ドイツ式なら心もスッキリ! 家族で取り組む年末の大掃除のコツ

年の瀬も押し迫り、大掃除のシーズンがやってきました。家族全員がそろう時間が増えるこの時期、心地良い暮らしを手に入れるために、どのようなことをやっておくとよいのでしょうか? 整理整頓の習慣を大切にするドイツのライフスタイルに詳しい料理研究家の門倉多仁亜さんに、ドイツ式の片づけのアイデアを伺いました。

大掃除は理想の暮らしを家族で話し合うチャンス

ドイツでは日本のように年末の大掃除をすることはありませんが、家を整った状態でキープするために、日々の掃除や片づけの習慣を大切にしています。その習慣はおうちのかたから子へと受け継がれ、ドイツの子どもたちは小さな頃から「自分たちの住まいは自分たちの手で整えていくもの」だと教わりながら育ちます。

子どもに対しても、何かに取り組む前に「あなたはどうしたいの?」と意見を尋ねるのが、ドイツの家庭でのコミュニケーションの特色です。大掃除も「ここを片づけなさい」とおうちのかたが一方的に指示を出すのではなく、まずは「みんながもっと住みやすい家にするにはどうすればよいのか」を、家族全員で話し合うことから始めてみてはどうでしょうか。子どもにも意見を聞いてみることで、「自分も家族の一員なんだ」という自覚が芽生え、家のことについて主体的に考えられるようになるはずです。

自由に意見を出し合ったら、改善したいポイントをいくつか絞り込みます。そして、「この日は台所の整理を」「この日は子ども部屋を中心に」というように、大まかなプランを立てましょう。家中全てをピカピカにしなければと考えると大変なので、「今、自分たち家族にとって必要なことだけをやろう」とシンプルに考えることが大切です。

インテリアショップに行き、「理想の部屋」をイメージ

どんな暮らしをしたいのか、具体的なイメージを思い描くと、そのために必要な片づけや掃除へのモチベーションも高まります。日本の人々はまじめなので、「片づけなければならないから片づける」という発想になりがちですが、ドイツの人々は「こういう部屋にしたいから、このスペースで収納できるようにモノを整理しよう」というように、目的をはっきりさせてから行動に移すのが一般的です。

最近は子ども部屋の収納などについて、使用例を展示しながら具体的な提案をしているインテリアショップも増えているので、家族全員で見に行ってみるのもいいでしょう。「こんな部屋にしたい」といったイメージが膨らむと、大掃除にも前向きな気持ちで取り組めるはず。カラフルなボックス類も数多くありますから、家族一人ひとりが自分のテーマカラーを選んで、「自分のものはそのカラーのボックスにしまう」「保管しておくプリントや郵便物などはそのカラーのファイルに入れる」というきまりにしてみてもいいですね。

「処分ボックス」を作り、モノが出ていくルートをつくる

「まだ使えるけれど、今の暮らしには必要ない」というものは、処分ボックスを作っていったんその中にまとめておきましょう。そして、洋服のお下がりであれば「近所の○○さんにあげる」「学校や地域のバザーに出す」というように、それぞれのものの行き先を決めていきます。ものを増やさないためには、わが家なりの処分ルートを決めることが大切なので、家族でアイデアを出し合いましょう。

本や衣類などは買い取りを行っている業者も多くありますし、リサイクルショップの中には、日本では不用品となってしまうものを途上国などに届けたり、売り上げを寄付したりといった支援活動に取り組んでいるところもあります。ただ捨てるのではなく、それを本当に必要としている人のために役立てる。そう考えれば、「もったいない」という罪悪感をもたずに不要なものを処分できるはずです。

◆処分ボックス


門倉さんの家の処分ボックス。いただいたけれど使わないもの、買ってから数か月たっても使わなかったものなどは全てこの中へ。箱がいっぱいになったら、まとめてリサイクルショップに送る。

作品やおもちゃなどは「今、必要なの?」と子どもに確認

工作や絵などの作品は残しておきがちですが、収納場所に合わせて保管するものを減らしていく必要があります。ご家庭で話ができる時間が増える冬休みのうちに、「実物を残しておきたいのか」「写真に撮るなどすれば処分してもよいのか」を子どもに聞いてみて、手元に残しておく必要がないものは処分しましょう。

シールなどのコレクションやおもちゃなども、成長と共に好みが変わるので、「これは今の生活に本当に必要なの?」ということを子どもと一緒に考えてみてください。コレクションは「この箱に入る量にしてね」というように、置き場所やしまう場所を決めて、そこに収まる量に整理するように声をかけてみるとよいでしょう。

物が整理できると、心も自然と整うもの。普段は仕事や学校などで忙しく、家族そろって暮らしのことを話し合う時間がとりにくい日本の人々にとって、大掃除は「今の自分たちに本当に必要なもの」を見つめ直すチャンスなのかもしれませんね。

プロフィール


門倉多仁亜

料理研究家。ドイツ人の母、日本人の父をもち、ドイツ、日本、アメリカで育つ。国際基督教大学卒業後、外資系証券会社を経て、夫の留学に伴ってロンドンの「ル・コルドン・ブルー」で料理を学ぶ。現在は料理教室の講師を務めるほか、ドイツのライフスタイルを紹介する仕事も数多く手がける。著書に『タニアのドイツ式整理術・完全版 モノ・情報・時間の持ち方・しまい方・考え方』(集英社)など。

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