学力不振の学校にこそ支援を 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)追加分析

子どもの学力をどう向上させるかは、保護者のみならず、国や地方自治体にとっても大きな課題です。国民一人ひとりの資質・能力を高めることが、個人の幸せのみならず、社会の発展や経済成長につながるからです。そのためには、単に子ども個人や学校の努力に任せるだけでなく、具体的な施策を講じて支援するという教育政策が、ますます重要になってきます。毎年4月、全国の小学6年生と中学3年生を対象に行われている 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)は、そのための重要なツール(道具)です。

同テストの在り方を検討する専門家会議に、注目すべき研究成果が報告されました。文部科学省がお茶の水女子大学に委託して実施した、全国学力テストの追加分析調査です。そこでは、不利な状況に置かれているにもかかわらず、高い教育効果を上げている学校の特徴が浮き彫りになっています。

全国学力テストの追加分析が、これまでにも教育格差の解消策を探るものとして重要な指摘をしてきたことは、過去の記事でも紹介してきました。今回の報告も、そうした研究成果の蓄積に基づいています。これまでの研究では、保護者の家計収入や学歴を示す「社会経済的背景」(学校SES)の度合いが高い学校ほど学力テスト結果も良好であること、一方で学校SESが低いにもかかわらず良好な成績を上げている「教育効果の高い学校」も一部に存在していることがわかっています。そこで今回は、教育効果の高い学校30校と、低い学校30校を抽出して比べることで、教育効果の高い学校の特徴を明らかにしようとしました。

その結果、高い教育効果を上げている学校ほど、(1) 表現力・課題探究力の向上 (2) 最後に学習したことを振り返る授業スタイル (3) 教職員の共通理解による家庭学習の指導 (4) 学力調査の活用 (5) 少人数指導・チームティーチング(TT)・補充学習 (6) 学校外リソース(地域人材の外部講師など)の活用 (7) 教職員の実践的研修・研究成果の活用……に取り組んでいることがわかりました。とりわけ主に「活用」の力を問うB問題の結果が良好な学校では、地域との連携や異学年連携など、多くの人と関わる経験を豊富に積ませることで、思考力や言語活動を促しているといいます。
一方で、一人親世帯は二人親世帯に比べて学力形成にも不利な状況が浮き彫りになっています。ただし、保護者の高い教育期待や、読書活動などによって、学力を上げている家庭の存在も明らかになっています。

こうした成果を、より多くの学校に広げる必要があることはいうまでもありません。ただ、学校の努力にも限界があります。専門家会議の座長で、委託調査を取りまとめた耳塚寛明・お茶の水女子大教授は、学校SESを踏まえ、「より効果的なところに教育資源を投下する必要がある」と指摘しました。

今年4月に行われた全国学力テストの結果も、間もなく発表になります。単に成績の上下だけに着目するのではなく、今後よりよい教育を行うための貴重なデータとして生かし切ってもらいたいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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