大学合格実績で検討する 男子校・女子校と共学校[中学受験]

志望校選定で、まず考えるのは、男子校・女子校・共学校の違いだと思うが、男子校・女子校・共学校で大学受験に有利・不利はあるのだろうか。従来、中学受験では、男子校(または女子校)と共学校を併願するケースは少なかった。しかし、大手の塾の先生によると、中身がよい学校ならあまりこだわりなく、男子校(または女子校)と共学校を併願するケースも増えてきているそうだ。同程度の中学入試偏差値でも、共学校は男子校に比べ、卒業時の大学合格実績は低いという印象はあるが、本当にそうなのか、また、女子校は共学校よりも卒業時の大学合格実績は高いのか低いのか、その差はどの程度なのかを調べてみようと思う。調査の仕方としては、首都圏の中高一貫校を男子校・女子校・共学校に分けて、入学時の中学入試偏差値と6年後の大学合格実績の関係から式を求め、矛盾の無いように修正して、標準値を下のグラフのように作成した。


グラフは男子校・女子校・共学校における、標準的な学校の中学入試偏差値と6年後の早慶上智合格実績の関係を示している。このグラフが特徴的なのは、偏差値62.5周辺での、男子校・女子校と共学校の合格者数がほぼ57名で一致している点だ。しかし、これは偶然の一致だと思える。興味深いのは、偏差値62.5までは同じ偏差値では最も多く合格者を出していた男子校が、偏差値62.5を越えた学校では最も少なくなっている。男子校とまったく逆なのが共学校で、女子校の順位は変わらない。たとえば偏差値62.5より低い、偏差値55の学校では、早・慶・上智大合格実績が男子校28名、女子校20名、共学校17名なのに対し、偏差値62.5より高い偏差値65の学校では、早・慶・上智大合格実績が男子校73名、女子校80名、共学校88名となり、順位が逆転している。偏差値62.5を越えた男子校が女子校や共学校よりも早・慶・上智大の合格実績が伸びないのは、東大・京大・一橋・東工大や国公立大医学部などの難関大学にシフトしていることが考えられる。他の例として、偏差値55を越える学校では、GMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政大)が比較的少なくなり、早・慶・上智大の合格実績が多い学校が増えてくる。


男子校と共学校を比較すると、偏差値62.5を越える学校の早慶上智合格各実績以外はどの偏差値の学校でも男子校のほうが合格実績は高い。しかも、偏差値が高い学校であればくあるほどその差は大きい。女子校と共学校を比較すると、(グラフでは紹介していないが)東大・京大・一橋・東工大では共学校の優位性は見られたが、早・慶・上智大とGMARCH(こちらもグラフでは紹介していない)では、ほぼ同じ合格実績がみられた。共学校が男子と女子を分けて合格実績を発表することはないのでわからないが、女子の受験生にとって共学校のほうが女子校よりも大学受験での優位性があるとはいえないだろう。



中学入試偏差値と6年後の大学合格実績の関係 早・慶・上智大

注:上記は卒業生100人あたりの合格者数ですが、(早慶上智やGMARCHでは)
1人が複数校に合格することもあるため、100人を超えることもあります。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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