子どもの歯列矯正の方法とベストなタイミングって?

大人の歯列矯正は「歯を動かす」治療ですが、子どもの矯正は、14歳くらいまでの、あごの骨が成長している間に行います。あごの骨がまだ成長し続けている子どもの時期に治療をすると、ある程度あごの状態をコントロールしながら歯列矯正を行うことができます。また、子どものうちに歯列矯正をしておくと、大人になってからさらによい治療を行える場合があります。

子どもの歯の矯正、治療期間や開始時期は?

治療期間は大人に比べて長くなる傾向にあります。子どものあごの骨の成長が終わる15歳前後までは経過を観察する必要があるからです。18歳からは大人の歯列矯正と同様です。

子どもの歯列矯正は、2期に分けられます。開始に適した時期は、歯並びの具合にもよりますが、あご自体を矯正する骨格矯正(1期矯正)は3歳~12歳くらいまでの間に行うとよい結果を得られやすくなります。それがすんだ子どもや、骨格矯正を必要ない子どもの歯列矯正は、10歳くらいから開始します(2期治療)。

しかし矯正開始時期については、歯科医師によって考え方はさまざまです。歯が生え始める3歳頃は、歯列矯正を始めること自体は可能ですし、矯正が必要になる可能性がまったくないわけでもありません。しかしあまり小さい頃から矯正を開始すると、将来再矯正が必要になる場合もありますし、軽度の場合には経過観察をし、あごの成長が終わってから短期で矯正治療を行うほうが患者負担が結局少ない、という場合もあります。子ども本人の意思も、確認することはまず不可能です。

いずれにしろ、子どもの歯列矯正が必要かもしれない、と感じたら、まずは歯列矯正専門の歯科医師とカウンセリングを行って、納得してから始めるようにしてください。

歯列矯正に使用する装置・器具

骨格矯正(1期矯正)の場合は、上下のあごのバランスを改善する装置を使います。口の中に入れる器具(拡大装置など)や、口の外、頭などに設置する器具(ヘッドギアなど)を使います。10歳くらいからは(2期治療)、子ども用ですが機能は大人と同様の、ワイヤー矯正やアライナー矯正(透明のマウスピースをつける)を行い、歯の位置を徐々に移動していきます。

ワイヤー矯正とアライナー矯正の違い

ワイヤー矯正の最大のデメリットは、ワイヤーが目立ってしまうことでしょう。近年は、目立たない色の器具を使用したり、歯の裏側にワイヤーを通したりするなど、見た目に配慮した器具を使用するところも増えています。ただしそのような器具は保険がきかないこともありますので、歯科医師に確認してください。

アライナー矯正は、透明なマウスピースのような装具(アライナー)を毎日長時間つけて、約2週間ごとに形が少しだけ変わったアライナーを付け替えていくことで、歯を動かしていきます。最大のメリットは、治療していることが見た目からはほぼわからないことです。デメリットは、ワイヤー矯正より少しだけ時間と費用がかかる傾向があることですが、これも歯並びの状況によって違ってきます。また保険はききません。

ワイヤー矯正は、歯列矯正専門医であればどのような歯並びでもできますが、アライナー矯正は、アライナー矯正に慣れている歯列矯正専門医でないと治療が難しい歯並びもあるようです。

歯科医師選びは慎重に

歯科医師の技術力やこれまでの経験によって、扱っている矯正器具や治療後の満足度などは変わってきますので、歯科医師は簡単に決めずによく選ぶようにしましょう。また、子どもや保護者との相性もありますので、治療前によく話を聞き、質問にいやな顔をせずにしっかり答えてくれる人が理想的です。相談は無料のところも多いので、自宅から通いやすいところでいくつか相談に出向いてみるといいでしょう。

小児矯正のメリット・デメリット

メリットは、大人では難しいあごの調整が、成長に合わせてある程度コントロールできるので、よい治療結果が得られやすくなります。また、大人では抜歯をしなければ難しい症例が少なくありませんが、とくに永久歯が生え変わる6歳前後、7歳くらいまでに治療を開始すると、歯を抜かなくてすむことが多くなるようです。さらに、子どもの頃に治療をしておくと、大人になっても歯科矯正が不要になる場合や、大人になってから再度矯正治療が必要となっても、治療期間は大人の歯科矯正よりも短く、なおかつよい治療結果が得られやすくなる傾向にあります。

デメリットは、15歳くらいまでは経過観察をする必要があるため矯正期間が長くなりがちであること、大人になってから再度矯正が必要になることもあること(とくに受け口=下顎前突)、子ども本人が治療に協力的でないとよい結果が得にくくなること、子どもの歯列矯正はとくにむし歯になりやすいこと、などです。

保険が認められる場合も

大人の歯列矯正は、外科的な治療が必要な場合を除いて自費になります。子どもの場合は、成長を阻害するような不正咬合に対しての歯列矯正であれば、保険での治療が可能です。具体的には、あごが横にずれている、下顎前突(受け口)、 極度の上顎前突 (出っ歯)、開咬(前歯がくっつかない)、歯の生えてきた位置が悪いために後から生えてくる歯に悪影響を及ぼす可能性がある場合などは、小児のうちに歯列矯正をすることがすすめられ、保険治療が認められます。ただし子どもでも自費となる場合は少なくありませんので、歯科医師によく説明してもらってください。

監修:本郷さくら矯正歯科 院長 尾島 賢治 歯科医師

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