人前でハッキリものを言える子になってほしいのに・・・・・・[教えて!親野先生]

でも、実際問題として、子どもはそんなに簡単には変われないのです。
おとなしい子が、そんなに簡単に気が強くなるなどということはあり得ないのです。
活発で元気いっぱいな子は、なかなか落ち着いてこないものなのです。
人前ではっきりものが言えない子は、なかなか言えるようにならないものなのです。

何かよほど大きなモチベーションが生じたとか、あるいは命に関わるようなショッキングな体験をしたとか、そういうことでもない限りそうそう簡単に人間は変われないのです。
これは大人でも子どもでもそうです。

それに、すべての長所は短所の裏返しであり、短所は長所の裏返しなのです。
ある子は、おとなしくて人前ではっきりものが言えないけど、人に対してとても優しい子です。
ある子は、あわてん坊で落ち着きがないけど、積極的で好奇心旺盛な子です。
そういうものなのです。

親にとって短所に見えるものが、その子の長所の土台になっているのです。
それがあってこそ、その子の長所があるのです。
長所しかないということはあり得ないのです。
表しかないコインなどあり得ないのです。

それなのに、ほとんどの親は子どもに変わってほしいと思っています。
それは、もちろん親が我が子を思うゆえのことです。
いい言葉で言えば親の「願い」です。
でも、実は、この親の「願い」がけっこうな「くせもの」なのです。

というのも、親の「願い」は親の価値観から出たものであり、子どもの「願い」や子どもの「実状」とは無関係なことが多いからです。
もっとはっきり言えば、それはその親の勝手な欲なのです。
そして、親の「願い」という美名のもとで、その勝手な欲を子どもに押しつけます。
そのとき、親は子どものためと思い込んでいます。

でも、実際は、子どもにとって大きな迷惑になることが多いのです。
先ほど言ったように、子どもはそんなに簡単に変われないので、苦しむことになります。それに、自分の長所の土台を崩すことにもなります。

日々叱られることが多くなり、自分に自信がなくなります。
ありのままの自分を受け入れてもらえないことが、大きなストレスになります。

 自分はダメな子なのかも・・・・・・
 自分は親に受け入れられていないのではないか・・・・・・
 自分は信頼されていないのではないか・・・・・・
 親に愛されていないのではないか・・・・・・
心の奥のこういう声が、どうしても打ち消せなくなっていきます。

親の「願い」は、本当に「くせもの」です。
皆さん、気を付けてください。
これが、不幸の始まりになっている親子がいかに多いことか!
というより、親子の不幸の原因はこれに尽きるのです。
自分たちがそうなっていないか、ぜひ一度振り返ってみてください。

大事なのは、まず子どものありのままを受け入れることです。
たとえば、人前ではっきりものが言えない子は、それで良しとすることです。
その子はそれでいいのです。
そもそも、それは大した問題ではありません。
大人になるころには、できるようになります。

親が目をつぶって開き直ることです。
親がまず勇気をもつことです。
それが子どもを救います。
先生や親戚や近所の誰かが指摘してきたら、笑ってごまかせば済むことです。
親の決意次第なのです。

はっきり言えなかったとき、叱ったりいやみを言ったりしないことです。
そんなことは何の効果もありません。
百害あって一利なしです。

「緊張したんだね。大丈夫だよ。そのうちはっきり言えるようになるよ」
「お父さんも子どものころそうだったよ。大丈夫、今に言えるようになるから」

「大丈夫、大丈夫。この次はうまく言えるよ。ドンマイ、ドンマイ!」
「お母さんも人前で話すのは苦手なんだよ。気にしない、気にしない。誰にも苦手なことはあるものさ」
「前よりはっきり言えたね」(そうでなくても)
「はっきり言おうとがんばっていたね」

こういう言葉をかけてやってください。
その子のありのままを受容し、共感する言葉が大切です。
こちらのほうが、叱ったりいやみを言ったりするよりよほど効果があります。

でも、そのようにしながらも、そうそう変われないのが当たり前です。
ですから、親が目をつぶって、その分、その子のいいところを伸ばしてやることが大切です。
好きなことをどんどんやらせて、親も支援してやってください。
そして、たくさんほめてやることです。
どんなことでも、ちょっとでもいい表れがあったら、見逃さないでほめてやることです。

もちろん、少しでも人前で話ができたら大いにほめてやってください。

そうやって生活していれば、自信が付いてきます。
自信が付けば、すべてがいいほうに回転し始めます。
そうやって生活していれば、親の愛情への確信ももてるようになります。
その確信がある子は、人生のすべてにおいて大丈夫です。

かけがえのない毎日を、親子で楽しく明るく過ごしてください。
子どもにとって一番大事なのは、毎日を安らかな気持ちで過ごすことです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
seashoreさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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