苦手だと思いがちな「読書感想文」は「問題提起」と「答え」を導く練習
子ども一人ひとりの視点を生かした読書感想文を仕上げるコツと保護者のかかわり方について、『読書感想文書き方ドリル2018』の著者で思想家・教育家・作家の大竹稽さんに伺います。
材料は「捨てる」のではなく「選ぶ」
1 あらすじをまとめる
2 注目したところをあげる
3 自分の体験や、昔話・寓話と比べる
という3つのステップを踏むことで、読書感想文を書く上でのさまざまな材料が集まってきます。
ここからは、
4 本のテーマを考える
5 自分なりに問題提起をしてみる
6 3であげた昔話や自分の体験と比較しながら、5の問題について考える
7 5の問題に対する、自分なりの答えを出す
というステップに入りたいと思います。
この段階で大切なのは、「焦点を絞る」ということです。出てきた材料をあれもこれも入れようとすると、考えが深まりにくいし、読者に伝わりづらいものになってしまうからです。カレーでいえば、「どの具材を入れるか」ですね。
保護者のかたは、「そうか、この話とこの話はつながるんだね」「この話を中心にしたらどうかな」というふうに、お子さまと相談しながら時間をかけて、材料を整理してあげてください。
ここで大事なのは、材料は「選ぶ」けれど「捨てない」ということです。面白いものを書ける子ほど、考え方は雑然としていてまとまりにくい場合があります。ちょうど、カレーを作りたいのに、子どもが出してきた材料がマグロとパイナップルとトマトと小豆だった、という感じです。
うーん、全部突っ込んだら食べられなくなっちゃうから、今回はマグロとトマトを使おうか! というふうに選んでいきますが、もしかしたら、パイナップルと小豆は別の機会に使えるかもしれません。子どもが本を通して考えたことに「ムダ」なものはひとつもないのです。
「問題提起」の芽は摘まずに咲かせる意識で
本の内容を踏まえて、いかに自分なりの「問題提起ができるか」は感想文の「キモ」といえます。「注目したところ」や「気になったところ」の中に、子どもはすでに問題意識を感じ取っていることがほとんどです。それを言葉にするには時間がかかるかもしれませんが、保護者は辛抱強く待つことが大切です。
問題提起というと難しそうですが、「なぜ~なんだろう?」「~といわれているけど本当にそうかな?」と疑問を見つけることは、たいてい子どもは大人より得意です。
たとえば、ある小学生の「友情なんていらないんじゃないの?」という発言にドキッとさせられたことがあります。詳しく聞いてみると、「無二の親友より、一つの目標のために集まって、達成したら別れる仲間のほうが、俺はいいと思うんだけど」という話でした。
「そんなことを言ったら周りに嫌われるのでは」と先回りして心配する前に、まず子どもはなぜそう思ったのか、よく話を聞くことが大事だと思います。そのほうが、友情の物語を読んで「友だちって素晴らしい」という紋切型の感想で終わるより、ずっと友情に対する考えは深まるでしょう。
疑問や問題提起の芽は、摘まずに育てて咲かせることが大事です。たまに「強い者が正義なのでは」とか「なぜ人を殺してはいけないのか」といった、根本的で難しい意見が出てくることもありますが、そこは周囲の大人が恐れず受け止めて、対話を重ねていくことが大事です。家族でそんな対話を楽しめるおうちの子どもは、のびやかで面白い作品を書ける傾向があると思います。
読書感想文は「キャンプ料理」と似た、一期一会の作品!
読書感想文は、選んだ本の内容、その時点で子どもが持っているものの見方や考え方、保護者のかたと話し合ったことなど、さまざまな材料が煮込まれて仕上がる一期一会の作品です。
数年後に同じ本で書いたとしても、まったく違う作品になるかもしれません。夏のキャンプの思い出が、その日の天気や参加した人、持って行った食材やメニューによって、まったく違うものになるのと似ています。
読書感想文というと、さっさと終わらせてしまいたい面倒な宿題と思われるかもしれません。でも、考え方によっては、親子の対話を深めていくことで、子どもの新たな可能性に気づくチャンスでもあるのです。
お子さまの問題を見出す力、自力で答えを出す力を信じて、まずは見守り、難しければ一緒に考えながら、ぜひこの夏に一期一会の読書感想文を仕上げてください。