「禁止」の言葉を減らすと親子共に穏やかに![やる気を引き出すコーチング]

 家族とおうちで過ごすことが多かった昨今、「親子共にストレスの限界です!」という悲愴なお声も聞かれました。そんな中で、「それを言っていても仕方がないですよね」と前向きに考え、冷静に親子のコミュニケーションを見直しているお母さんもいらして、とても励まされました。
 10歳、8歳、5歳のお子さんをお持ちのAさんから、こんなお話をうかがうことができました。

■子どもにかけている言葉の半分以上が「禁止」の言葉

 「朝から毎日、子どもたちと一緒にいて、本当にストレスでした。一日中、子どもたちにガミガミ言っている感じで、もう疲れてきたなと思っていたんです。ある時、一番下の子に、『ママは、ダメ!しか言わない』と言われて、『そんなことはないでしょう!』と思ったのですが、いつも、自分がどんな言葉を言っているのかをちょっと観察してみようという気になったんです。
 そうしたら、びっくりしました!
 『そろそろ起きないとダメでしょう』
 『ダラダラばかりしていたらダメでしょう』
 『そこ、散らかしたらダメ!せっかく掃除したんだから』
って、本当に、『ダメ』が多かったんです。それ以外にも、
 『ゲームばっかりしないで』、『口ごたえはやめなさい』といった禁止する言葉ばっかりだなと思いました。子どもにかけている半分以上が、これらの言葉でした。よく考えたら、私だって、夫や子どもたちから『もっとおいしいごはんを作らないとダメでしょう』なんて言われたら、毎日、食事を作る気にはなれないですよね。
 そこで、今日一日は、禁止の言葉を使わないで過ごしてみようと思って、やってみたんです!」

 Aさんのこの冷静な姿勢には感動しました。つい、感情に任せて、言葉が口から出るままにしていることがありますが、「自分はどんな言葉を使っているのかな?それは機能しているのかな?どんな言葉だったら伝わるのかな?」と客観的に観察し、うまくいっていないのなら変えてみるという柔軟な姿勢は、コミュニケーションにおいてとても大切です。「聞いてくれない相手が悪い」と言っていては、お互いのストレスは変わりません。

■禁止の言葉を言い換える効果

 さて、禁止の言葉を使わないで過ごしてみると決めたAさんには、どんな変化があったのでしょうか。

 「そこで、『ダメ』という言葉をとにかく言わないで、言い換えてみることにしました。
『もうそろそろ起きようよ!窓を開けて、深呼吸すると気持ちいいよ!』
『ごはんを済ませたら、ゆっくりお茶してみようよ!』
『そこのおもちゃ、一緒に片付けようか!』
という言い方にしてみました。最初は、すごくぎこちなくてセリフみたいな感じなんですけど、子どもたちも聞いているんだか?っていう反応なんですけど、やっていると、自分自身の気持ちが穏やかになっていくなっていう気がしたんです。これは不思議でしたね。私は、子どもたちの反応に対してではなく、自分の言葉に反応してピリピリしていたのかな?とさえ思いました。
 子どものほうは、私の言葉が変わったことに気づいているのかいないのか、よくわからないのですが、私が穏やかになったことで、子どもたちのストレスも少し減ってきたように感じています。親のイライラや不安って、知らないうちに子どもたちにも影響しているんだなあとも思いました。使っている言葉の影響は大きいですね。禁止の言葉を使わなくなっただけで、私も子どもも穏やかになれました」

 Aさんのチャレンジをぜひ、試してみたいですね。「『ダメ』という言葉を使わないように!」という言い方も、よく考えると、禁止の言葉ですから、「子どもには『一緒に〜しよう!』と言葉をかけよう!」など、自分にかける言葉も言い換えてみると良いかもしれません。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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