勉強しないお子さまへの叱り方(高校生版)
テレビの前でダラダラしていたり、スマホやゲームに夢中になっていたりする様子を見ると、つい「いい加減にしなさい!」と声を荒らげそうになります。特に定期テスト前などはなおさらです。大切な我が子だからこその一喝ではありますが、一方で「もう高校生なのだから、いつまでも親が叱っていては…」と迷う気持ちもあるでしょう。子どもと大人の真ん中に立つ高校生の叱り方を考えてみましょう。
基本的には、叱っても根本的な解決にはならない
多くの場合、「勉強しなさい!」と強く叱っても、高校生のお子さまには根本的な解決にはなりません。小学生や中学生であれば、「親に叱られるのが怖い」という理由で勉強に取り組むことはありますが、個人として自立を始め、なおかつ体も大きく成長した高校生になると「叱られるのが怖いから」という理由で勉強をすることは少なくなるでしょう。
もちろん「きつく叱ったら、渋々と机に向かった」というケースもあるでしょうが、それは勉強しようと思ったからではなく、きっと「親がうるさいから」です。目を離せばまた机から離れる可能性は高いですし、親を安心させるための「勉強をしているフリ」がじょうずになるだけかもしれません。
それでも叱ってしまうときはどうする?
だからといって、「叱っても無駄だ」と割り切り、見て見ぬ振りをすることができないのは親としては当然です。また、高校生になったからといって、お子さまがすぐに自立を完了するわけではもちろんなく、子どもと大人の間を行き来しながら、少しずつ成長しているお子さまに、親としての強い叱咤激励が必要な場面もあるはずです。
「勉強しなさい!」と叱っても根本的な解決にならないのはわかっているけれど、それでも叱らざるを得ないときはどうするか。高校生の保護者のかたに心にとめておいていただきたいのが、以下の4点です。
・「あれもこれも」とついでに叱らない
「いつまでテレビばかり見ているの!」と叱り始めたのはいいけれど、「だから1学期は成績が下がった」「やるといった問題集も手つかずのまま」「机の周りだっていつも散らかったまま」などと叱る内容が広がっていかないように気をつけましょう。子どものことが心配だから叱り始めたはずなのに、あれもこれもと叱り始めるとお子さまは「自分に対するイライラをぶつけているだけだ」と真意をくみ取ってくれないかもしれません。今、伝えなければいけない内容だけに絞って、叱ることが大切です。
・言うべきことを言ったら、気持ちを切り替える
叱った後は、保護者のかたから気持ちを切り替えるように配慮してあげてください。もちろん、機嫌を取るようなことをする必要はありませんが、言うべきことを言った後は、できるだけ普段通りに振る舞うように努めてください。感情が高ぶった後は簡単ではないかもしれませんが、お子さまにとっては、社会人になって勤めたり、家庭を持ったりしたとき、他人をどのように叱り、そして関係を維持していくか、その方法を学ぶ機会にもなるはずです。
・人との比較はしない。目の前の子どもだけに向き合う
叱るときに一番気をつけたいことが、よその子どもや親戚、兄弟と比較しないことです。人にはそれぞれに長所短所があるものなのに、ある一面だけを切り取って、「あの子はこんなに勉強しているのに」などとお子さまを叱ることは、お子さまの自己肯定感を損ねてしまうことにつながりかねません。「1日に○時間勉強すると、あなたは自分で決めたはず」「○時間もゲームばかりしているのはお母さんはいけないと思う」など、あくまでお子さまと保護者の関係の中だけで叱るようにしてください。
・定期テスト前であれば、その大切さを伝える
学校の定期テストは、各教科の評定(校内成績)を決めるもので、特に推薦入試では合否に大きな影響を与えるものです。また、将来、日本学生支援機構(かつての日本育英会)の奨学金を利用する場合、評定によって利用できる奨学金の種類が変わってきます。「大学入試の勉強はもっと先になってからでいい」と思っているお子さまには、今回の定期テストが将来の進路に少なからず影響を与えることを説明してあげてください。
勉強する意味、目的を語り合って
保護者のかたにしてみれば「高校生なのだから、勉強するのは当たり前」と思うかもしれませんが、高校生の中には、「何のために勉強しなければいけないのかわからない」「だから勉強のやる気が出ない」というケースが実は少なくありません。
逆に言えば、勉強する理由、目的さえ明確になれば、親が叱らなくても、自ら学習に向かうようになるわけです。「大学に合格するため」「留年しないため」というのも勉強する理由にはなりますが、もっと中長期的な、自分の人生をデザインするような視点で、勉強する理由を見つけるように、お子さまをサポートしたいものです。
「○○の職業に就いて活躍したい」「大学で○○の研究に取り組みたい」などといった目標を見つけるためには、お子さま自身の世の中に対する興味・関心のアンテナが大きく広がっていることが必要です。
お子さまと顔を合わせる機会の多い夏休み中、テレビのニュースや新聞記事などを話題に、お子さまの視野を広げるような会話を意識してみてはどうでしょうか。