いま、増え続けている子どもの睡眠障害 生活習慣病にかかる可能性も

子どもにとっての規則正しい睡眠は重要です。けれども、夏休みのような長期休暇をきっかけに、生活リズムが乱れてしまうことも多いようです。そこで、子どもの睡眠について、兵庫県立リハビリテーション中央病院「子どもの睡眠と発達医療センター」センター長の小西行郎先生にお伺いしました。

夜型生活が招く、子どもの睡眠不足

子どもの睡眠と発達医療センターは、日本で唯一の、子どもの睡眠障害を入院治療できる病院です。テレビなどで子どもの睡眠障害が取り上げられることが多くなるなどして、患者数はこの6年間でうなぎ登りです。特に、外来で受診する子どもの数は一昨年から去年の1年間でおよそ1.5倍に増加しました。

小学生の子どもの理想的な睡眠時間は約10~11時間といわれていますが、ベネッセ教育総合研究所が実施した「第2回放課後の生活時間調査」(2013年)では、小学5~6年生の平均睡眠時間は8時間27分。また「第5回幼児の生活アンケート」(2015年)では、1歳半から3歳の子どもで、入眠時間が22時を超える割合も20%以上と高くなっています。

こうした睡眠時間の短縮や夜更かしの傾向には、現代の「夜型の生活習慣」というのが大きく関係しています。それぞれの家庭の事情で就寝時間が遅くなるだけでなく、テレビやゲーム、インターネットなどの普及や、塾や部活で忙しく、夜遅くまで起きていなければならないことも影響しており、社会全体の問題といえるでしょう。夜型の生活習慣が続くと、慢性的に睡眠不足になり、日中眠くて活動に集中できなかったり、眠りすぎてしまうことで学校生活に支障が生じてしまったりするような「睡眠障害」になってしまうこともあるのです。

子どもにとって正しい睡眠は、健康のためだけでなく、発達や学力向上のためにも必要不可欠。ご家庭だけでなく、できれば地域や学校単位で取り組んでほしい問題といえるでしょう。

睡眠障害が引き起こす生活習慣病

睡眠障害になると、子どもでも糖尿病をはじめとした生活習慣病にかかる可能性があります。眠ることと食べることは、「生活リズム」でつながっているからです。

通常、人間の体は日中起きているうちに食べたものを栄養として貯蔵します。夜、寝ているうちにこの栄養分を分解して、朝体を動かすエネルギーを作っているのです。ところが、睡眠のリズムが崩れると、日中に食欲が湧かず、夜眠る前に空腹を感じるようになります。本来血糖値が低くなっているはずの夜に、食事をたくさん摂ることで血糖値が上がり、糖尿病の予備軍となってしまうのです。このような場合、トータルで食べている量はそれほど多くないため、肥満など見た目でわかる形で表れないのも特徴です。

子どもの睡眠障害は、ある意味では私たち大人がつくってしまった病気ともいえるかもしれません。大人の生活時間に子どもを付き合わせすぎず、規則正しい生活リズムで過ごせるよう、心がけられるとよいですね。

  • 出典:ベネッセ教育総合研究所「第2回 放課後の生活時間調査」(2013<平成25>年)
  • http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=4700

  • 出典:ベネッセ教育総合研究所「第5回 幼児の生活アンケート」(2015<平成27>年)
  • http://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=4770

プロフィール


小西行郎

兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センター長。同志社大学赤ちゃん学研究センター教授。日本赤ちゃん学会理事長。福井医科大学(現福井大学医学部)小児科助教授、オランダ留学、東京女子医科大学教授を経て現職に。小児神経専門医として障害児医療をライフワークとし、診察・発達相談・講演会活動を行う。

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