【数学】2024年大学入学共通テストの分析と対策-今年の特徴から考える共通テストの傾向-

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2024年1月13、14日に4年目となる「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)が実施されました。
ここでは、今回の数学全体についての特徴を紹介します。
そこから考えられる共通テストの大きな傾向、そして対策を考えていきましょう。

この記事のポイント

グラフや数学的な選択肢の割合が増加

共通テストは全問マークシート形式で、数学は求めた答えに応じた符号や数字をマークシートから選ぶ形式のほかに、選択肢から解答を選ぶ形式の出題があります。

昨年に比べ、今年は選択肢形式の問題数は同程度でしたが、グラフや数学的な意味を問う選択肢の割合が増加しました。
数式の一部や数学記号を選ぶ選択肢は、求めた答えにあてはまるものを選べばよいだけですが、グラフについてはその特徴や違いを、文字の多い数式や論理的な文章を選ぶときには数学的な意味を理解するのに時間がかかってしまいます。

特に数学Ⅱ・数学Bでこのような選択肢が増えた理由としては、単に計算ができるだけでなく、数学の本質的な理解と論理的な思考ができているかを重視するようになったからではないかと考えられます。

このような形式の問題に対応するためには、「この式はこういう意味がある」「この問題では〇〇を求めている」などの形で、数学的な状況を言葉で言い表す練習をすることが効果的です。
これは数学の学習を進めるうえで非常に大切であり、理解を深めるのに有効ですので、普段の勉強から意識してみましょう。
また、選択肢を読む前にある程度答えを予想しておくことも対策の1つです。

解が存在するかを問う、証明の方法や方針を答える、前問が正解でないと正解にならないなど、マーク形式でも数学的な表現力を評価する工夫がちりばめられた出題でした。

  • ■グラフ、文章を選ぶ選択肢形式の問題の割合が増加
  • ■証明問題や考察の過程など、論理的な解法の流れを正しく理解する力が求められる

現実の事象を数学的な観点で考察する問題が引き続き出題

今年の数学Ⅰ・数学Aでは、電柱の高さをその影の長さと太陽高度を利用して求める「図形と計量」の問題が出ました。
また、数学Ⅱ・数学Bの「確率分布と統計的な推測」では、日曜日の天気が晴れかどうかについて考察する問題でした。

内容だけ聞くと題材に関する特別な知識や難しい計算をこなす力が求められているように思われるかもしれません。
現実を数学化(モデル化)するにはどうしてもその定義で文章が長くなってしまいます。
しかし、数学化することは逆に、実際に考えやすい状態、つまり単純化していることになるので、問われている部分、与えられた図やグラフを先に確認してみると、類似した問題のイメージがわいてくることがあります。

求められる力は与えられた設定から必要な数値・情報を探し出し、解答する力であり、数学と言葉の言い換えができるかがカギになります。

このような現実の事象を数学的に考える問題は、共通テストで出題されることが多く、今後も同じ傾向が続くと予想されます。

なかなか普段の学習の中では練習しにくい部分かと思いますので、模擬試験や共通テスト対策の教材を使用して、同様の形式の問題で対策をするのが効果的です。
また、現実の事象の問題は具体的な数値のため、単純な四則演算でも小数や桁数が多いことで時間を取られることもあるので、普段から問題を解く際には立式だけで済まさず、最後まで計算することの積み重ねも大切です。

  • ■坂道にかかった電柱の影の長さなど、現実の事象が数学化された問題が出題
  • ■現実の事象を扱う問題では必要な数値・情報を探し出し、解答する力が求められる

長文や対話形式から情報を読み取り解答する形式の問題が引き続き出題

先述の現実の事象をテーマとした問題と並んで、共通テストならではの傾向として、長い問題文や登場人物同士の会話文が含まれる問題が挙げられます。

共通テストでは1つのテーマを深掘りしていく形式の問題も多く、その深掘りの方法が長文で説明されていたり、会話文で提示されていたりすることがあります。

今年の問題においても、数学Ⅰ・数学Aの第3問「場合の数と確率」では、問われている状況設定の説明を正しく把握する必要があり、2枚のとき、3枚のとき、4枚のときと小問ごとに状況を発展していく流れでした。

また、小問内でも前問を整理して考え方を拡張していく出題で、途中に挟まれる会話文が解法のヒントになっています。数学Ⅱ・数学Bの第5問「ベクトル」では登場人物2人が1つの問題に対して別々の解法を示して、どちらかの解法を選んで答えを求める形式がありました。どちらを選んでも当然同じ答えは出てきますが、試験時間は限られていますので、計算が比較的簡単なほうを選ぶ判断力も必要になります。
対話をもとに与えられた解法にそって考えていくことや、1つの解法のみにしばられない考え方を持てているかなど、普段から主体的な学びができているかが問われています。

この形式の問題は今後も出題が続くと予想されますので、現実の事象をテーマとした問題とあわせて、似た形式の問題で演習をすることや、普段の学習の姿勢から意識することが効果的です。

  • ■長い問題文や会話文での出題に特徴
  • ■長文・会話文から必要な数値・情報、考え方を読み取り、解答する力が求められる

まとめ & 実践 TIPS

今年の数学の共通テストの特徴をまとめると、以下の3つが代表的なものといえます。

  • ①グラフや数学的な選択肢の割合が増加
  • ②現実の事象を数学的な観点で考察する問題が引き続き出題
  • ③長文や会話形式から情報を読み取り解答する形式の問題が引き続き出題

現実の事象や対話形式の出題は、共通テストらしい問題としてよく取り上げられますが、数学ですので、論理的な部分も当然問われます。そういった点でいうと、今回は数学らしい問題の割合が増えた印象です。

共通テストはマーク式の試験ですが、普段の記述問題の解答をきちんと書く意識を疎かにしてはいけません。

来年度は新課程になることで、科目や時間、一部の分野の学習内容の変更はありますが、引き続きこの出題傾向は続くと思います。

形式に慣れることも大切ですが、まずは教科書の定義、基本的な定理公式の扱い方から始めてみましょう。

株式会社プランディット 編集事業部 理数課 阿部
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、数学の教材編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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