9月からの受験生活 「進学先希望」の作り方[高校受験]
■「進学先希望」の作り方
今回は、進学先を明確にすることについてお話しします。
受験が成功するかどうかは、本人の「その学校に入りたいという気持ちがどれだけ強いか」ということにかかっています。自分が本当にその学校に行きたくなれば、勉強に対する姿勢が変わってくるものです。
まだあまり学校を具体的に考えていなかったり、比較ポイントが明確になっていなかったりすると、学校見学でいちばんに目に付くのは学校の施設などのすばらしさや雰囲気のよさでしょう。けれども、学校見学に行った時にしか見ることができず、その時にこそ、ぜひ見ていただきたいポイントは、生徒と先生の様子なのです。
私も最初は外からすぐわかる設備や施設など、学校の入れ物から学校を見ていました。が、何十校と学校を見ているうちに、その学校に通っている生徒を見るようになりました。生徒が明るく元気にしているか、いきいきしているかに注目するようになりました。というのは、学校によってはブランドイメージを維持することを大切にして、生徒を管理しているために、生徒が萎縮している学校もあるからです。また、大学合格実績を上げることを最大目標にして、ひたすら勉強させているために、生徒が元気のない学校もあります。もちろん、生徒が元気でも、服装や髪形が乱れている学校もたくさんあるので、単に元気でいればいいというわけではありませんが……。
そして、先生の存在価値は教科内容を教えることだけではありません。多感な高校時代、これから大人になっていくという過程で、どのような人生観、価値観、教養、刺激……に接するかはとても大切なことです。そしてそれらは何より先生から受ける部分が大きいのです。
また学校は、3年間を過ごす場というだけではありません。卒業後も何かと縁があるものです。
それは主として先生とのつながりで生まれます。夏休み中には私学の校長先生が何人もわたしの経営している安田教育研究所を訪ねていらっしゃいますが、先日その中のお一人の女性の校長先生が、「今、サントリー美術館で開催されている『谷文晁展』は私の教え子が企画したものなのです。寄って帰ります※」と、研究所を出たあと、東京ミッドタウンに向かわれました。私学の先生がたとお付き合いしていると、よくこうした先生と生徒の卒業後の交流に出くわします。
※谷文晁展……東京都のサントリー美術館(港区の東京ミッドタウン内にある美術館)で2013年7月3日(水)~8月25日(日)まで行われていた特別展。谷文晁は江戸時代後期の絵師。
ですから、多くの先生に好感が持てそうか、持てそうにないかということもよく観察してください。先生がいきいきと楽しそうに仕事をしている学校は、生徒もいきいきとしているものです。
リビングのテーブルで、「高校受験案内」や学校のパンフレットなどを材料にあれこれと言いながら学校を探すのではなく、お子さまに実際に学校に足を運ぶようすすめてください。自分の実感としていい学校だと思える学校に出合うことが、「進学先希望」を明確にするうえでいちばんいい方法なのです。