奨学金返済の新制度導入 今後はどうなる?
現在も、定額返還型だけでなく、申請すれば、年収が300万円を超えるまで、返済が猶予される「所得連動返済型奨学金制度」(現行)が、2012(同24)年度から実施されています。現行の所得連動型を選んだ場合、課税所得が300万円を1円でも超えたら、月1万4400円の返済が始まる「ゼロか1か」の制度になっています。しかも、期間制限はありませんから、一定以上の年齢になってようやく300万円を超えたとすると、定年を過ぎてからも延々と定額を返し続けることが必要になります。
新制度では、まず、定額返還型でも、返還額と返還年数を選べる「拡張版」の導入が検討されています。さらに「新所得連動型」では、卒業直後から数千円の最低返還月額を設定しつつ、年収300万円で月8,500円、年収400万円で月1万3,100円、500万円で月1万8,100円、年収600万円で月2万3,100円を返す(課税対象所得に対する返還率9%の場合)といった格好を想定しています。
また、回収コストがかさむため、返還期間を35年間とする案が有力になっています。回収不能額については、国費などによる穴埋めが必要になります。専業主婦・主夫やニートなど、収入がゼロか、少ない人は、扶養者(配偶者や父母など)の収入額と合わせて、返還額を算出する案が有力です。まずは無利子奨学金から導入することにしており、有利子は当面、対象外になる見通しです。
政府は無利子の貸与人数を拡大しているものの(2016<同28)年度予算案で前年度比5,000人増の46万5,000人)、87万人を超える有利子貸与者にとっては負担が重いままです。国の奨学金制度は、返還金を次の貸与の原資とする「リレー方式」を採っていますが、進学率が上昇する一方で、授業料も含めて高騰する一方の高等教育の費用を、いつまでも家計任せでいいのか、本格的に議論する必要もありそうです。