家庭内の会話から子どもの思考力、表現力を育む[やる気を引き出すコーチング]
「最近、ご家庭でお子さんとどんな会話をされたでしょうか。少しだけ時間をとって、思い出してみていただけませんか」コーチング講座の中で、そんな問いかけをすると、びっくりするくらい何も思い出せないという方も多いものです。
返ってくるお答えの代表的なものをご紹介すると、だいたいこのような状況です。
■ただの確認で終わってしまいがちな親子の会話
小学校2年生のお子さんを持つAさん宅の会話:
「宿題は?終わった?」
「まだ!」
「ごはんの前にはやってしまいなさいね」
「わかってる」
中学1年生のお子さんを持つBさん宅の会話:
「家庭訪問っていつだっけ?」
「来週の火曜日」
「準備しておいた方がいいことって、先生、何か言ってなかった?」
「さあ、別に」
高校生2年生のお子さんを持つCさん宅の会話:
「明日の予定は?」
「部活ある」
「え?そうなの?じゃあ、お弁当いる?」
「うん」
「それ、早く言っといてよ」
このように、基本的にこちらが知りたいことの確認とそれに対する返答で終わっていることが多いようです。もちろん、確認も大切なコミュニケーションですが、子どもが自分の考えを深め、表現する力を伸ばすという点ではいかがでしょうか。
■子どもの気持ち、考えをたずねる質問をする
これに対して、今年、高校に入学したお子さんを持つDさん宅の会話は非常に印象的です。
「今日は何の授業があったの?」
「いろいろあったよ!数学とか英語とか体育も」
「高校の授業って中学校と何か違いを感じる?」
「やっぱり違うよね」
「へぇ、特にどういうところが違うって思うの?」
「なんか急に難しくなったって感じかな。小テストとかも多そうだし・・・」
「そうなんだ。他にはどんなふうに感じた?」
「うーん、覚えることもたくさんあるし、英語とかちゃんと予習していかないと、けっこうあてられるし、・・・あと、入学したばっかりなのに、みんなもう進路のこととかちゃんと考えていて偉いんだよね。自分もまじめに考えないとね」
こんな話を日常的にしているそうです。Dさんがしている質問は、そのほとんどが、お子さんの考えや感じたことをたずねる質問です。これらの問いによって、お子さんは自ずと自分の考えを自分の内側に探しにいくようになります。
■最初は、答えやすい質問からゆっくりと!
もちろん、考えないと答えられない質問ですから、いきなり質問されても、考えることに慣れていない子どもは、考えることも答えることも最初は放棄してしまうかもしれません。「え?別に。わかんない」といった答えしか返ってこない場合もあるでしょう。
それでも、まずは、答えやすい質問(「今日は何の授業があったの?」などの事実をたずねる質問)から投げかける工夫をしながら聞いていきます。矢継ぎ早に質問をすると、うっとうしいと感じる子どももいます。「すぐに答えが返ってこなくてもいいや」というぐらいの気持ちで、ゆっくり問いかけ、ゆっくり答えを待ってみます。
こうした繰り返しの中で、自然と「自分で考え、自分の言葉で話す」という習慣がついていきます。この習慣がある子どもとない子どもでは、格段に思考力、表現力が違ってきます。別に難しい質問でなくてもいいのです。
「今日、どんなことがあった?」、「どんなことをした?」、「それについてどう思った?」、「どうすればいいと思った?」など、日々の出来事についてたずねても良いですし、テレビやインターネットを見ながら「これってあなたはどう思う?」と時事ネタについて考えを聞いてみるのも良いと思います。
どんな答えでも否定せず受けとめていくことで、しだいに自分の考えを自分の言葉で話せるようになっていきます。日常会話の中の「質問」を一工夫してみられてはいかがでしょうか。