実は減少!?「少年犯罪」 データは凶悪化や低年齢化も否定

子どもによる犯罪が報道されるたびに、「少年犯罪の増加」「凶悪犯罪の低年齢化」などの言葉がマスコミなどで繰り返されます。しかし、それは本当なのでしょうか。統計によるデータは、まったく正反対の事実を示しているのです。
警察庁がまとめた「少年非行等の概要」の結果によると、2008(平成20)年の1年間に刑法犯として警察に検挙・補導された少年(14~19歳、以下同じ)の数は、前年より11.9%減の9万966人で、5年連続して減少したばかりでなく、1957年以来51年ぶりに10万人を下回りました。少年犯罪は増加しているどころか、逆に減少しているのです。また、ここ10年程度の推移を見ても、増加傾向を示した時期はあったものの、大きく増えたということはありません。

では、「凶悪化」はどうでしょうか。刑罰に執行猶予がつかない殺人・強盗・放火・強姦の凶悪犯罪によって検挙された少年は、前年比8.3%減の956人で、やはり5年連続して減少しています。これまでの推移を見ると、1990(平成2)年から97(同9)年までは確かに増加傾向にありましたが、その後は横ばいを続け、2004(平成16)年からは減少を続けています。ここでも、少年犯罪が凶悪化しているという事実は見当たりません。
ほかの犯罪ではどうでしょうか。少年犯罪の特徴の一つともいえる傷害や恐喝といった「粗暴犯罪」で検挙されたのは、前年度比6.5%減の8,645人で8年連続の減少。しかも警察の統計が残っている1949(昭和24)年以降で最低を記録しました。このほか、路上強盗やひったくりなどの街頭犯罪、万引きなど「初発型非行」と呼ばれる犯罪なども、いずれも減少しています。

ただ、気になるのは「13歳」の動向です。刑法犯罪による少年非行は、14~19歳のいずれの年齢層でも減っています。年齢の関係で刑法などの適用を受けない「触法少年」と呼ばれる13歳以下の子どもの補導件数も全体では減少していますが、13歳だけが前年比1.1%増と、やや増加しています。つまり、19歳までの子どものうち、13歳のみで犯罪がやや増加しているということです。
13歳といえば中学生ですが、中学校の関係では、校内暴力の増加も見逃せません。2008(平成20)年の1年間に校内暴力で警察に検挙・補導された子どもは、小学生が16人(前年比40.7%減)、中学生が1,320人(同6.0%増)、高校生が142人(同11.8%減)の計1,478人で、全体の総数は増加傾向にあります。中でも中学校が突出しており、中学校の校内暴力の増加が大きな課題となっています。

このように、「13歳」を中心とする中学校段階で課題はあるものの、全体として見れば、少年非行の増加や低年齢化というのは事実ではない、と言えるでしょう。少年犯罪を論じる際には、誤った思い込みに気を付けたいものです。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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