英語をたくさん聞き、楽しく「使える英語」を身につける

英語学習の導入期は、とにかく英語をたくさん「聞く」こと、そして英語を楽しむことが大切。これからの社会で必要な「使える英語」を子どもたちが身につけるため、保護者にできることは何でしょうか。

学校での英語教育が変わる

いまの小学生たちが社会に出て活躍する頃には、グローバル化はさらに進展していることが予測されます。当然のことながら、外国人とともに仕事をする機会は増え、だれもが英語を使って様々な人とコミュニケーションをしていくことが必要になるでしょう。
そうした社会に対応するため、学校での英語教育も変わります。小学校での英語は、2020年度から「外国語活動」を3,4年生でスタートし、5,6年生では教科の「英語」がスタートし、数値などによる成績もつくようになります。2018、19年度は移行措置期間で、学習内容は教育委員会や学校の裁量にまかされており、3,4年生から外国語活動に取り組む小学校もあります。中学校では、4技能を意識した授業が行われつつありますし、2021年度から中学校で実施される新しい学習指導要領では、英語の授業を英語で行うことなどが強く求められています。
また、2020年度(2021年1月)実施の大学入試から、英語は4技能の力をはかる民間の資格・検定試験の活用がスタートします。現在の大学入試では「聞く」「読む」の2技能の力の評価が中心ですが、今後は4技能全ての力を評価する大学が増えることは間違いありません。

残念ながら日本人は大人になっても英語を話せない人も多く、「中学生の約4割が英語が苦手」という調査結果もあります(ベネッセ教育総合研究所調べ)。そうしたことから、小学校英語では、英語学習を母語(日本語)と同じように、音に慣れ親しむことから自然な形で始め、徐々に「使える英語」を身に付けることをめざしています。

「使える英語」を身につけるために「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を段階を追って、バランスよく育てます。幼児が言葉を覚えるときと同様に3,4年生の「外国語活動」では「聞く」「話す」からスタートし、「英語がわかった。英語が話せた」というたのしい経験を積み重ねます。そして5,6年生では少しずつ「読む」「書く」を加えて、中学校での英語学習へと発展させていきます。

たくさん聞き、親子でたくさん楽しむ

保護者世代とこれから子どもたちが経験する英語学習は、大きく異なると言っていいでしょう。それは、子どもたちが多くの人たちと英語で自由にコミュニケーションするための変化なのです。たとえば、グローバル化が進展した社会では、日本人同士なら言葉にしないでも通じていたことが通用しません。多様な価値観をもつ人たちと共生する社会では、事実や根拠をもとにしながら、論理的に思考し、対話をしていく力がとても大事になります。論理的に思考し、対話をする力は、実は日本語でも英語でも同様に大切で、今の教育改革では全ての教科でこの力の育成を重視しているのです。大学入試でも、各教科で思考力が問われるようになり、英語でも自分の考えを英語で述べる力も問われます。そうした力を身につけていくために、これから初めて英語を学習する子どもは、たくさんの英語を「聞く」こと、そして、英語を好きになって、楽しく学ぶことが大切です。

日常生活で英語が必要ではない日本の場合、英語を「聞く」ための学習には、見たり聞いたりできるCDやDVDなどが効果的です。それでも英語を聞く時間は限られますので、教材は子どもの発達段階や興味に合ったもので、飽きずに集中して聞けるものを選ぶとよいでしょう。まずはたくさん「聞く」ことが大切です。英語を言ってほしくなりますが、DVDから聞こえてくる英語を無理に真似して言わせるようなことはしないほうがよいでしょう。子どもが自発的に声に出さないということは、まだ「聞く」ことが十分ではない段階だということです。

また、子どもに早い段階から英語を学習してほしいと感じる保護者の方には、ご自身が英語ができないことで苦しんだ経験をした方が多いのではないでしょうか。だからこそ同じ体験を子どもにはさせたくないという気持ちが強く、英語学習を子どもに強要して、かえって子どもにストレスを与えてしまうこともあるかもしれません。
子どもだけでなく、親子で英語に楽しく触れる機会をつくり、英語でできたことを一緒によろこび、できなかったことを恥じずに次にチャレンジする気持ちを共有できるようになると、英語がもっと身近でたのしいものになるのではないでしょうか。


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


加藤由美子

1987年(株)ベネッセコーポレーション入社。1997・98年Berlitz・Singapore学校責任者として駐在。帰国後はベネッセの英語教育事業開発を担当。
研究部門異動後は、ECF(幼児から成人まで一貫した英語教育の理論的枠組み)開発やARCLE(ベネッセ教育総合研究所が運営する英語教育研究会)の立ち上げ、小中高校生の英語学習実態調査、中高の英語指導調査、英語力を上げた学校の研究などに携わる。2019年度からは言語教育研究にも携わる。文部科学省「国際バカロレアに関する国内推進体制の整備」事業審査委員(2021年)。

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