志望校決定権と「我が子に合った学校」[中学受験]

中学受験において「父権」の強い家庭は少ないようだ。以前、受験生を持つ保護者(432名)に行ったアンケートで「ご家庭で、志望校の決定権が最も強いのは誰ですか?」というアンケートを行ったが、父親の決定権が最も強い家庭は13%という結果であった。これをして「父権」というべきかは異論もあるかと思うけれど、受験での父権の一つの表れではある。

私立中学校在籍者(以下「在籍者」)の保護者に行ったアンケートでも父親の決定権が最も強い家庭は約15%で、受験生を持つ保護者に行ったアンケートの結果と、ほぼ同じ割合であった。ちなみに母親の決定権が最も強い家庭は約25%、受験生本人は約60%であった。
父親の志望校決定権が強かった家庭では、在籍校が「我が子に合った学校」であったと感じている保護者はどれだけだろうか? 父親の決定権が強かった家庭で56%、母親の場合は73%、受験生本人の場合は86%で、受験生本人の決定権が最も強い家庭が最も満足度が高い。
そして残念ながら父親の決定権が強い家庭では、在籍校が「我が子に合った学校」であった割合が56%と断トツに低い数値であった。受験生本人の決定権が強い家庭と比べると30%、母親の決定権が強い家庭と比べても16%の差がある。

さらに詳しく、子どもの性別によって、誰が志望校の決定権が最も強いかで、在籍校が「我が子に合った学校」であったと感じている割合に違いがあるかを調べてみよう。
子どもが男の子の時は、母親の決定権は強くなく、むしろ父親のほうが高い数値だった。女の子の時は、父親の決定権は強くなく、受験生本人よりも母親の決定権が強い。そして男の子も女の子も、受験生本人の決定権が強い。
各家庭で「我が子に合った学校」だと感じている割合を見ると、子どもが男の子の時、父親の決定権が強かった家庭では満足度67%、母親の場合は63%、受験生本人の場合は90%であった。同様に女の子の時、父親の決定権が強かった家庭では33%、母親の場合は86%、受験生本人の場合は81%であった。

受験生本人の志望校決定権を強くすることで、「我が子に合った学校」に入学できる確率が高くなるだけではなく、受験勉強へのモチベーション(やる気)を引き出し、それを維持することができることは以前お話ししたとおりだ。女の子の場合は、子どもの受験勉強へのモチベーションが低くなりそうであれば、本人に決定権を持たせればよい。
結論としては、男の子は受験生本人が志望校決定権を持つことで、女の子は母親または受験生本人が志望校決定権を持つことで、「我が子に合った学校」に入学できる確率を高めることができる。中学受験においても「明治は遠くなりにけり」なのである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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