家庭でできるキャリア教育 ポイントは「保護者が先回りしないこと」
最近よく耳にする、子どものキャリア教育。学校に任せるだけでなく、家庭でできることがあれば知っておきたい、と考える保護者もいるだろう。「子育ての中にこそキャリア教育がある」と提唱する、法政大学キャリアデザイン学部教授の宮城まり子氏に話を伺った。
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キャリア教育とは、その子が「どのようなことを大切にして生きたいのか」を子ども自身に考えさせ、そのための行動や勉強につなげていく力を養うことです。その力は家庭の生活習慣の中で、子どもの時からつちかうことができます。
たとえば、計画力や主体性、実行力などの力は、朝、自分の力で起床し、授業の準備をして、朝食を食べ、遅れずに登校することで養われます。現状を把握して目的を明確にする課題意識を育てるには、お風呂そうじのような家事を、責任を持ってやってもらうとよいでしょう。
うまくいかないことを乗り越える心の強さも、キャリア教育として家庭を中心に育てたいものです。そのために保護者のかたができることは、子どもが考える意欲(シンキング)や行動する力(アクション)を邪魔しないこと。「◯◯ってなに?」とたずねられても、すぐ答えを言わず、「図書館で調べてごらん」などヒントを与えるだけにするなど、シンキングとアクションを育むには、保護者のちょっとしたガマンが大切です。なんでも先回りして与えてしまうと、子どもは待つのが当たり前になり、問題を解決する力や、困難を乗り越える力はつきません。
保護者が敷いたレールの上でキャリアやアイデンティティーを形成した子どもは、うまくいかなかった場合、深い挫折感を味わう可能性があります。保護者が望む業種に不採用になったり、就職できたとしても力が発揮できなかったりすると、すぐに自分の方向性を見失ってしまいます。一方、自らの意志でキャリアを形成し、選択した子どもは、同じことが起きても「自分で選んだのだから」と、自力で立ち直ることができるのです。
出典:家庭だからできるキャリア教育【後編】社会で求められる力とは -ベネッセ教育情報サイト