学ぶ目的を引き出すだけ!子どもは本来「学びたい」[やる気を引き出すコーチング]

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「うちに来る子どもたちは勉強が大好きですよ!『やる気にさせよう!』なんて思ったことはないです。もともと子どもたちは『学びたい』という気持ちに満ちた存在なんですよ。新しいことを知りたくてどんどん勉強していきます。子どもが勉強嫌いって、そんなことないですよ。向上心の塊です。子どもたちを見ているとこちらが逆に励まされますね」と熱く語るのは学習塾を経営するSさん。本人は、学習塾と称されることもあまり好きではないそうです。「子どもは教えなくてもどんどん勉強していきますから!学習させるというよりはコミュニケーションをとっているだけです」と言うSさんの関わり方とはどのようなものでしょうか。

この記事のポイント

勉強の目的について問いかける

「勉強の前にその目的について子どもたちと対話をするんです。『この勉強は何の役に立つのかな?』、『これを勉強するとどんないいことがあるかな?』と問いかけて一緒に考えます。小学生でも自分なりの答えを持っています。例えば、野球が好きな子どもは、『打率を計算する時に算数ができるといい』と言います。友達ともっと仲良くしたいと思う子どもは、『相手が何を言おうとしているのかがわかるようになるためには国語を勉強しておいたほうがいい』と言います。子どもによって勉強する目的は違いますが、それを明確にしておくと、勉強したくなってくるのだと思います」とSさんはおっしゃいます。

目的の対話がやる気スイッチへのステップ

そういえば、以前、近所に引越してきた外国人の子どもと友達になりたくて、英語よりも先に、ベトナム語を勉強して話せるようになったという小学生がいました。楽しみにしていた遠足が延期になるのかが心配で、台風の進路を調べるために天気図を独学で勉強したという小学生もいました。誰に強制されるわけでもなく、「この子と話したいから」、「台風の進路を予測したいから」と自分なりの動機があれば、勉強は苦痛ではなく楽しみに変わります。そこにやる気や努力などという言葉は必要ありません。学びたいから学ぶのです。
「これをやって何になるの?」と思うことを、「いいからやりなさい」と言われて、やらされることは大人でも苦痛なものです。「テストでいい点が取れるから」とか、「受験に必要だから」と言われても、それが自分の目的になっていなかったら興味は湧きません。まず、学ぶ目的について対話をすることがやる気スイッチへのステップなのです。

正解を出させようとしない

「ところで、Sさん、そうは言っても、全員が学ぶ目的を明確にできるものなのですか?勉強が苦手な子どもでも目的を見つけられるのですか?」私は質問をしてみました。
「できますよ!そもそも『こうなりたい』、『知りたい』というものがない子なんていないんです。子どもは好奇心の塊でもあります。『どうなりたいのか』、『そのために役立つことは何か』を聞いてみたらいいんです。
でもどこかで、『こうすべきだ』とこちらが正解を持ちながら聞いてしまうと、子どもは答えなくなってしまうんです。テストの正解は1つしかないものもありますが、学ぶ目的の正解は1つではないはずです。各々違っていてもいいはずなのに、それを大人が矯正しようとするから考えられなくなっていくんです。どんな目的でも否定せずに受けとめます」。
さらにSさんはこうもおっしゃっていました。「うちに来る子どもたちを見ていたら、自己肯定感という言葉ももうどうでもいいという気がしてきましたね。『知りたい』、『学びたい』っていう気持ちをもともと持っているのだから、それを邪魔しないだけでいいのに、大人が持つ正解を答えさせようとするから、それが答えられない自分はダメって自己肯定感が下がっていってるんじゃないですか」

まとめ & 実践 TIPS

Sさんのお話から、本人の中にある「こうなりたい」、「知りたい」という願望を引き出し、学ぶ目的を明確化するだけで、自発的な学びが促進されていくのだと、あらためて実感しました。ご家庭の中でも、ぜひ、学ぶ目的について、お子さんと対話をする機会を作ってみていただきたいと思います。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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