、問題を構成する条件に気が付きやすくなる
- 条件に気が付けると、問題を解決しやすくなる
<文・飯室 佐世子>
- 学習
みんなが読んでる!おすすめ記事
- 「ごほうび」は悪?子どもの自主性を伸ばす、干渉しすぎない保護者の関わり方
- 科学技術と平和は両立できる?理系・文系を超えた先にある、社会科の学び【東京大学教授・横山広美さんに聞く】
- 「いつになったら勉強するの?!」とおさらば! 中学生の悩みからわかる「勉強をやる気」を引き出す方法
- 「ねぇ、普通って何?」小2の息子の疑問で気付いた、《誰かの当たり前》との付き合い方
- 学びをダウンロードして、自分の言葉で話す。相川七瀬が考える、学ぶ意味
- 無理はさせたくない!中学生活での塾と学校の勉強バランスはどうすればいい?
- 子どもの習い事を辞めさせるタイミングと、辞める習い事の判断基準って?
- 少年野球から算数を教える?元「体操のお兄さん」佐藤弘道が考える、学ぶ意味
- 反抗期の我が子についイライラ…どう対応すべき?/保護者のお悩み解決隊#8