学校再開後の生活 コロナ感染、学習の遅れ、生活リズムの崩れ……と不安だらけ!どう解消する?

6月に入り、多くの学校で授業が再開しました。ステイホームの期間中の過ごし方にもよりますが、すっかりマイペースになってしまった生活リズムを、再び通学モードに戻すこと自体が大変、という声も聞こえてきます。家にずっといた時期を経て、再び学校が始まって、イライラしたり不安になったり、という親子が急増中。どうしたら、穏やかでスムーズな親子関係でいられるでしょうか。法政大学人文科学研究科の渡辺弥生先生にお話を伺いました。

まずは保護者自身が落ち着いて

よく言われることですが、保護者の不安やイライラは子どもに影響して、子どももイライラしたり不安になったりします。
人の不安な気持ちというのは、一緒にいる人の気持ちに大きく影響されます。“情動感染”という言葉もあるくらいで、たとえば3人くらいの仲間でおしゃべりしているときに、ひとりがイライラしていたり急に泣き出したりしたら、ほかの人もすぐに影響を受けますよね。ましてや、家でずっと一緒にいる親子なら、影響し合うのは当然です。

子どもの感覚は保護者が思う以上に鋭いです。保護者自身は激しく怒ったりしていないつもりでも、その表情や身振り手振り、特に、声や話し方から、子どもは感情を感じとります。つまり、ノンバーバルな(言葉を使わない)コミュニケーションから気持ちが伝わります。私たちの調査では、ほとんどの子どもが6歳ぐらいまでには、怒っている・悲しい・うれしいといった声を区別するようになる、ということがわかりました。
だから、保護者は、「大人の不安を出さないほうがいいかしら」と思っている時点で、いつもと違うな、ということを子どもはすでに察しています。ですから、まずは大人が実際に落ち着くことが大事なのです。

イライラ・不安の原因は何? そこから考えてみる

そもそも、なぜ今イライラしている人が多いのか、ちょっと考えてみましょう。
今回の新型コロナウイルスによる根本的な「こわさ」とは、命にかかわるという意味での「こわさ」です。人は命にかかわるような危機が起こると、動物としての本能的なところで、体が感じ取ります。いわば「闘うか逃げるか」という緊張状態になり、自律神経系が影響され、意識に上る気持ちの面でもストレスとなるわけです。そこから、漠然とイライラしているとか不安を感じるようになっています。

ということは、よく考えると、イライラする大本の原因は、「子ども」ではありません。大人自身が、大事なことが冷静に考えられず、いろいろなことが手に付かない時に、子どもが用事を言ってくることによって、手間がかかる、邪魔してくると捉えているだけなのです。つまり、子どもにあたる、ということでは解消しないイライラです。根本原因は、もしかしたら、「美容院に行けないこと」「ゆっくりお茶飲む時間がないこと」などかもしれません。原因がわかったら、ではどうしたらよいのか、という対処法を考えるということが大切です。ストレスの解消法は、人によって違うでしょう。オンラインで飲むのがよい人もいれば、運動するのがよい人もいます。

肝心なことは、まず原因を受け止めたうえで、次にどうしようか、と2段階で考えること。解決するための行動は、実際にすぐできそうなことを選びましょう。イライラした親子関係を改善するために、まず大人が解決に向けて実行してみることです。

ストレスの原因となる3つの「変化」を分析してみる

新型コロナウイルスによって起こってくる、感染するかもしれないという以外のストレスによる課題を、もう少し詳しく見ていきましょう。環境・対人関係・時間の3つの軸が見えてきます。

環境の軸

学校へ行かずに家で学習した時期を経て、再び学校生活に戻るという、環境が変わることへのストレスは大きいですね。でも、おそらく多くのご家庭は、少しズレはあっても生活リズムをキープされてきたのではないかと思います。朝ある程度の時間に起きて、朝ごはんを食べるところから寝るまでの時間割を、通学していたときと変わらないように、生活のリズムを大事にしていた家庭もあると思います。

人は、生体リズムというものがあって、夜眠たくなって睡眠をとり、睡眠の時間に心身の疲れをとってリカバーするといった大きな流れがあります。ですから、そういう家庭ではきっと、学校が再び始まっても、「学校に行く時間帯」が変わるだけのことでしょう。ちょっと不規則にしすぎたというご家庭も、いたずらに心配しなくても大丈夫です。学校に行くことで、コロナ以前の生体リズムにあった生活リズムが戻ってくるはず。案ずるよりうむが易し、です。変化を不安に思わず、「ちょっとした冒険みたいね」と現実への足場かけとなる心構えを持ちましょう。

対人関係の軸

これから大きく変わっていくのが対人関係でしょう。これまでは「友達と仲良く」と言われ、密になることをよしとされてきたのに、今後は学校に行っても物理的には密にならず、でも心と心は通い合わせようということになります。子供にとっては戸惑うこともあるかもしれませんね。でも、大事なことは、自分を大切にし、相手も大切にする気持ちです。見かけの距離は、心の距離ではないことは、もう子ども自身も気づいているでしょう。さらに、今の現実にあった工夫をすることが相手への思いやりとなり、そして、自分への思いやりにも繋がることを伝えていきましょう。大人でも難しいことを子どもに勘違いさせずに、いじめにつながらないように、どう伝えるかがこれからの課題ですね。

時間軸

どのくらい先を見通すことができるかによって、不安になる原因も違ってくるでしょう。
ここには時間的展望、つまり先を見通す力が関係します。小学校低学年なら、せいぜい1週間先、小学校高学年になれば数か月から1年くらい、中学生・高校生になれば大学受験まで、と、成長につれて先まで見通すことができるようになります。
ですから、親としては、自分の子どもがどのくらい先のことを考えて不安に思っているのかを思いやって、子どもの不安に寄り添い、誠実に耳を傾けて聴いてあげましょう。小1の子どもになら「大丈夫、大丈夫」と言ってOKでも、中学生の話をよく聴きもしないで、気休めに「大丈夫、大丈夫」なんて言うのはNGです。「その場しのぎなこと言うのはやめてよ!」と言われてしまうかもしれません。
イライラや不安の原因を、こうした切り口で見てみることで、今後の解決の糸口も見えてくるかもしれませんね。

プロフィール

渡辺弥生

渡辺弥生

法政大学文学部教授。専門は、発達心理学・発達臨床心理学・学校心理学等。研究活動に加えて、子どもの感情や社会性の発達などについて講演会の講師も務める。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?』(光文社)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)。など。

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