マイナス思考なことばかり言う娘【後編】[教えて!親野先生]

今週の相談

 

保育園年長の娘は、典型的なマイナス思考な子なのか、とにかく後ろ向きなことを言います。たとえば「今日は楽しいことあった?」と聞いても「楽しいことなんかなんにもなかった」と答え、「友達と遊んで楽しかった?」と聞いても、「遊んでいたのに、別の子と遊びだして、少ししか遊べなかったから面白くなかった」と泣いたりします。とにかく、悪いことを先に見つけて、それに考えが集中してしまい、楽しいことには目を向けません。保育園での一日の話を聞いていると、あまりのマイナス思考につい「三人で一緒に遊ぼうって、誘えばよかったじゃない」などと具体的にアドバイスをするのですが、「でも、誘っても断られたらどうしよう」「断られたらいやだからできない」などと、否定してきます。なんとかプラス思考にしたいです。このような子どもに対してどう対応していったらよいでしょうか?(ヨコ さん)

 

【親野先生のアドバイス】

ヨコさん、拝読いたしました。

前回に引き続き、ヨコさんへのアドバイスです。

「なんとかプラス思考にしたいです」とのことです。
この気持ちは、親としては当然ですし、尊いものだとも思います。
でも、実はこの気持ちがくせものなのです。

「今のうちにプラス思考にしてやりたい」「このままじゃ、かわいそうだ」「子どものうちに○○を直してやりたい」等々、いずれも親としては当然の願いです。
でも、このような「子どもを変えてやろう」という気持ちが強いと、どうしても子どものありのままを受け入れられなくなります。

つまり、先ほど言った受容と共感ができにくくなってしまうのです。
代わりに、励ましやアドバイスが多くなってしまいます。
それでも、子どもはなかなか変わらないので、親はイライラしてしまいます。
ほとんどの場合、このように進むことになるのです。

ですから、親はこの願いをもちながらも、それが前面に出てこないように気を付けていることが大事です。
願いをもちながらも、性急にならないで、遠回りに見える受容と共感に徹してください。

前面に出てきそうな願いを飼い馴らして、それを受容と共感のエネルギーに変換してください。
そして、そのあとで、励ましやアドバイスを与えたり、少しでも良い表れをほめてやったりしてください。

もともと、この願いはすぐにかなえられる種類のものではありません。
一人の人間の思考方法は、そうそう簡単に変わるものではありません。
何年も、何十年もかかって、いろいろな経験を重ねて、それこそ人生をかけて、人は自分の思考方法を作っていくのです。

ですから、親が我が子の思考方法を子どものうちに変えてやろうと思いこむ必要はないのです。
さらに言えば、変えてやろうと思うこと自体が、実は大それたことなのかもしれません。

本当に「一人の人間の思考方法を変えてやろう」ということは、大それたことなのではないでしょうか?

相手は自分の子どもなので、親は、愛情から「変えてやろう」「マイナス思考を変えてやりたい」「○○を変えてやらなければ」思います。
でも、親子と言えども、お互いに一人の人間同士であることに変わりはありません。
人間同士の間で、ある人間が別の人間を「変えてやろう」思うのは、大それたことです。

親子という人間同士の間でも「変えてやろう」と思うことは、大それたことなのではないでしょうか?

ですから、親は願いをもちつつも、「変えてやろう」と大それたことを思い過ぎないで、自分にできることをやっていけばいいのです。
「人事を尽くして天命を待つ」の気持ちです。

それに、マイナス思考がすべてにおいて全面的にいけないわけでもないのです。
いつもプラス思考の良さを強調している私がそんなことを言うと、おかしいかもしれません。
でも、本当に私はそう思っています。

マイナス思考の人は、確実さ、慎重さ、用心深さ、謙虚さ、責任感、計画性、危機管理などの面で優れているということもあるのです。
逆にプラス思考の人は、行き当たりばったり、いい加減、不用心、自信過剰、無責任、無計画、過信などの特質をもっていることも多いのです。
つまり、すべての長所短所は一枚のコインの裏表なのです。

このようなわけで、私はマイナス思考を生かしつつ生きていくということがあってもいいと思うのです。
マイナス思考の子だから、これからのすべてが心配だと思いすぎる必要はないのです。
それこそマイナス思考というものです。
マイナス思考という傾向を良いほうに生かしていく、という考えももっておくといいと思います。

このような考え方も頭に入れつつ、これからの生活を送っていってほしいと思います。

そうすれば、かなり気持ちが楽になるはずです。

そして、まずは受容と共感であり、励ましやアドバイスはそのあとです。
それと、親自身は大いにプラス思考でいてください。
親自身のプラス思考が、だんだんと子どもにも良い影響を与えていくはずです。
子どもに対しても、ほめることを最優先して子育てしてください。
子どもに投げかける言葉遣いも、プラスイメージの言い方に徹してください。

「○○しなきゃだめでしょ」「また○○してない」などの、マイナスイメージの言い方はしないことです。
「○○すると気持ちがいいよ」「○○するといいんだよ」などの、プラスイメージの言い方にしてください。
実際はそうでなくても、「○○ができるようになってきたね」「○○がうまくなってきたね」などというように、既成事実化する言い方も有効です。

このようなことに気を付けていれば、だんだん良いほうに行きます。
確実さ、慎重さ、用心深さ、謙虚さ、責任感、計画性、危機管理などの良い面を育みつつ、だんだんバランスが取れていきます。

どうか、気長にやってください。
気を付けるべきは性急さです。
自分の願いを飼い馴らして、一見遠回りな王道を行ってください。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
ヨコさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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