コロナ禍の影響で深刻なストレスを抱える子どもたち 家庭でできるケアとは?【2022年春、知っておきたいこと】

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長引くコロナ禍は、私たちの生活に大きな影響を与えています。現代を生きる子どもの保護者である私たちは、今何を知っておけばよいのでしょうか。編集部より、2022年春に知っておきたいことをお伝えしていきます。

【2022年春、知っておきたいこと】特集
1)感染が身近な今、子どもの心のケアに必要な2つのポイント
2)【オンライン授業】「やる気」「学習効果」を左右する保護者のかかわり方
3)イライラが続いていませんか。怒りを生まない工夫と対処法
4)ニガテを作らないために今からどうする?
5)休校などで勉強のペースが乱れ、苦手が山積みに…今すぐやるべき対策とは
6)コロナ禍の影響で深刻なストレスを抱える子どもたち 家庭で必要なケアとは?←今回はココ
7)【小学校高学年~中学生保護者向け】「うちの子、授業についていけてない…?」と思ったら。
8)【高校生保護者向け】「うちの子、授業についていけてない…?」と思ったら。

休校、分散登校、行事の中止や変更、外出自粛など、コロナ禍によって子どもたちはさまざまな制限を強いられ、ストレスを抱えやすくなっています。まだ終わりが見えそうにない状況の中、保護者は子どもに対し、どんな対応を心がけるとよいのでしょうか。養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラーとして多くの子どもと接してきた相樂直子先生に伺いました。

この記事のポイント

ちょっとした変化も、子どもにとっては大きなストレス

「給食が黙食になってから、きゅうりをかむ音が教室に響くのが恥ずかしい」
「マスクがちょっとずれただけで先生が怒るから怖い」
コロナ禍によって一変した学校生活。大人の視点からはほほえましい光景のようにも見えてしまいますが、子どもの心理的負担は決して小さくありません。コロナ以前と比べて、子どもがストレスをためる場面は、明らかに増えたといえます。

コロナ禍の生活も長くなり、じわじわとたまってきたストレスが今になって表出する子どももいます。
学校では、「登校しぶりがある子どもが、コロナが怖くて余計に家から出られなくなった」「発達障害で環境変化に適応しづらい子どもが、オンライン授業になじめない」など、以前から不安を抱えていたり、もともと敏感な気質を持っていたりする子どもが、コロナ下のストレスを引き金に日常生活に支障をきたす事例が増えています。

「いつもと違う様子」を見つけるのが保護者の役目

ストレスには、身体・心・行動の反応があり、子どもの場合、身体の反応としてよく表れます。
たとえば日頃から頭痛がしやすい子どもは頭痛の強さや回数が増したり、おなかが痛くなりやすい子どもは下痢が続いたりと、個々の体質に応じて反応が表れる特徴があります。

身体的な訴えがなくても、食欲がない、寝る時間が遅い、口数が少ないなど普段の様子と異なる部分があれば、背景にストレスが隠れている可能性があります。
こうした微妙な変化は、保護者だからこそ気付けるもの。自分のストレス反応に気付き、言葉で表現できる子どもは少ないので、保護者は子どもが何かサインを出していないか、日頃から感度を高くして観察してください。

身体症状がある場合は、小児科・内科などのかかりつけの病院を受診しましょう。ストレスが原因だと思われる場合でも、まずは身体面のチェックをしてもらうためです。
かかりつけの病院は、身体面の問題がないとわかったら、適切なメンタルクリニックなどを紹介してくれることもあります。また近年は子どもを対象にしたメンタルクリニックが増えているので、地域の情報を調べてみてください。かかりつけの病院がない、受診先がわからない場合などは、学校の養護教諭などに相談してもよいでしょう。

中高生になると、ネット依存やゲーム障害、暴力、自傷などの事例も目立ってきます。
家庭の話し合いで対応できるレベルを超えているようであれば、学校、お住まいの自治体の子ども家庭支援センター、精神保健福祉センターなどに相談しましょう(自治体によって名称が異なります)。そのほか児童精神科医がいるメンタルクリニックや、ネット依存やゲーム障害の治療を行なっている医療機関もあり、多くは保護者からの相談も受け付けています。

