家庭と学校の教育方針による志望校選定 [中学受験]

教育方針は概念なので、それ自体に優劣はないと考えるべきだ。もちろん、教育方針がうまく運用できている学校かどうかで優劣が生ずることはある。また、学校の教育方針で優劣があるとすれば、我が子と我が家に合った教育方針かどうかによって、我が子にとっての優劣はあるだろう。つまり、我が子と我が家に合った教育方針であれば、子どもはイキイキと学校生活を送ることができ、学力と人間力を高めることができる可能性が高くなる。

確固とした教育方針というものがある家庭は少ないかもしれない。むしろ、夫婦それぞれで、自分の教育方針を持っていると思う。それは自分自身の経験または自分の生まれ育った家庭の中で、自然に培われたものだろうが、夫婦で相互に食い違うと子どもが混乱する。我が子の中学受験をとおして、夫婦それぞれの教育方針から練り上げた「我が家の教育方針」として構築するとよいだろう。「我が家の教育方針」があることで、その後の志望校の選定はもちろん、我が子の指導にも大いに役立つと思う。もちろん、教育方針を出発時点ですべて決めるのではなく、夫婦が、その場その場で話し合い、作り上げていくものだろう。

学校の教育方針を3つの種類に分類して、学校がどのようなタイプかを調査した。調査結果は、「学力面重視」(33%)「精神面重視」(25%)「学力面重視と精神面重視の中間」(39%)「無回答」(3%)で学校の教育方針は、ほぼ同数の3つのグループに分かれた。本来は、学力と人間力で分類したかったが、人間力=情操教育というイメージがあり、情操教育の学校というと、別の意味が生じて該当する学校が少なくなるため、上記のような分類とした。さらに学校は教育方針を実現するためさまざまな教育方法を行っているが、その方法をも含め、「我が家の教育方針」と一致しているかを見極めて、志望校を決めるべきだ。

どんな方針でも方針は一貫していなければ、成果が期待できない。それは、異なる方針が存在することで、力が消し合い成果を期待できないことになるからだ。家庭の教育方針と学校の教育方針は、なるべく一致しているところが多いことが望ましいのもこのためだ。家庭と学校の方針が異なる場合、子どもは、家では家の方針で、学校では学校の方針で生活していくこともできると思うが力を出しきれないことになる。

学校の教育方針が、「我が家の教育方針」と、すべてにおいて一致しているというのはあり得ないと思うが、大事なところは一致していることが重要だ。学校の教育方針では、学力と人間力のどちらをどれだけ重視するか、学力や人間力を向上させるためにどのような方法を学校は行っているか、学校の教育方針とその実現方法は、「我が家の教育方針」と一致しているか……を見極めて、志望校を決めるべきだ。教育方針だけで志望校を選定できないのであれば、決定的に「我が家の教育方針」に合わない学校を排除した中で選定すべきだ。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

子育て・教育Q&A