我が子が敏感気質を持ったHSCだったら。気質を活かした育て方とは?

HSP(Highly Sensitive Person)というのは、1996年にアメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が発表した概念で、生まれつきとても敏感な感覚や感受性を持った人たちのことをいいます。HSC(Highly Sensitive Child)は、その子ども版です。

共感性の高さもまた特徴であるというHSC。そんな持ち味を活かしながら育てる方法について、児童精神科医の長沼睦雄先生に教えてもらいました。

自分の主観的な状態を受け入れてもらえることでHSCの子は認められた気持ちになる

敏感な気質を持った子どもを育てていると、「どうして他のおうちの子はできるのにうちの子はできないんだろう」「敏感といっても、これは甘えなんじゃないか」と不安になることがあるかと思います。

敏感な気質を持った子どもは、刺激を受けることに関しては鋭い感覚を持つ一方で、それを表現することに難しさを持っていることがあります。そのため、調子が悪そうにしているときに「どうしたの?」と聞いてもうまく答えられないことが多いのです。ですから、そんなときには、保護者のかたが「お腹が痛いの?」「疲れたのかな?」「ムカムカするのかな?」など、体調や気持ちを代弁するような声をかけてあげるようにします。
そうして自分の主観的な状態をごまかさずに出せて、受け止めてもらえることがお子さまの自己肯定感になり、「自分はダメな人間じゃないんだ」と思えることに繋がります。

また、敏感さゆえに集団生活では困難なことが多く、「学校に行きたくない」と訴えることもあるかもしれません。そういった局面になったら、保護者のかたは、「今は無理をしなくてもいい」と受け止める勇気を持ってほしいと思います。一度行かなくなったら二度と行けなくなるのではないかと心配する気持ちもわかりますが、無理をしすぎて心が折れてしまうよりも、早めに休んで元気になるのを待つという選択肢を持ってほしいのです。

そして、本人が「行きたくない」と言われなくても既に体に不調が現れている場合もあります。体は何よりも正直です。頭痛やめまい、腹痛や吐き気などの自律神経失調症状がある場合は、もう限界がきている証拠ですので、体調の回復を優先してください。

HSCは脳の性質上、勉強が苦手になりやすいので、学校内外のリソース(資源)を持つことも大事

HSCの子どもは、同調性や被影響性が強く生きづらい一方で、良いところもあります。たとえば、共感性が高いがゆえに人の気持ちがよくわかる優しい子であったり、感受性が豊かで芸術面で優れた感性を持っていたりする子もたくさんいます。周りの大人はこうしたよい面に注目してサポートしてあげられるといいですね。

HSCの子どもは、勉強や運動が苦手な場合が多く、それゆえ自分に自信が持てない子がたくさんいます。しかし現在は、文字や数字の勉強が得意でなくても個性を尊重してよい面を伸ばしてくれる習い事や学校など、活躍できる場がたくさんあります。ですから、保護者や先生がたは、学校内外のリソースを設けることも考えてみてはいかがでしょうか。
これは将来の職業に関しても同様で、創作系、芸術系などのクリエイティブな面で才能が開花することもあれば、教育系や心理系、医療や福祉系の仕事に就くこともあるでしょう。

HSCのお子さまを持つ保護者のかたは、お子さまの敏感さに対して「気のせいでしょう」「気にしすぎだよ」などと否定することなく、心に秘めた主観的な思いを受け入れてあげてください。子どもを優先することによって学校や社会と対立してしまう場面もあるかもしれませんが、まずは保護者のかたがその子が自己肯定感を持つことができる環境を整える手助けをしてあげられるといいですね。

プロフィール

長沼睦雄

十勝むつみのクリニック院長。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻。北大大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。道立札幌療育センターにて14年間小児精神科医として勤務。2008年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行ったのち、2016年に帯広に十勝むつみのクリニックを開院。HSC/HSP、発達障害、発達性トラウマ、愛着障害などの診断治療に専念し、脳と心と体と魂を統合的に診る医療を目指している。近著に『敏感すぎる自分に困っています』(宝島社)や、『子どもの敏感さに困ったら読む本』(誠文堂新光社)などがある。

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