「昆虫好き」な気持ちを追求したら、東京大学院生になっていた。牧田習さんに聞く「夢中」が作った道筋とは
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「子どもには好きなことに夢中になってほしい」と思うおうちのかたは多いですが、大人になるまでずっと夢中になれる何かを見つけられる子はそう多くないもの。もちろん興味が移り変わることは成長過程でよくあることですが、子どもの頃からずっと好きな「昆虫」を追い続け、その後の進路や仕事へと結びつけていった、現役東大院生で昆虫ハンターとして活躍する牧田習さんに、「昆虫の魅力」と「好きなことをやり続けるため」の秘訣についてお話を伺いました。
3歳からはじまった虫好き。
小学生・中学生と、付き合い方が進化していく
3歳の頃、祖父が捕まえてくれた「ミヤマクワガタ」から僕の虫好きは始まりました。幼稚園や小学生の頃は、ずっと虫をとっては飼育するという生活をしていて、学校へ行っても誰かと遊ぶより、一人でずっと虫とりをしていて、あまり友達はいなかったと思います。それでも僕が虫好きなことは誰からも否定されませんでしたし、僕自身、自分が信じたことを突き進む子だったので、周りの目は気にならなかったです。
中学生くらいの頃から、虫とのつきあい方は少し変わり、捕まえた虫を標本にし始めました。またそれまでは大きな昆虫、カブトムシとかクワガタとか、目につきやすい虫を捕まえていましたが、中学生くらいからすべての虫、目につかない虫までどんどん興味が広がっていきました。
昆虫は地球上で名前がついているだけで100万種類程、名前がついていない種類も含めると2,000万種類以上いるといわれているのですが、それらを「全部見る!」くらいの気持ちでやっていて、どんどん虫とりに、昆虫にのめり込んでいきました。
僕自身「物を集める」のは好きで、小学生の頃は「切手」、中学生になってからは「時刻表」などをカードホルダーに入れて飾ったりもしていましたが、他のことは飽きたのに、虫は飽きませんでした。なぜかというと、虫はわからないことが多すぎるからだと思います。切手や電車は誰もが知っているし、本などでも調べられるけれど、虫は誰も知らない種類がたくさんあって、そこが一つの魅力だったのかなと思います。
6歳(幼稚園年長)の夏に妹と虫とりしているところを祖父が撮影。
興味の幅を広げるにはインターネットより図鑑。
2通りの使い方で楽しんだ
捕まえた虫の飼育はほぼ自分ひとりでやっていました。親はほとんど関わっていません。そもそも虫が嫌いですし(笑)。
飼育しているときは、成長の途中段階が見られるので、「この次はどうなるのだろう」、「どれくらいで成虫になるのだろう」と、ずっと夢中になって見ていました。
図鑑も大好きでした。図鑑には2とおりの使い方があって、1つ目は「日常的に見る」。レストランのメニューのように眺めて、「この虫とりたいな」、「この虫どこにいるのかな」みたいなことを、想像しながら見る使い方です。
2つ目は、「とってきた虫の名前や生態を調べる」、調べる使い方です。
図鑑にはすごい情報量があり、何度読んでも見落としていることがたくさんあるので、ずっと読んでいました。子どもの頃の遊びとして、図鑑を見ている時間はとても長かったです。学校の授業中とかも(笑)。
「インターネット」は、情報が断片的だったり、不確かだったりするので、「図鑑」のほうが便利で信ぴょう性が高いと思います。また、虫がずらりと並んでいるので、ある虫を見たら、その虫の隣の虫も調べたり、同じグループや違うグループで比較したり。興味の幅を広げやすかったと思います。
ずっといちばん楽しいことを続けるために
北海道大学へ進学
中高は一貫校に進学したのですが、そこでは虫好きの友達が増えて、友達と一緒に博物館に行ったり、虫とりに行ったりしていました。
周りの友達の影響もあり、少しずつ将来について考えるようになった高校時代、周りの友達は医者や弁護士になりたいという人がとても多く、みんな「何か」になりたいと考えているようでした。そんな中、僕は「何か」になることがいちばん楽しいわけではなくて、「自分が楽しい」と思うことがいちばん楽しいんだと思いました。
そう考えたときに、「虫とりを楽しくやっているときがいちばん楽しい」ということに行きつきました。それで生きていくためにはと考えたときに、それまで全国いろいろなところに虫とりに行っていたのですが、北海道での虫とりがいちばん楽しかったので、大学は北海道大学を目指すことにしました。
そこからは逆算して、どういった勉強をすれば北海道大学に受かるかを徹底的に調べました。「合格すればここで虫とりができる!」と思うと、誰から言われなくてもやることが明確になり、ポジティブに勉強ができました。やる気が出ない受験生は、もしかしたらそこが明確ではないからかもしれません。
海外へ虫とりに行くのに便利だから
東京大学の大学院に進学
大学時代には、日本だけでなくフィリピンやニュージーランドなどの海外でワーキングホリデーをしながら虫とりをしていました。海外には、札幌から東京に一度出てから行くことが多く、面倒だと思っていました。大体北海道の虫もとったし、「海外へのアクセスがいい東京に住んで虫とりがしたい」と思い、次は東京大学の大学院に進学しました。
今は東大で、虫の進化や生態を勉強しています。
小中学校時代は全然勉強しなくて、高校も赤点まみれで、大学の教養科目もボロボロで単位も落としたりしていたのですが、大学院の勉強はすごく楽しんでいます。自分の興味があることをやっているからだと思います。
親は子どもの「好き」を否定せず
興味があることをどんどんさせたほうがいい
僕の母が、他のお母さんに言っていたのですが、
「虫もゲームも変わらない」。
その楽しみがどう生きるかは、いかし方だと思うので、子どもが好きだと思うことは大事にしてあげてほしいと思います。子どもは親が思う以上に、いろいろと考えています。いろいろなことに興味、関心の幅があると思うので、それを否定せずに、好きなこと、興味があることをたくさんさせてあげて、その中でいちばんハマったことに進ませてあげるのがいいのかなと思います。
まとめ & 実践 TIPS
「虫が好き」「虫とりがしたい」という一心で、自分の道をどんどんと切り開いていった牧田さん。ご両親は虫が嫌いだということには驚きましたが、親が子どもの「好き」を認めてあげて、否定しないという教育方針は、見習うべきところがありそうです。
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