読書感想文によくある悩み。保護者はどうサポートする?

原稿用紙を前にして鉛筆がピクリとも動かないのは、感想はあるものの、それをうまく言葉で表現できていないだけかもしれません。子どもとの対話を通し、漠然と感じていたことを表現する手助けをするなど、保護者にできるサポートがあります。国語専科教室代表の工藤順一先生が、よくある質問にお答えします。


あらすじばかりで、読書感想文の体をなしていないのですが……。

 感想を書こうとしても、「おもしろかった」「驚いた」くらいしか思い浮かばず、仕方なくあらすじを書いて原稿用紙のマス目を埋めているのでしょう。豊かな感想を書くためには、「どこがおもしろかったのか」「なぜおもしろいと感じたのか」「似た体験をしたことがあるか」といった振り返りをする必要があります。自問する力が十分に育っていなければ、保護者が質問して感想を引き出してあげましょう。感想がないのではなく、単に言葉にできなかっただけだと本人も気づくはずです。

 

お子さまと対話をする際は、「5ステップで読書感想文がスラスラと書ける!【後編】」の「【STEP4】感想を整理しよう」を参考にしてください。お子さまに質問をする際は、きちんと理由を聞くことで、読書感想文の内容が深いものになります。

 

 

1年生の子どもが本を読み終えましたが、うまく文章が書けません。どのようなフォローをすればいいのでしょうか。

 読書感想文に限らず、低学年の子どもは自力で作文を書くのは難しいというのが、私の考えです。第三者に向けて書き言葉で表現するためには、自分の頭の中を客観視する必要がありますが、低学年ではまだそのような力が十分に育ってないからです。ましてや読書感想文は、自分が考えたり感じたりしたことを整理しなくてはなりませんから、低学年には非常にハードルが高いと言えるでしょう。ですから、低学年の時期に、読書感想文をはじめとした作文がスラスラと書けなくても、心配することはありません。それでも、低学年のお子さまも、本を読めばいろいろと感じ取って感想を抱きます。それを書き言葉にするプロセスを手厚くサポートしてあげてください。

 

 

本を読んで「おもしろくなかった」と言っています。違う本にしたほうがよいのでしょうか。

 きちんと根拠を示したうえで、「おもしろくなかった」と書くことも立派な読書感想文です。子どもたちは、読書感想文には「良いこと」を書かなければいけないという固定観念をもっています。たとえおもしろくない本でも、そのとおりに書いたら叱られると無意識的に感じて、「おもしろかった」と思ってもいないことを書くのです。こうした固定観念が読書感想文をつまらないものにしています。

 

教師に評価されやすいとしても、本心ではないことを書くのは苦痛ですし、長い目で見てプラスにはならないでしょう。もちろん、おもしろい本を選ぶのに越したことはありませんが、仮におもしろくない本だったとしても、批判的なことを書くくらいの自由なスタンスで臨んで問題ないと、私は考えています。

 

 

読書感想文が完成したのでチェックをしてほしいと言われました。どのような点に気を付けると良いでしょうか。

 保護者が目を通す際には、次のような点をチェックしましょう。

 

・誤字・脱字はないか。

・助詞の「てにをは」に誤りはないか。

・意味はきちんと通っているか。

・わかりにくい箇所や不要な文章はないか。

・接続詞「しかし」「だから」「それから」などの使い方は正しいか。

・段落が分かれているか。

・文がダラダラと続いていないか(句読点は正しく打たれているか)。

・常体(だ・である)と敬体(です・ます)が一緒になっていないか。

 

 

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プロフィール


工藤順一

国語専科教室代表。1949年青森県生まれ。大手学習塾講師などを経て、1997年、国語専科教室を設立。読書や作文の指導を通して、本好きな子ども、自分で考える子どもの育成に努める。『書きこむだけで読書感想文がすらすら書ける』(監修/合同出版)、『これで考える力がぐんぐんのびる!! 国語練習帳』(合同出版)、『文書術—読みこなし、書きこなす』(中央公論新社)など著書多数。

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