文科省が食育のプログラム開発へ 「スーパー校」指定し「教科書」も‐斎藤剛史‐

食生活は生きるための基本であり、そのために必要な知識や習慣を身に付ける「食育」は大切なことです。しかし、いざ「食育」といっても実際の取り組みは学校現場任せで、その成果の科学的検証もあまりされていませんでした。このため文部科学省は、2014(平成26)年度から全国の小中高校をモデル校に選んで「スーパー食育スクール」(SSS)に指定し、新たな食育プログラムの開発に乗り出すことにしました。

食育については、2005(平成17)年に食育基本法が制定され、それに基づいて現在は第2次食育推進基本計画(11~15<同23~27>年度)が進められています。しかし文科省の有識者会議は2013(平成25)年末にまとめた最終報告の中で、食育の現状について小中学校の取り組みが中心で、しかも栄養学的視点に偏る傾向があると指摘し、医学・社会学・経済問題や環境問題など多様な視点から食育をとらえる必要があると提言しました。これを受けて文科省は、2014(平成26)年度から科学的な視点を加味した新しい食育プログラムを開発するため、全国の小中高校から30校程度を選んでSSS事業を開始することを決めました。

SSSは、大学・研究機関、企業、地元の生産者や関係団体などと連携して、「食とスポーツ」「食と健康」「食と環境」「食と学力」などをテーマに実践研究を行います。また、これまでの食育モデル校などと異なり、文科省・厚生労働省・農林水産省が連携してバックアップするほか、SSSでは専門家らによる検討委員会をそれぞれ設置し、具体的な数値目標を設定して、食育の効果を測定・評価することになっているのが特徴です。
これについて文科省の専門家会議は、大学や企業などと協力して「食育による児童生徒の基礎体力、集中力、基礎学力、肥満率、病欠率等の改善効果について科学的に分析、検証を行う」としています。食育による正しい食生活で、どれだけ体力が増進したか、どれだけ学力が向上したかなどの研究を行う学校も現れるかもしれません。
食育といえば、学校給食をベースにして、健康によい食生活の在り方などを子どもに教えるというイメージが一般的ですが、SSSの取り組みはさらにその上を行くものといえるでしょう。また、SSSは地域の食育の中心的役割を担うことも期待されています。

このほか、文科省の専門家会議は、学校現場で食育を指導するための「食育の教科書」となるような教材を作成することも提言しています。この「食育の教科書」は食育と一般の教科の指導を関連付けられるようにすることが大きな目標の一つとされています。さらに、次期学習指導要領の改訂を念頭に、小学校から中学校をとおしてどの学年で何を学ぶのか明確にするため、食育の指導方法と指導内容を体系化するための検討を行う必要があるとしています。

これらの具体化にはSSSの研究成果が活用されることになるでしょう。栄養や健康に限られがちなイメージのある食育ですが、環境問題や食糧問題など国際的な視野にまで広がった新たな食育がどのように研究されていくのか注目されます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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