「very good」より「good enough」!子どもの自己肯定感を高めるための親のココロエ

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子どもの自己肯定感を高めよう」といった言葉を、よく目や耳にしますよね。そのカギを握る一つが、じつはおうちのかたの言葉かけや関わり方です。発達心理学が専門の渡辺弥生先生(発達心理学/法政大学文学部心理学科教授)に、子どもの自己肯定感を高めるための、声かけのココロエを指南してもらいました。

この記事のポイント

「very good」はダメ出しのもと!?

自己肯定感とは、読んで字のごとく、自分を肯定する感覚のこと。「自分はこれでいいんだ」「自分には価値がある」と前向きにとらえることで、子どもは失敗を恐れずに新しいことに挑戦したり、壁に当たっても立ち向かったりして行くことができるのです。

でも現実は……。「元気でいてくれたらそれで十分」なんて思いつつも、「テストの点がいい」「まわりの子よりも運動ができる」「友達が多い」といった条件つきの尺度で、お子さんが「very good(=とても良い)」になることを、どこかで強く期待してしまってはいないでしょうか?

そのため、ストレートに口に出さないにしても、良い点をとったときほどあからさまに喜んでいたり、点数や順位のことばかり言ってしまっていたり……。すると、子どもはそれを敏感にキャッチして、点数や順位で「very good(=とても良い)」になることを目指すようになります。また、そうした切り口で自分と友達を比較しがちになり、「自分は計算ができない」「自分は走るのが遅い」「自分は字が下手」という条件つきの尺度で、自分を見るようになってしまいます。そしてそのダメが続くと、「自分はダメなんだ」と、それこそ自己肯定感が低くなってしまうわけです。

ありのままを「good enough」と思わせてあげよう

では、自己肯定感を高めるにはどんな声かけがいいのかというと、本物の自己肯定感というのは、自分の弱いところもダメなところも受け止めたうえでの「自分はそこそこイケている」という感覚です。だから目指すは、「very good(=とても良い)」ではなく、「good enough(=これで良い、そこそこいけている)」のスタンスです。

点数や順位、周りとの比較ではなく、お子さん自身のなかで伸びてきたところ、スキルアップしてきたところを、「伸びてきたね」などと認めてあげてください。また、たとえばなわとびや逆上がりの練習のようなシチュエーションであれば、回数や「できた」「できない」ではなく、がんばっていることを「この間よりも足が上がるようになったね!」と、伸びたところをほめましょう。

すると子どもは友達と競って落ち込んだり、高みを目指して自信をなくしたりするのではなく、苦手も短所も含めて「自分はけっこういけている」「がんばれている」と思うようになっていくもの。そして、ありのままの自分を受け入れて、人生そのものを前向きにとらえ、新しいことにも「やってみよう」と思えるようになるのです。

昨日の自分より成長できれば十分!

「good enough(=これで良い)」を意識するために大切にしたいことが、もう一つあります。それは、点数や順位などを意識してしまうようなことは、満点ではなく、お子さん自身に合った目標を設定するということ。つまり、がんばればできそうなところを目標にすることが大切です。

たとえば、テストでいつも60点くらいをとる子であれば、次のテストは65点くらいを目指す。そして65点がとれたら、次は68点を目指すというわけです。二重跳びができないなら、まずは1回でも飛べればいいじゃないですか。

そうやって、昨日の自分よりも成長することを目標とすることで、「できた!」ということが増え、自信を高めていくはずです。

まとめ & 実践 TIPS

子どもの力を伸ばしてあげたいと思うあまり、つい完璧を求めてしまいがちですが……。「もっともっと」はダメ出しにつながり、逆に自己肯定感を下げてしまいかねません。
それも、子どもの年齢が上がるほど、周りの子との違いも気になってしまうもの。だからまずは、目の前のお子さんだけに注目を! そして、小さなころに「今日もごきげんだね!」「立てたね!」「一歩、歩けた!」なんて喜んでいたように、目の前のお子さんの今に「good enough(これでいい)」を伝えていってあげてくださいね。それこそ、自己肯定感を育むヒケツです!

プロフィール


渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。教育学博士。発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学が専門で、子どもの社会性や感情の発達などについて研究し、対人関係のトラブルなどを予防する実践を学校で実施。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?—乗り越えるための発達心理学』(光文社)、『感情の正体—発達心理学で気持ちをマネジメントする』(筑摩書房)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)、『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(フォレスト出版)など多数。

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