ストレスの増大を防ぐ、家庭での受け答えとは

こんなとき何て言う?
休校や行事の中止に悲しんだり怒ったりしているとき
→「寂しいよね」「悔しいよね」

「学校に行って友達に会いたい……」「修学旅行が中止になってむかつく!」といった子どもの声は保護者としても悲痛です。ただ、ストレスを隠さず外部に発信できている、家庭がこうした声を上げられる場になっているという点は、むしろ安心材料だといえるでしょう。

ここでは「友達に会えないのは寂しいね」「楽しみにしていたのに悔しいね」など、子どもの声の裏側にある思いや気持ちを言葉にして返すことが大切です。もちろんそれで子どものストレスがなくなるわけではありませんが、気持ちを共有してくれる人がそばにいるというのは大きな救いになります。
逆に、「みんな同じだから我慢しなさい」「大人はもっと大変よ」などと子どもの思いを封じてしまうと、家庭でSOSを発信しづらくなってしまいます。

こんなとき何て言う?
友達付き合いと感染対策のバランスに悩んでいるとき
→「友達でも、断っていいんだよ」

学年が上がるにつれて、仲間と飲食をともにしたり、街中に出かけたりと、交友手段の幅が広がります。感染が怖いのに付き合いで同行し、帰宅してから不安を抱える子どもは少なくないでしょう。
そんなときは、友達とはいえすべての誘いに応じる必要はなく、やりたくないこと、よくないと思うことについては断ってよいと保護者から伝えてください。「断ったら相手が嫌な思いをする」「嫌われてしまう」といった心配や不安を訴えた場合は、伝え方を一緒に考えてもよいでしょう。自分の意思を表明する姿勢は、コロナ下に限らず、気持ちのよい人間関係を築くうえでの基本となります。

こんなとき何て言う?
きょうだいが受験生で外出を控えさせたいとき
→「次はあなたのこともサポートするからね」

受験生の子どもがいる家庭では、感染リスクを下げるためにやむを得ず、きょうだいに外出を自粛させるなど、さまざまな制限を強いることがあると思います。自宅にいるしかないのに保護者は受験生にかかりきりですから、「お兄ちゃんが一番大事なのか」といった不満は、自然な反応といえます。
きょうだいの不満に思う気持ちを受け入れつつ、受験生の状況を丁寧に説明し、家族全体でサポートする雰囲気づくりが必要です。「お兄ちゃんはいま人生の中でとても大事な時期なので、みんなで協力しよう。あなたが大事な時期になったら、そのときはまたみんなで応援するから」と、愛情を込めて話しましょう。

こんなとき何て言う?
学校で陽性者や濃厚接触者が出たとき
→「不安だからといって、差別や偏見はダメ」

近くの席の人がしばらく休んだのちに登校したとき、怖いからと相手を遠ざけるような態度を取ってしまう。これは、やってはいけないことです。感染に対する過剰な反応が、相手への差別や偏見につながることを押さえておかねばなりません。
コロナから自分を守るためには、これまで行ってきた基本的な感染対策をしっかり続けることが第一。差別や偏見は生きていくうえで絶対にあってはいけません。これらを保護者がはっきり示しましょう。

まとめ & 実践 TIPS

●子どもの「いつもと違う様子」はストレスのサインかもしれません。変化に気付けるように常にアンテナを張り、身体的な症状があれば小児科などのかかりつけ医を受診させましょう。
●子どもに過度なストレスがかかっているとき、子どもからストレスを訴える言葉があったとき、保護者の受け答えが、そのストレスを和らげる力になります。保護者としても大変な時期ではありますが、突き放さず、受容と共感の姿勢を示しましょう。

取材・文 / 児山雄介(オンソノ)

プロフィール


相樂直子(さがら なおこ)

宮城大学看護学群准教授。博士(カウンセリング科学)。
学校心理学が専門で、子どもたちのメンタルヘルス、学校における多職種連携などについて研究している。
大学での養護教諭養成教育のほか、小・中学校のスクールカウンセラー、巡回相談心理士としても活動している。
著書に『先生に知ってほしい家庭のサイン』(少年写真新聞社)『教師・保育者のためのカウンセリングの理論と方法 : 先生をめざすあなたへ』(北樹出版)など。

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